選定理由 |
本種は国指定の天然記念物(地域定めず)であり、生息地が局限され、個体数も多くない。さらに、生息地の環境悪化や消滅、密漁などが原因で急減している。 |
形態 |
1年で全長4〜6cmになり、成熟する。側線は完全。口ひげはない。タナゴ類の中では最も体が薄く側扁して体高が高い。大型になり、淀川水系では全長13cmに達する個体がみられる。産卵期の大型のオスは体全体が強い紫紅色を帯びる。腹部は黒色。背鰭と尻鰭は灰黒色の地に真珠光沢のある蒼白色の縦条が2〜3本入って縞模様を形成する。腹鰭にもよく目立つ蒼白色斑がある。
◎近似種との区別
稚魚はシロヒレタビラやタイリクバラタナゴとともに岸辺を群泳するが、背鰭に淡い楕円形の黒色斑が入るので、容易に区別できる。 |
分布 |
富山平野、濃尾平野、淀川水系の一部に連続的に分布し、国外からの報告はない。
◎府内の分布区域
南部地域の淀川水系に分布するが、局所的である。 |
生態的特性 |
産卵期は9月〜11月で、小型のイシガイなどに卵を産み込む。貝内で卵は発生を進め、翌年の5月中旬〜6月上旬に稚魚が貝から泳ぎ出る。稚魚は岸部の抽水植物帯の周縁部に群泳する。成長に伴って深層に移り、6月下旬には岸部から姿を消す。台風などによる河川敷の冠水で拡散し、産卵適地へ移動・産卵する。近年、河川敷の氾濫が本種の繁殖に重要であることが明らかとなった。主に付着藻類を食す。 |
生息地の現状 |
河川敷氾濫原の一時的水域が繁殖に適しているが、近年の河川改修や冠水頻度の低下などにより、そのような河川環境は減少している。 |
生存に対する脅威 |
希少魚・鑑賞魚としての密漁が横行し、局所個体群が壊滅的な被害を受けている。また、外来魚による食害も減少の一因と考えられる。 |
必要な保全対策 |
増水時に冠水するような河川環境の復元、密漁の防止、およびオオクチバスなど外来魚が入らないような方策を図る必要がある。 |
関係法令 |
絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律(国内希少野生動植物種)、 文化財保護法(天然記念物「地域定めず」) |
その他 |
日本固有種 |