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知恵の経営、元気印、経営革新、チャレンジ・バイの各認定等を受けた府内中小企業を紹介するページです。
(令和2年7月6日、ものづくり振興課 足利、中尾)
株式会社ライデンフィルム(外部リンク)京都スタジオ(京都市)の坂本一也室長にお話をおうかがいしました。
--「製作委員会」などの言葉で使われる、企画、配給等を含めた「製作」ではなく、実際に作品を作る「制作」を担っておられる「アニメ制作会社」でいらっしゃいますが、設立はいつでしたか?
坂本)2012年設立のアニメ制作会社です。現社長の里見もそうですが、いくつかのアニメ制作会社出身者らで設立されました。この京都スタジオは2015年1月に開設しました。
--たくさんの方が今も机に向かって一所懸命手描きで描いてらっしゃいますね。
坂本)はい。アニメ制作の工程は、絵コンテ・レイアウト、原画・動画、ペイント、CG、撮影等色々ありますが、京都スタジオでは作画部分をメインで担当していまして演出や作画監督、制作進行もいますがスタッフのほとんどが原画や動画を描いています。
--いわゆる「アニメーター」というのは・・・
坂本)今はアニメ制作にかかわる全セクションで使われることもありますが、主に原画や動画の担当者を指すことが多いですね。簡単に言うと原画とは動きを表現するキーフレームの絵のことで動画とは原画と原画の間の画を増やして滑らかに動いているもののことです。実物の原画、動画がこちらです。
--へー!!これですか。一本一本の線をこうして均一の太さで正確に、手で描くって大変なんでしょうねえ。
坂本)そうですね。今はデジタルで作画することも多くなりましたがアナログ(紙に鉛筆で描く)の場合はすごく練習する時間が必要です。「職人技」ですね。うちの場合、最初は動画からスタートで、早くて1年くらい経ってからその次のステップの原画を描くようになることが多いです。
--そして坂本さんのように演出をなさるようになると、絵コンテを描かれるといことですね。やはり、もともと絵が上手でらっしゃったのでしょうね。
坂本)いえいえ、小さい頃から絵は好きでしたが、上手ではなかったですよ。ただ、業界に入ってから仕事として「食べていける」技、ノウハウを身に付けられたと思っています。
--食べていける?
坂本)「仕事」になる絵の上手さはまた別ものということでしょうか。我々は芸術家ではないのでオーダーに忠実に応えることが必要というか、どういう絵が求められているか合格ラインを見極め、スケジュールを守る、そういうことも重要かと思っています。我々の仕事の場合、個人の絵がいくら上手くても似てなさすぎるとか要求されたものが描けないとかであれば「食べて」はいけませんから。
--芸術家というより職人、そう理解すると分かる気がします。
坂本)そうですね。よく芸術家というよりは職人という言い方をされることもあります。業界全体の動向としては、特に東京方面においては、原画を描くようになった段階でフリーランスになる人も多いので、人材育成は業界としての大きな課題になっています。また、フリーランスが多くなってしまうと制作会社は制作管理に人件費をかけざるを得ないとか、スケジュールやクオリティコントロールも難しくなったり、よくない側面もありますし、「ペイント」「CG」「撮影」等が組織体制が整っているのに対して、フリーランスが多い「作画」はどうしても歪が生じやすい傾向はあるかと思います。
--なるほど。実はこちらにお伺いして意外だったのが、皆さんがここに集まって描いてらっしゃるということです。最近はコロナの影響もあり、リモートワークが謳われていますし、アニメづくりなどは導入しやすい分野かなと思っていたのですが、人材育成、職人育成のためにはなかなかそういうわけではないということなのですね。
坂本)そうですね。リモートワークも導入しておりましたが特に経験の浅い若手は「現場」で仕事をして学ぶことが重要だとも思っています。最近は地方のアニメスタジオも増えてきましたが、まだ大半が東京で企画して東京主導で作っています。しかし、京都スタジオを開設して5年が経過し、京都で元請制作するタイトルを、関西のアニメ会社で連携して制作するラインづくりも少しずつ進めることが出来ました。こうして京都・関西でアニメを作っていく、そこから業界を再構築し、働き方の改善等にもつなげていく、そういうことを目指していますし、ある程度そういう土壌が出来つつあるのではないかと思います。
(京都スタジオツイッター)
--素晴らしいですね。ここ数年で、アニメスタジオが京都にも増えましたね。府では「BitSummit」開催をはじめゲーム産業振興を図り、京都にゲーム企業が増えてきた一端を担っていると自負していますが、京都市さんも「京都マンガアニメフェア」をはじめアニメ産業振興に注力してこられ、その素晴らしい成果だと思います。もちろん、ベースとして府市合同で京都クロスメディアクリエイティブセンターや京都クロスメディア推進拠点などといった支援機構も設置してまいりました。
坂本)そうですね。色々お世話になっています。ライデンフィルム京都スタジオは東京に染まらずイチからスタジオを作るにはどこがよいか、ということで京都が選定されました。丁度そのくらいの時くらいから他のスタジオさんも京都に作られたり、色々な動きが京都で始まった感じがありますね。
--ところで、御社のアニメの特徴ってあるのですか?
坂本)意図的にいろんなジャンルの作品に取り組んでいますね。そういう意味では特徴がないのが特徴でしょうか。
--ええー?!じゃあ、様々な画風の作品に、その都度対応してらっしゃる?!
坂本)そういうことになりますかね(笑)
--それが「職人」たる所以ですかね。「芸術家ではなく職人」ということが、また一つ理解できた気がします。
坂本)まあ、多くのスタッフがそれぞれの作品に関わっていますので、その中で自分の得意な作風を選んで参加したりもありますが。東京と違って京都スタジオはスタッフも多くないのでそういった意味ではなんとなく「色」があるかもしれません。日常風景描写であったり、情緒的であったり、そういったものがキーとなっている作品が多い気がします。
--今後の展望はいかがでしょうか。
坂本)京都という今までのアニメ業界とは違う「新しい場所」でアニメの「第2の産業の地」を作っていければと思います。
今後の発展が楽しみです!
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