2.ホンダワラの種苗生産技術
前述したように、ホンダワラは、春に受精卵が発芽してから約2年で成熟します。天然で収穫されているものは、1m以上に生長した2年目以降の成熟直前のものです。2年目の秋以降急速に生長することから、養殖する場合は、約1年半の間、陸上水槽で種苗を育成(種苗生産)します。以下に具体的な種苗生産の工程を説明します。
(1)母藻の準備
ホンダワラは雌雄異株です。成熟した雌性株は、生殖器床の中に卵を形成します。卵は生殖器床の表面に出てきた後で受精します。その後、卵割(らんかつ)が始まり、幼胚(ようはい)と呼ばれる形になります。京都府沿岸では3月下旬から4月上旬になると雌性株の生殖器床上に幼胚が大量に出現するので、この時期に天然の藻場から母藻として採集します。
(2)播種(はしゅ=たねまき)
刈り取った母藻をトレーに収容し、ゆるやかな流水下で幼胚を自然に落下させます。数日後、トレーの底に溜まった幼胚を濾し網で集め、ゴミを取り除いた後で、ピペットで建材用コンクリートブロックの上にできるだけ均一になるよう幼胚を播きます(写真1)。幼胚は、およそ0.3mmの大きさで、写真2のような形をしています。
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写真1 幼胚をピペットで播いているところ |
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写真2 ホンダワラの幼胚 |
(3)平面静置方式での種苗育成
コンクリートブロック上に落下した幼胚は、仮根が伸長してブロックに固着するとともに、単葉を形成します(単葉期)。その後、二枚の葉(双葉期)が形成されるまで上面に遮光(しゃこう=光をさえぎること)幕を張った水槽内で育成します。水槽内の光が弱すぎると種苗が充分に生長しませんが、逆に光が強すぎると珪藻や他の海藻が繁茂してやはり種苗の生長が悪くなるので、光量の調整が必要です。播種してからおよそ3ヶ月間、この方式で種苗を育成します。ブロック1個で数千本の種苗が育成できます(写真3)。
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写真3 コンクリートブロックで育成したホンダワラ種苗 |
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