選定理由 |
全国的に分布域が減少しており、府内での分布域が限定し、報告例が極めて少ない。 |
形態 |
茶褐色の個虫がならんで、透明な寒天状の外皮につつまれた群体をつくり、水草や岩石などに付着して生活する。個虫の大きさは最大5mmで、口のまわりに織毛をもった75〜106本の触手がU字型にならび、口の外側に肛門が開く。群体の大きさは1.5〜3cm。休芽は暗褐色で長さ1.3mm、円形で鞍状だが、上から見ると四角くみえる。休芽の周囲に棘はない。
◎近似種との区別
群体の大きさが近縁のヒメテンコケムシより大きい。休芽の形が円形で鞍状、両端に棘がない点でヒメテンコケムシと区別できる。 |
分布 |
アジア地域固有種でインド、ビルマ、ジャワ、中国大陸、台湾、朝鮮半島に分布する。日本では関東以西の各地の湖、池沼、用水池に分布する。
◎府内の分布
桂離宮の池(1983〜1985年)。
◎近似種との比較
ヒメテンコケムシは朝鮮半島、台湾、中国大陸から東南アジア、アフリカ南部、北米東部に分布し、日本では本州の池沼、用水池に分布するが、府内からの報告例はない。 |
生態的特性 |
群体は、湖沼やため池の水草や杭、人工的な壁面などに付着する。個虫は触手を伸ばし、織毛運動で水流をおこし、プランクトンなどの有機物を口に導いて餌をとる。群体は、着底後の浮游幼生または休芽より発芽した幼少個体からつくられ、春から夏にかけて成長・増加した後、秋に多数の休芽をつくって消滅する。 |
生息地の現状 |
不明。 |
生存に対する脅威 |
全国的に分布域が減少しており、ため池などの池岸の改変、土砂や有害物質の流入による生息環境の悪化が危惧される。また水質悪化による影響も懸念される。 |
必要な保全対策 |
土木工事により、生息地に陸上部から土砂が流入しないような配慮や、農薬等の有害物質が池に直接流入しないような工夫が必要である。 |