豊かな森を育てる府民税活用事業の成果［令和元年度］

 

1　はじめに

　府民の生活の安心・安全を確保する上で、土砂災害の防止、水源のかん養、地球温暖化の防止など、森林が果たしている役割は重要であり、その恩恵を広く府民全体が享受しています。府では、これら森林の多面的機能を維持し、増進するため、森林の整備・保全、森林資源の循環利用、森林の多様な重要性について府民の理解を深める取組の推進を目的に「豊かな森を育てる府民税」を平成28年度から創設しています。

　令和元年度においては、近年の集中豪雨等による災害発生や森林環境譲与税の導入等を踏まえ、豊かな森を育てる府民税市町村交付金のプロジェクト枠（1億円）を廃止し、府営の防災事業を強化するなど、状況の変化に応じながら、府内各地で様々な取組を進めました。

 

2　豊かな森を育てる基金の状況及び基金事業の実績

基金積立額 701,657千円

基金取崩額 674,412千円

事業実績額 674,412千円

（翌年度繰越額 198,838千円含む）

基金残高 124,324千円

事業実績額内訳

事業名	実績額（千円）
未来へつなぐ安心・安全の森づくり事業費	140,000 （繰97,251）
災害防止森林整備事業費	100,000 （繰78,160）
人と森をつなぐ環境整備事業費	30,000 （繰19,958）
豊かな森づくり推進事業費	9,438
府民参加型里山ふれあい事業費	31,070
伝統工芸の森プロジェクト事業費	2,210
京の森林文化を守り育てる支援事業費	29,708
京都の木のまち拡大事業費	63,450
CLT普及促進事業（拡充分）	632
京の森と木魅力発信事業費	3,000
豊かな森林継承事業費	6,000
地域振興計画推進費（広域振興局）	10,000
豊かな森を育てる府民税市町村交付金事業費	248,903 （繰3,469）
計（当初予算額722,247）	674,412

注※1　端数処理の関係で、各事業費の和と計が一致しない場合があります。
注※2　繰：翌年度繰越額（実績額の内数）

 

1　事業主体別実績

　豊かな森を育てる府民税活用事業には、京都府が実施する事業のほか、市町村が地域課題に対し、創意工夫により行う交付金事業があります。

　令和元年度は、府の事業として425,509千円（翌年度繰越含む）、市町村交付金事業として248,903千円（翌年度繰越含む）の事業に取り組みました。

 

 

 

2　事項別事業実績

　令和元年度、「森林の整備・保全」、「森林資源の循環利用」、「森林の多様な重要性について府民の理解を深める取組」の事項別には次のとおり事業に取り組みました。

 

3　令和元年度豊かな森を育てる府民税事業成果

1　森林の整備や保全を進めるための事業

　流木災害の未然防止による安心・安全の森林づくり、治山事業と一体的に行う森林管理環境の整備に加え、人家や公共施設等に隣接した森林における危険木の伐採などの新たな災害対策を推進することで、森林の持つ災害防止機能をはじめとした、多面的機能の向上に取り組みました。

 

(1) 未来へつなぐ安心・安全の森づくり事業

　異常な集中豪雨の増加により、流木災害の危険性が高まっている人家裏の渓流などで、流木の原因となる危険木の除去や流出土砂の撤去等の対策を推進し、流木災害の未然防止や保安林の災害防止機能の向上に取り組みました。

実績額 140,000千円
（うち翌年度繰越額 97,251千円）

事業実績 45箇所
（うち翌年度繰越分 28箇所）

　

 

(2) 災害防止森林整備事業（新規）

　人家や公共施設等に隣接した森林において、危険木の伐採や山腹斜面の崩壊を防止する簡易防災施設の設置等の対策を推進し、多発する豪雨や台風等に備えた森林の災害防止機能の向上に取り組みました。

実績額 100,000千円
（うち翌年度繰越額 78,160千円）

事業実績 11箇所
（うち翌年度繰越分 8箇所）

 

(3) 人と森をつなぐ環境整備事業

　治山事業による山地災害対策の取組として、森林へのアクセスに必要な歩道等を、府内産木材を活用して整備し、森林所有者や地域住民等が持続的な森林管理に取り組んでいけるよう環境を整え、災害の未然防止対策の強化を図りました。

実績額 30,000千円
（うち翌年度繰越額 19,958千円）

事業実績 20箇所
（うち翌年度繰越分 17箇所）

 

