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前文
第1章 総則(第1条―第8条)
第2章 文化力による未来づくりに関する基本的な施策
第1節 文化活動を担う人づくり(第9条-第12条)
第2節 文化の保存及び継承(第13条-第15条)
第3節 新たな文化の創造(第16条・第17条)
第4節 文化資源を生かした地域づくり(第18条・第19条)
第5節 文化資源を活用した経済の活性化(第20条・第21条)
第6節 多様な京都の文化の発信(第22条・第23条)
第7節 文化活動を支える基盤づくり(第24条-第26条)
第3章 京都府文化力による未来づくり審議会(第27条)
第4章 雑則(第28条・第29条)
附則
文化は、日々の生活や経済行為の中に深く根ざし、長い歴史をかけて積み重ねられ、伝えられてきた英知の結晶であり、人々に感動と希望をもたらし、豊かな人間性や創造性を育むものである。また、人々の相互の理解と交流を促進し、地域への愛着と誇りを高め、多様な価値観を受け入れ共生する意識を醸成することにより人々の社会生活を豊かにするとともに、新たな需要と高い付加価値を創出し、社会と調和した質の高い経済活動の源泉となるなど、文化は、多面的な力、いわゆる文化力を有している。
京都では、丹後から山城までの各地域において、自然と共生しながら、個性豊かな文化と産業が築き上げられるとともに、各地域が密接に連携することで、文化が高められてきた。また、常に内外の多様な文化を受け入れ、伝統の上に創造を積み重ねることで、人々を魅了してやまない我が国を代表する文化が形成され、優れた芸術が生み出されてきた。
しかしながら、我が国の社会情勢が大きく転換し、人と人、人と地域のつながりが希薄化する中で、暮らしに潤いを与え、地域の魅力と活力の源泉となってきた個性豊かな文化の継承が難しくなりつつある。こうした中、誰もが心豊かでいきいきと暮らし続けるには、私たちは、今一度先人が育んできた文化を見つめ直し、次代への継承に努めるとともに、急速に進展する情報通信技術など新たな可能性を積極的に取り入れ、交流による文化創造を促進し、加えて、文化から生み出された価値を様々な分野で活用し、更なる文化の継承、発展及び創造につなげることで、京都の未来を築き上げていく必要がある。
このような認識の下に、文化力による未来づくりに関する基本理念を定め、府民をはじめ様々な主体と協働しながら、多様な文化の振興を図るとともに、文化力による未来づくりに関する施策を総合的かつ計画的に推進し、もって、心豊かでより質の高い府民生活の実現及び府内各地域の活性化に寄与するため、この条例を制定する。
第1条 文化力による未来づくりは、次に掲げる事項を旨として行われなければならない。
⑴ 文化の保存、継承、発展、創造又は活用を担う人材の育成が図られるとともに、児童、生徒等に対する文化に関する教育の重要性に鑑み、学校、家庭、地域等における活動の相互の連携が図られるよう配慮されること。
⑵ 府民が、その年齢、性別、障害の有無、経済的な状況、居住する地域等にかかわらず等しく、多様な文化に親しみ、若しくは参加し、又はこれを創造することができるような環境の整備が図られること。
⑶ 地域の歴史及び風土を反映し、長年にわたり受け継がれてきた伝統的な文化をはじめとする多様な文化について、府民が理解を深め、文化を大切にする気運が醸成されることにより、その保存及び継承が図られるとともに、文化が息づき、府民が誇りと愛着を持つことができる地域社会の実現が図られること。
⑷ 文化に関する活動(以下「文化活動」という。)を行う者の相互の交流、文化活動と研究活動その他の様々な分野の活動との連携が活発に行われることにより、新たな文化の創造が促進されること。
⑸ 多様な文化が、教育、福祉、観光、まちづくり、産業、国際交流その他の関連分野で活用されることにより、その価値を高めるとともに、心豊かでより質の高い府民生活の実現及び府内各地域の活性化が図られること。
⑹ 文化芸術基本法(平成13年法律第 148号。以下「法」という。)の趣旨を踏まえ、芸術をはじめとする多様な文化の振興が図られること。
