中丹広域振興局

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更新日:2025年2月3日

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人材不足問題の打開策!クラウド導入で子育て中の従業員が定着(株式会社イン・ザ・ルーム)

昨今ますます深刻化している人材不足の問題。採用コストの増加や早期離職など、人材確保に頭を悩ませる経営者は少なくないはずです。

そんななか、綾部市に事業所を構える介護・福祉サービス会社、株式会社イン・ザ・ルームでは、従業員の約半数を占める女性の多くが、仕事と子育てを両立しながら長期的に活躍しています。

イン・ザ・ルーム_外観

特に人材不足が叫ばれている介護・福祉業界で、なぜ子育て中の従業員が定着し、活躍し続けられているのでしょうか。効果を発揮したおもな取り組みについて、常務取締役の杉山慎治さん、店長の榎本すなおさん、従業員の大西美保さんにお話をうかがいました。

介護・福祉に特化したサービスで地域住民の"生きる"をサポート

株式会社イン・ザ・ルームは、綾部市内で住宅資材販売店として1960年に創業した株式会社ウエハラのグループ会社で、福祉用具の販売・レンタル・介護リフォームという福祉事業に特化した会社です。現在は、京都府北部を中心に5つの事業所を展開しています。

イン・ザ・ルーム_内観

多くの介護用品が並ぶ明るい店内

 

「介護ベッドや車いす、手すりといった福祉用具は、お客様の自立した暮らしを手助けする道具です。私たちはそれらを活用し、お客様が自分の家で自分らしく生きられるようにプロデュースさせていただく仕事を担っています」

このように自社の役割について語るのは、株式会社イン・ザ・ルームの杉山常務です。

イン・ザ・ルーム_杉山常務

杉山常務

 

状況に応じて、病院・介護施設・福祉の専門スタッフと連携し、「困りごとを抱えている人が自分らしく生きる方法を共に考える」をモットーにしているとのこと。

また、地域の高齢者やサポートを必要とする人に対して、介護保険制度のしくみから手続きの仕方までていねいに説明し、適切な介護サービスへつなぐ役割も果たしています。

社内の相互理解により子どもの急病時にも休める制度と風土が確立

「当社は従業員の半数以上が女性で、子育て中の方も多く活躍しています。子どもがいれば当然、突発的な体調不良も発生しますから、『そんなときは休んでください』というスタンスでやっています。そんなときに、仕事を優先したっていいことはない。家庭が一番大事だと思っています」

経営者がこのような考えでいてくれているのは従業員にとってとても頼もしいものです。しかし、仕事の性質上、同じ担当者に仕事が偏りやすく、一人が休むと現場が回らなくなることもあります。どのように業務量のバランスをとったのでしょう。

 

「当社ではクラウドを導入し、業務上必要なデータに社内外からいつでもアクセスできる環境を整えました。全従業員がモバイル端末を持ち、出社しないと仕事ができない、という状況をできる限り解消しました」

経営者と従業員双方の課題解決のために踏み切ったクラウド導入ですが、やはりコストがかかります。それでも杉山常務が導入を推し進めたのは、自身の子育て経験からその必要性を強く感じていたためです。

「実は、まだ子どもたちが小さい頃に妻を亡くしまして。生活は一変し、仕事と子育ての両立に四苦八苦する毎日でした。でも、子育て中はどこの家庭も同じ、男も女も関係ないと気付いたんです」

 

そう話す杉山常務の横で、子育て真っ只中の従業員、大西さんがうなずきながら言葉をつなげます。

イン・ザ・ルーム_大西さん

従業員の大西さん

 

「先日も子どもの急病で仕事を休んだとき、クラウドツールのおかげで私が担当している仕事をほかの方にスムーズに引き継ぐことができ、安心して子どもの看病ができました。とてもありがたかったです」

大西さんは入社して3年目、小学生のお子さんを育てているお母さんです。

「前職は子どもが熱を出しても休ませてほしいと言いづらく、大変でした。転職先としてこの会社を選んだのは、高齢の祖母の面倒をみていた関係で介護に興味があったからです。自分にできる範囲の仕事からはじめさせてもらい、子どもの急病時もみなさんに助けていただいて、とても働きやすくなりました」

 

杉山常務を含め、従業員の多くが大西さんと同じ道をたどってきた子育て経験者。大西さんの身近で働く榎本店長も「普段コミュニケーションを取る中で、互いの子どもの年齢や生活習慣などを把握できているので、『お互い様』の気持ちで仕事できています」と語ります。株式会社イン・ザ・ルームでは、周りに助けてもらった経験を共有し、「お互い様」という気持ちでフォローしあう、子育て世代にやさしい風土が根付いています。

イン・ザ・ルーム_店長を囲む常務と大西さん

榎本店長を囲み、杉山常務(左)と大西さん(右)

会社の将来性と働きやすい職場をつくることはリンクする

株式会社イン・ザ・ルームでは子育て世代を支える制度として、クラウド導入のほかに、産後パパ育休や育児休業の分割取得、相談窓口の設置など、さまざまな取り組みを実施しています。そのなかでもキラリと光るのが、時間単位の年次有給休暇利用の促進です。

「常日頃、パパも運動会や参観日などの学校行事に行くように勧めています。社内システムや制度を活用すれば、数時間くらい都合がつくはずなので、ぜひ行ってほしいですね」

このように杉山常務は従業員の家庭を優先する一方で、経営者目線で持続可能な会社のあり方も考えています。

 

「いま、人材確保は本当に大変です。出社ありきの働き方に固執していると、働く意欲をもった子育て世代は離れていき、現場の負担と採用コストが増すばかりです。1日8時間、都合のよい場所と時間帯で働ける環境を用意しておくことが人材確保のカギとなります」

実際に、日中はどうしても子どもに手がかかるからと、本人の希望で夜間の在宅勤務をされている従業員の方もいるそうです。

大西さんも「いまはサポートしていただいている身ですが、もっと知識と経験を積んで仕事の幅を広げ、今度は支える側になりたい」と前向きに語ってくれました。

クラウドシステムはあくまでも手段であり、要となるのはやはり従業員同士の「困ったときはお互い様」の心。職場全体でその気持ちを共有し、制度を現場に落とし込むことが大事になってきます。

 

最後に杉山常務はこう話します。

「休みが必要な人はみんな気兼ねなく制度を使ったらいいんです。そうすることで結果的に長く勤めてもらえますし、子どもが大きくなったらそれまでに蓄えた知識や経験をいかしてフルタイムで働いてもらえます。会社としては絶対にプラスです」

 

このように、従業員が柔軟な働き方で収入を確保できれば、自分らしい自立した生活が実現し、家族や地域にもプラスの作用がおよびます。

企業がそれぞれの業態と従業員の実状を踏まえて「働きやすさ」をどのようにコーディネートするか。そこに焦点を当てた株式会社イン・ザ・ルームの取り組みは、人材不足の解消を目指す企業の道しるべとなるはずです。

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