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(令和3年2月19日、京都府ものづくり振興課)
ものづくり振興課職員が、勝手なシロウト目線で、インターネットや書物で学んだことを紹介し合う「読書会」(コロナ禍なので、オンラインで)を始めてみることにします。いつものように思い付きであり、いつまで続くかは分からない「未定列車」です(笑)
足利)「【アニメーションの12の原則】ディズニーから学ぶ映像作品の表現方法」というウェブサイト、とても分かりやすく素晴らしいよ。ウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオの創設期のアニメーターが書いた本の内容やディズニースタジオが実際に使っている様々な映像の表現方法を紹介されています。
中尾)そうなんですか。
足利)順番に紹介します。まず、「潰しと伸ばし」。ボールが壁にぶつかる際に形が潰れ、跳ね返りの際には伸びるように、アニメでも現実の動きに沿って「潰しと伸ばし」をつけることで、よりリアリティのある生き生きとしたものにされてるんだって。何気なく見ているアニメも、なるほど!と
中尾)なるほど!(笑)
足利)それから「予備動作」。現実では何ごとにも動く前には予備動作が入るように、一連の動きの中に予備動作が入ることで、見ている人は次の動作を予想することができ、予想した動作が実際に起こることで、見ている人は気持ちよくスムーズに内容を理解することができるというもの。予備動作には、身体全体、目線、画面の構図などいろんな手法があって面白い。
中尾)なるほど。
足利)2Dドットゲームのキャラクターが登場する場合に、「動画」を一部抜いて、わざとカクカクした動きになるようにする工夫もあれば、キャラクターに実在感や生命感を持たすためには、例えば振り返る動作にしても、最初に浮き出すのは頭で、その次に胸、腰、足であったりするわけで、「現実」でも見て取れる動きはきちんと採り入れないといけないということも書かれています。
中尾)「慣性」や、体のたるみとかもですね。
足利)そうそう。振り子の動きなんかがそうだけど、等速で動くものは稀で、普通は動きの最初や最後は変化するということも忠実にしないといけないということですよね。
中尾)現実に忠実に、ですね。
足利)一方で、気持が落ち込むときの肩の落とし方、喜ぶ時の肩の上げ方など、大げさにした方が伝わりやすいという工夫もされているね。落ち込んでいるキャラクターの動きはゆっくりとか。現実よりも「誇張」した表現も採り入れられています。
中尾)キモの部分で用いて、説得力を持たせないといけないんですよね。
足利)そうそう。似顔絵が良い例だとのことだね。誇張しすぎると違和感が出てしまうし、適切と感じるものにしないといけない。オリジナリティとセンスが問われるところだね。
足利)次に「演出」。アニメーターの人材育成の観点では、「動画」「原画」から入って、やがて「演出」へというお話は、ライデンフィルムの坂本さんに教えてもらいましたな。
中尾)そうでしたね。
足利)演出には「カメラワーク」とか「撮影」と呼ばれる工程があるわけです。最近のデジタルアニメでは、被写体をカメラで撮影するという、本来の意味での「撮影」はありませんが、様々な表現ができるようになり一層重要性が増している工程です。逆に、かつてのセルアニメでは、撮影台を用いて「セル画」、つまり、パラパラ漫画みたいなやつね、それと「背景画」をフィルムで撮影・合成するという「文字どおりの撮影」が行われてきました。例えばロボットが動き回るシーンなんかだと、大きな背景画の部分、部分でセル画をその上に重ねてして撮影をするという、まさしくカメラを動かしながら撮影したりするわけですな。
中尾)例えば横移動の場合、カメラの首を振る「パン」、カメラ自身が移動する「フォロー」とかですね。カメラではなく、カメラフレームは固定して背景画の方を動かすなど、いろんな手法がありますね。
足利)そうだね。いずれにせよ、そのカメラフレームに映る部分が私たちの見る映像となるので、そのカメラフレーム、つまり構図の中に収まる「レイアウト」をどうするか、言い換えれば、大きな背景の中でどこを切り取って「撮影」するかというのは、大変重要なわけですな。先ほどの「予備動作」を採り入れ、これから何か起こるであろう背景を中心に据えたりということもあるし、アニメではないけれど、映画「ジョーズ」では、ほとんどサメが映らないことが、逆に恐怖心を増すことに繋がっていると言われていたり、様々な工夫がされています。ホラー映画では、だいたいのパターンが、夜で雨が降っているんだって。
中尾)なるほど。
足利)背景を構図の真ん中に据えて主人公を端に寄せるとか、構図に足元だけを収めるとかいうのは、京都アニメーションなんかがよく用いている手法のようだね。『劇場版ヴァイオレット・エヴァーガーデン』でも実際そうだった。それによって、キャラクターに押し迫るもの、キャラクターが背負わされているものを、痛いくらいひしひしと感じられる効果なんかがあるんだろうね。
中尾)そうですね。
足利)要するに、あるアイデアのどこをとっても間違いようのないよう明確に提示すること、見ている人に作り手の伝えたいことを100パーセント伝えられるようにすることが「演出」の役割なんだって。
中尾)ほほう。
足利)だから、「演出」のために、わざと「ウソ」もあるわけです。手塚治虫さんが「マンガのウソ」とおっしゃっていたそうですが、例えばミッキーマウスの耳は、横顔でも重ならないよう描かれ、アトムの髪の毛も、アトムがどっちを向いていても関係なく同じように描かれています。そうした方が分かりやすいからですな。これは厳密には「嘘」ではなくて「誇張」だね。
中尾)キャラクターそのものの魅力を引き出すことは重要ですね。
足利)ヒーローはヒーローらしく、悪役は悪役らしく、見た目で分からないといけない。その上で、特に悪役は個性が重要ですが、徐々に見た目から深い部分まで伝えていくことで、キャラクターの魅力が生まれてくるんですな。
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