(4)立体撹拌(かくはん)育成装置を用いた効率的な種苗生産
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図4 立体撹拌(かくはん)育成装置 |
コンクリートブロックに種苗を付けたまま(写真3の状態)さらに長期間育成を続けていると、種苗同士が混み合って光が充分に当たらなくなります。やがて生長が悪くなって枯れてしまい、この方式では、わずかの種苗しか生産できません。
そこで、ブロックに付いた数ミリ程度のごく小さい種苗を付着器から金属製の「へら」などではく離して、透明の水槽に収容し、水槽の底から空気の泡を出して種苗を撹拌(かくはん)しながら育成する装置(立体撹拌育成装置)を開発しました(図4)。海藻の付着器は岩盤や転石などの基質に固着するためだけの器官なので、基質からはく離しても海藻の生長に支障が生じることはありません。この方式を用いることで、どの種苗にもまんべんなく光が当たるようになり、種苗の生長や生き残りが良くなりました。また、水槽を立体的に利用できるので、少ない底面積で効率よく大量の種苗が生産できるようになりました(写真4)。
海藻が生長するにつれて水槽に収容する種苗の数を徐々に減らすとともに、季節や海藻の生育段階に応じて光量を調整します。種苗が充分に撹拌されないと、水槽の底面に種苗が滞留して、海藻を食べるヨコエビなどが繁殖しやすくなります。種苗をごく短時間淡水で洗うことでヨコエビを簡単に駆除できますが、淡水浴はホンダワラ種苗を傷めるので注意が必要です。立体撹拌育成装置では、種苗の回収や収容が容易にできるので、種苗に付いたシオミドロなどの付着物の除去や水槽の掃除などの作業が簡単にできます。なお、この装置を用いたホンダワラなどの褐藻類種苗の生産技術は、京都府の特許技術として出願し、現在審査を請求しているところです(特願2004−187574号)。 |
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写真4 立体撹拌(かくはん)育成装置 |
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