第2条 府は、前条に定める基本理念にのっとり、文化力による未来づくりに関する総合的かつ計画的な施策を策定し、これを実施するものとする。
2 府は、前項の規定による施策の策定及び実施に当たっては、府民、文化活動を行う者(団体を含む。以下同じ。)、大学等(大学その他の教育研究機関をいう。以下同じ。)、事業者(経済団体を含む。以下同じ。)、市町村、他の都道府県、国等と連携し、及び協働して取り組むものとする。
第3条 府民は、自主性に基づき、日常生活において、文化に触れ、及び親しむこと等を通じて、文化の保存、継承、発展、創造又は活用に貢献する役割を果たすよう努めるものとする。
第4条 文化活動を行う者は、必要に応じ、相互に連携して、文化の保存、継承、発展、創造又は活用に貢献する役割を果たすよう努めるものとする。
第5条 大学等は、創造性豊かな人材の育成、研究活動、当該大学等の有する専門知識、人材、設備等を生かした文化活動への支援等を通じて、文化の保存、継承、発展、創造又は活用に貢献する役割を果たすよう努めるものとする。
第6条 事業者は、事業活動、文化活動への支援等を通じて、文化の保存、継承、発展、創造又は活用に貢献する役割を果たすよう努めるものとする。
第7条 知事は、文化力による未来づくりに関する施策を総合的かつ計画的に推進するための基本的な計画(以下「基本計画」という。)を定めるものとする。
2 基本計画は、文化力による未来づくりに関する施策の目標及び内容について定めるものとする。
3 知事は、基本計画を定めるに当たっては、京都府文化力による未来づくり審議会の意見を聴くとともに、府民の意見を反映させるために必要な措置を講じるものとする。
4 知事は、基本計画を定めたときは、遅滞なく、これを公表するものとする。
5 前2項の規定は、基本計画の変更について準用する。
第8条 府は、府民、文化活動を行う者、大学等、事業者、市町村等と連携して、文化力による未来づくりを推進する体制を整備するものとする。
2 府は、文化力による未来づくりを推進する上で市町村が果たす役割の重要性に鑑み、市町村が行う地域の特性に応じた文化の振興等に関する施策の推進に必要な情報の提供その他の支援を行うとともに、必要に応じ、市町村相互間の連携が図られるよう努めるものとする。
第9条 府は、学校教育及び社会教育における文化活動の充実を図るため、文化に関する体験学習の充実、文化活動を行う者による学校等における文化活動に対する協力への支援その他の必要な施策を実施するものとする。
第10条 府は、次代の社会を担う子どもや青少年(以下「次世代」という。)が行う文化活動の充実を図るため、次世代を対象とした文化に関する公演、展示等への支援、次世代による文化活動への支援その他の必要な施策を実施するものとする。
2 府は、次世代の豊かな人間性を育むため、次世代が様々な支援を受けながら、多様な文化を体験し、又は文化を創造することができる機会の提供その他の必要な施策を実施するものとする。
第11条 府は、文化活動により生み出される多様な創作物(以下「文化的創作物」という。)を創造する者等の育成を図るため、これらの者が文化的創作物を創造し、及び成果を発表する機会の提供その他の必要な施策を実施するものとする。
第12条 府は、高齢者、障害者等が行う文化活動の充実を図るため、これらの者が文化的創作物を創造し、及び成果を発表する機会の提供、これらの者の文化活動が活発に行われるような環境の整備その他の必要な施策を実施するものとする。
第13条 府は、地域の伝統芸能、民俗芸能、食文化をはじめとする生活文化等の保存及び継承を図るため、これらの文化に触れ、及び身近に親しむことができる機会の提供、これらの文化に関する公演、知識及び技能の継承に関する活動への支援その他の必要な施策を実施するものとする。
第14条 府は、有形及び無形の文化財並びにその保存技術(以下「文化財等」という。)の保存及び活用を図るため、有形の文化財の修復及び防災対策並びに文化財等の公開及び継承に関する活動への支援その他の必要な施策を実施するものとする。
第15条 府は、歴史的又は文化的な景観が、文化を育む上で重要な役割を果たしてきたことを踏まえ、これらの景観の保全、再生及び活用を図るため、景観の保全、再生及び活用に取り組む活動に関する情報の提供その他の必要な施策を実施するものとする。
