5 まとめ
以上述べてきました舞鶴湾におけるアサリの生活サイクルや資源の変化及び漁獲実態について整理しますと、次のようになります。
(1)産卵期
1アサリの主産卵期は10月から11月である。
2サイズによって成熟の度合いが 異なり、大型のアサリほど早く成熟し、一部のものは夏頃から産卵する。
3殻長25mm以上になると、全ての個体が産卵可能となる。
4殻長7〜8mmで初めて産卵が可能となる個体が出てくる。
(2)成長
112月に海底に沈着したアサリは、約6カ月後で殻長10mm、約1年後で殻長25mm、約2年後で殻長35mm及び約3年後で殻長40mmになる。
2秋季に発生したアサリには、成長の早いタイプと遅いタイプがあり、成長の早いタイプは約6カ月後には殻長10mmとなるが、遅いタイプは殻長1〜2mm程度にしかならず、その後は消失してしまう。
(3)分布と移動
1アサリの分布は、成長段階により次のような違いがある。
(ア)初期稚貝(殻長2mm未満)の時点では、水深5mまでと比較的広い範囲まで分布する。
(イ)その後成長するに従って分布水深の範囲が狭まり、成貝(殻長25mm以上)では、ほぼ水深1m帯に限って分布するようになる。
12の分布の特徴は、アサリ自体の移動や波浪等による移動ではなく、アサリの減耗が水深帯によって異なっていることによる。
(4)減耗と害敵生物
1アサリの減耗は、主としてアサリを捕食する害敵生物によって起こっている。 2その減耗の程度は、水深1m帯では小さく、水深が深くなる程大きくなる。 3主要な害敵生物としては、ヒトデ類とカニ類がある。
4以上のような、アサリの水深帯ごとの分布及び減耗パタ−ンが把握できたことから、これを応用した効果的なアサリ増殖用の漁場造成が可能になると考えられる。
(5)漁獲の実態
1現在、舞鶴湾で使用されているジョレンの目合いと、漁獲されるアサリのイズとの間には、次のような関係がある。
(ア)殻長20mm未満のアサリは全て目合いから抜け落ちるが、25mm以上に なるとジョレン内に残る個体が多くなっていき、33mm以上になると全てジョレン内に残る。
(イ)漁場にいるアサリの内、このジョレンで漁獲される割合は、殻長22.0〜24.0mmから30.0〜32.0mmまでは直線的に高くなっていき、それ以上になるとほぼ一定になると推定される。
2舞鶴湾で漁獲されたアサリの出荷形態は次のとおりである。
(ア) 舞鶴湾で漁獲されたアサリは銘柄分けして出荷されており、その区分は、 “大”が殻長42.5〜47.5mm、“中”が殻長37.5〜42.5mm、“小”が殻長32.5〜37.5mm及び“小小”が殻長27.5〜32.5mmとなっている。
(イ)出荷量では、“小”及び“小小”の小型アサリが全体の75%程度を占めるが、出荷金額では、“大”及び“中”の比較的大型のアサリが全体の50%を占めている。
以上のとおり、小型貝は大型貝と比較して単価が安いことや、その資源保護 の観点から、出荷量では“小”及び“小小”が大半を占めている舞鶴湾におけるアサリの漁獲方法や資源利用の仕方について、今後さらに検討する余地があると考えられる。
|
Copyright (C) Kyoto Prefecture. All Rights Reserved.