選定理由 |
本種は高速道路や砂防堰堤の設置場所になる山間部の細い谷に生息しており、その工事過程や構造物設置の影響により急速に減少している。府内では日本海側に流入する河川に生息するため、学術的にも注目されている。 |
形態 |
体長7cm。ホトケドジョウLefua echigoniaに似るが、体形は比較的細長く縦扁し、体は一様に淡褐色であり、吻部には明瞭な暗色斜帯がある。背鰭と尾鰭に暗色斑点がないか、あってもわずかである。府内の本種にはこの斑点がみられない。
◎近似種との区別
日本産ホトケドジョウ属にはエゾホトケドジョウL. nikkonis とホトケドジョウL. echigonia と本種の3種がいるが、府内ではエゾホトケドジョウはみられない。本種は近年までホトケドジョウの1型として扱われており、現在も混同されている。両種は、吻部の暗色斜帯の有無と、背鰭と尾鰭の暗色斑点の有無によって区別される。 |
分布 |
東海地方、和歌山県から岡山県までの本州瀬戸内斜面、愛媛県、徳島県、香川県、福井県と府内の日本海側に分布する。
◎府内の分布区域
舞鶴湾周辺の河川と由良川水系で生息が確認されている。 |
生態的特性 |
鬱蒼とした山間の細流に生息し、主に淵尻のリターパックや礫の下に潜んでいる。流れの脇にある水たまりにも潜んでいることがある。あらい礫の間をすり抜けるように移動し、河床間隙にも頻繁に出入りする。主に水生昆虫を食べる。生態については不明な点が多い。
◎近似種との比較
京都府由良川水系と兵庫県では本種とホトケドジョウが混生する水域も存在する。混生地でも若干の偏りがあり、上流に本種、下流にホトケドジョウが生息する傾向がある。 |
生息地の現状 |
府内では、いずれの生息地でも局地的で、個体数もきわめて少ない。 |
生存に対する脅威 |
本種は山間部の自然度の高い場所にのみ生息しており、コンクリート護岸化や他の人工構造物の建設が脅威となる。また、生息地はいずれも局地的であるため、狭い範囲の開発でもその影響を受け、細流の個体群が絶滅する可能性がある。 |
必要な保全対策 |
ホトケドジョウと同様、生息状況未調査の状態で、開発により絶滅するケースが多いため、まずは本種の生息状況を把握し、河川工事により個体群を減らさないような配慮が必要である。 |
その他 |
日本固有種 |