第16条 府は、文化的創作物を創造する活動の活性化を図るため、文化的創作物を創造する者が相互に交流する機会の提供、文化的創作物を創造する者と先端的な技術等を用いる産業分野その他の分野で活動する者との連携の機会の提供その他の必要な施策を実施するものとする。
第17条 府は、文化的創作物を創造する活動において、技術、意匠、文化的創作物の記録等の知的資産が活用されることにより新たな価値を生み出すことを促進するため、情報の提供その他の必要な施策を実施するものとする。
第18条 府は、地域における文化活動の活性化を図るため、広く府民が多様な文化に触れ、及び身近に親しむことができる機会の提供、地域における文化に関する公演、展示等への支援その他の必要な施策を実施するものとする。
第19条 府は、地域の特色ある文化資源が観光及びまちづくりにおいて活用されることを促進するため、文化資源の魅力を高める活動への支援、文化資源に関する情報の発信その他の必要な施策を実施するものとする。
2 府は、地域の特色ある文化資源が相互に結び付けられ、広域的な観光及びまちづくりにおいて活用されることを促進するため、文化資源の魅力を高める活動を行う者(団体を含む。)が相互に交流する機会の提供その他の必要な施策を実施するものとする。
第20条 府は、文化資源が教育、福祉、産業、国際交流その他の分野において活用されることを促進するため、文化的創作物を創造する者と事業者との交流の機会の提供その他の必要な施策を実施するものとする。
第21条 府は、京都府伝統と文化のものづくり産業振興条例(平成17年京都府条例第42号)第1条に規定する伝統と文化のものづくり産業、法第9条に規定するメディア芸術を活用した産業その他の文化的創作物を活用した産業の振興を図るため、これらの産業の市場を開拓する活動への支援その他の必要な施策を実施するものとする。
2 府は、文化的創作物の需要の拡大を図るため、文化的創作物の市場を開拓する活動への支援その他の必要な施策を実施するものとする。
第22条 府は、多様な京都の文化に対する関心と理解を深めるため、多様な京都の文化に関する展示、公開その他の普及活動への支援その他の必要な施策を実施するものとする。
第23条 府は、文化を通じた国際交流を推進するため、文化に係る海外との交流の機会の提供その他の必要な施策を実施するものとする。
第24条 府は、文化活動が活発に行われる環境を整備するため、必要に応じて文化活動に対する指導及び助言が受けられる体制の整備、個人又は民間の団体が文化活動に対して行う支援活動の促進、府民に身近な文化活動の場の充実その他の必要な施策を実施するものとする。
第25条 府は、文化活動の振興に資するため、文化的創作物の記録及びその公開についての支援及び情報の提供その他の必要な施策を実施するものとする。
第26条 知事は、文化の保存、継承、発展、創造又は活用に顕著な貢献をした者の顕彰を行うものとする。
第27条 第7条第3項(同条第5項において準用する場合を含む。)の規定による知事の諮問のほか、文化力による未来づくりに関する重要事項の調査審議を行わせるため、京都府文化力による未来づくり審議会(以下「審議会」という。)を置く。
2 審議会は、前項の規定による調査審議のほか、文化力による未来づくりに関する事項について、知事に建議することができる。
3 審議会は、委員20人以内で組織する。
4 委員は、学識経験を有する者その他適当と思われる者のうちから、知事が任命する。
5 委員の任期は、2年とする。ただし、補欠の委員の任期は、前任者の残任期間とする。
6 前各項に定めるもののほか、審議会の組織及び運営に関し必要な事項は、規則で定める。
第28条 府は、文化力による未来づくりに関する施策の策定及び実施に必要な調査研究を行うものとする。
第29条 府は、文化力による未来づくりに関する施策を実施するため、必要な財政上の措置を講じるものとする。
この条例は、公布の日から施行する。
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