(4)豊かな森づくり推進事業

　確実な資源造成を行い森林の機能維持を図るとともに、植栽樹種等の転換による花粉症対策の取組を進めるため、伐採跡地で行う花粉の少ないスギや広葉樹などの植栽や、獣害対策に対する助成や苗木生産者を対象とした研修会の開催等を行いました。

実績額 9,438千円
事業実績 花粉の少ないスギ等植栽　60件　他

 

 

(5)府民参加型里山ふれあい事業

　荒廃した里山林の整備を府民参加で行い、森林整備活動に対する関心を高め、京都モデルフォレスト運動の更なる拡大につなげるため、府民公募による里山林整備などの取組を支援しました。

実績額 31,070千円
事業実績 70件

 

 

 (6) 伝統工芸の森プロジェクト事業

　文化財修復のための漆など、伝統工芸に使用される原材料の安定供給体制の構築のため、苗木植栽や保育管理、担い手育成を行うとともに、漆掻きなど丹波漆の生産技術の紹介・工芸作品等の展示会の開催など、伝統工芸・森の文化を広く発信しました。

実績額 2,210千円
事業実績　
漆園地造成　1箇所
展示会開催　2箇所　

 

(7) 京の森林文化を守り育てる支援事業

　地域の文化と深く関わりのある社寺の森、文化・伝説の森、地域の伝統行事や伝統産業を支えてきた森の保全、地域のシンボルとなっている名木古木等の樹木の保全など、地域住民や保全団体などが行う活動を支援し、京の森林文化を次代に伝える取組を推進しました。

◎令和元年度実績　http://www.pref.kyoto.jp/shinrinhozen/r01moribunnka.html

実績額 29,708千円
事業実績 37件

 

 

2　森林資源の循環利用を進めるための事業

　府内産木材を活用した木造の民間施設整備の支援、木製品の導入支援や公共施設の木質化など、森林資源の活用による環境にやさしい持続可能な社会づくりを推進しました。

 

(8) 京都の木のまち拡大事業（新規）

　府の公共施設、民間の商業施設、福祉施設などの府民が接する機会が多い施設や、住宅などにおいて、府内産木材を利用した木造化や木質化、木製品の導入等を支援し、地球温暖化の防止と森林資源の循環利用などに資する取組を推進しました。

実績額 63,450千円
事業実績 194件

 

 

(9) CLT普及促進事業（拡充分）

　設計・施工が一般化されていないCLTを使用した建物の建築を促進するため、計画段階から設計実務まで幅広い内容に対応した相談窓口の運営を支援しました。

実績額 632千円
事業実績
原材料調達に関する相談　7件
設計に関する相談　2件　
直接訪問によるCLTや府内産木材の説明 35件 他

 

 

3　森林の多様な重要性について、府民の理解を深めるための事業

　京都の森林の素晴らしさを再認識し、次代に伝えていくための取組を推進しました。

 

(10) 京の森と木魅力発信事業

　京都府の林業や森と木の文化を発信するため、北山杉・北山丸太木育イベント、竹の魅力発見講座等や丹波漆と秋の収穫祭で新たな発見ツアーなどのイベントを実施しました。

実績額 3,000千円
事業実績
北山杉・北山丸太木育イベント 600名参加
竹の魅力発見講座等 113名参加
丹波漆と秋の収穫祭で新たな発見ツアー 18名参加

 

(11) 豊かな森林継承事業 

　平成28年度開催の「第40回全国育樹祭」の3 つの大会宣言に沿ったテーマ(国民参加の森づくりの推進、木材等の森林資源の幅広い利活用、次代の森林づくりを担う青少年の育成)で、「Woodyコンテスト」「森林づくり体験会」「京都山キッズ交流会」を開催しました。

実績額 6,000千円
事業実績
第3回Woodyコンテスト 64作品応募
森林づくり体験会in「STIHLの森京都20th新緑祭」 849名参加
第3回京都山キッズ交流会　186名参加 他

 

4　広域振興局独自事業（地域振興計画推進費）

　地域の森林・林業の特色や課題に応じた広域振興局ならではの先導的な取組を推進しました。

 

＜山城広域振興局＞

• モデルフォレスト運動参画促進事業
  モデルフォレスト運動への参加促進のため、参画企業・団体と緑の少年団、大学生との交流会や小学生とその保護者を対象とした、間伐作業の体験等の森林・林業体感ツアーを開催しました。 　

実績額 700千円

事業実績
モデルフォレスト参画企業・団体等交流会　1回 43名参加
京都山キッズ交流会（山城版）　47名参加
森林・林業体感ツアー（親子対象） 1回 43名参加

 

• 山城産の木魅力発信事業
  山城産木材の利用促進のため、伐採体験や製材工場見学、先進地視察などの森林・林業体感ツアーを開催するとともに、宇治市・城陽市域で搬出間伐から製材、加工までを実践し、作成した木製品を導入しました。

実績額　1,800千円
事業実績
森林・林業体感ツアー（府民、林業事業体対象） 2回73名参加
宇治市産木製品（受付カウンター天板ほか） 18点購入

 

＜南丹広域振興局＞

• 京都丹波産木材利用促進事業
  京都丹波産木材の魅力を広く発信する「京都丹波木づかい運動」を展開し、管内図書館とのコラボ展やイベント等での展示・PRを実施するとともに、木工作家、販売者、木材供給者等による「木づかいネットワーク」を構築しました。

　
実績額　2,500千円
事業実績　
木づかい運動木製品の図書館やイベント等での展示 8箇所

 
＜中丹広域振興局＞

• 中丹「緑の幼稚園」育成事業
  次代を担う子供たちとその家族に木の良さや大切さを伝えるなど、木育活動に取り組む幼稚園を「緑の幼稚園」に認定し、木製家具・遊具の貸与等により、その活動を支援しました。

実績額 2,500千円
事業実績 6園

 

 

＜丹後広域振興局＞

• 丹後の森見どころ発掘事業
  丹後の森の新たな魅力を発掘・発信するため、上宮津エコミュージアムにおける地域の巨樹群の歴史や保全環境のPR、琴引浜周辺の松林等の整備、特産品や木工品等の森の惠みを紹介するリーフレットの作成を行いました。

実績額 2,500千円
事業実績　天然杉林での自然観察会等　6回120名参加 他

　

 

 

 

5　豊かな森を育てる府民税市町村交付金

 　市町村が地域の課題に対し創意工夫して行う取組を交付金事業として支援しています。交付金は、森林面積や人口などに応じて全市町村に配分し、主体となる市町村は本交付金を活用して、森林の多面的機能の維持増進に向けた事業や地域住民の意見を広く取り入れて行う事業など、府内各地で創造的な事業に取り組まれました。

実績額 248,903千円 （うち翌年度繰越額　3,469千円）

事業実績　26市町村　65事業（うち翌年度繰越分 1事業）

 

 

令和元年度豊かな森を育てる府民税市町村交付金事業実績一覧
1　森林の整備・保全の推進：167,907千円
2　森林資源の循環利用の推進：73,626千円
3　森林の多様な重要性の啓発：7,370千円
合計 248,903千円

令和元年度豊かな森を育てる府民税市町村交付金事業実績一覧（PDF：157KB）

 

4　令和元年度事業の評価

1　森林の整備・保全

　税の導入目的である森林の多面的機能の向上を図るため、「未来へつなぐ安心・安全の森づくり事業」や「府民参加型里山ふれあい事業」などに継続して取り組むとともに、近年多発する集中豪雨等による災害を踏まえ、「災害防止森林整備事業」を新設し、人家や公共施設等に隣接した森林における危険木の伐採等を実施するなど、森林の整備・保全に関する取組をより重点的に推進したところ、

　1.地域住民が主体となった、減災対策や地域の文化等と関わりのある樹木の保全等に取り組むことで、住民の減災対策や地域の森林文化と貴重な財産の継承に対する意識の醸成と向上に繋がった。

　2.きめ細かな事業メニューにより地域ニーズや喫緊の課題に的確に対応し、自然災害から府民の生命・財産を保全するための森林の災害防止機能の向上を図ることができた。

と評価しています。

2　森林資源の循環利用

　既存事業を統合して新たに創設した「京都の木のまち拡大事業」や「豊かな森を育てる府民税市町村交付金事業」、「CLT普及促進事業」の継続的な取組により、木材の主な用途である住宅をはじめ、公共施設や商業施設など、現在木造率が低い建築物等において府内産木材の利活用の取組を総合的に推進したことで、木材利用により持続的に森林が整備されるという循環の流れが一層太く安定したものとすることできたと評価しています。

3　森林の多様な重要性について、府民の理解を深める取組

　適切に整備・保全され、多面的機能を発揮できる森林を次代の府民が受け継いでいけるよう、「豊かな森林継承事業」により、平成28年の第40回全国育樹祭の大会宣言に沿ったテーマのもとでイベントを開催するとともに、各広域振興局による地域に密着した森林や林業に関するイベントを継続的に行ったことにより、森林の持つ多面的機能や豊かな森林を継承していくことの大切さを伝え、府民の森林に対する理解を深めることができたと評価しています。

 

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