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ジャルガルサイハン ジャルガルマーさん(みんなの京都)

グローバル・エコシステム形成プロジェクトの一環で、京都で住まう、働く海外出身の皆さんの実情を紹介する「みんなの京都」です。

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日本の若手研究者に光を!

(2023年7月20日更新、ものづくり振興課 足利・坂井、京都産業21 西田)

ジャルさんの顔写真

京都大学産官学連携本部の研究員、ジャルガルサイハン ジャルガルマーさん(ジャルさん)にお話をお聞きしました。

『おしん』を見た母の勧め

--いつもお世話になっております。今日は、モンゴルから日本に来られた経緯や研究なさっていることについてお話をお聞かせください。まず、なぜ日本に?

ジャル)『おしん』を見た母に勧められたのです。

--なんと!

ジャル)大学卒業後、海外留学すると決めていました。若い時に何を学ぶか、どこでどんな経験をするかが大事だと言われていたのです。『おしん』で描かれている日本は、人間らしさや優しさであり、みんな礼儀正しく、自分だけでなく相手のことを考えています。

--『おしん』で描かれている日本と、現実の日本でギャップがあると思うのですが、大丈夫でしたか?

ジャル)大丈夫でした!(笑)

--大相撲中継がモンゴルにも流れてたりするんじゃないのですか?

ジャル)相撲は、あまり見ないんです(笑)

比較教育政策からみる東アジアと日本

--で、日本に来られて・・?

ジャル)1年半、京都の日本語学校で日本語を勉強しました。その後1年間、研究生を経て、京都大学大学院で比較教育政策学を勉強しました。東アジア諸国の高等教育政策の比較研究で、とてもおもしろかったです。

--どういった研究なのですか?一言で言い表すのは無理だと承知で、私たち素人に教えてください(笑)

ジャル)一言で言えば、その国の政治経済体制と、大学などの高等教育体制に相関があることを見出すとともに、国による違いがあった場合、その国特有の文化的な背景や大学に関する考え方など明らかにする研究です。例えば、アジア諸国で政治体制は社会主義のまま(中国、ベトナム)でも、経済体制に関しては市場経済が導入され、高等教育機関への学費徴収の導入、私立高等教育機関の創立と国立高等教育機関の民営化等の共通性が見られます。その結果、コストが低い、「社会科学」を中心に文系分野の拡大が見られましたが、他方でモンゴルでは工学分野の拡大が見られます。その理由は、モンゴル国は民主化し、ソ連に頼ることができない中、自国での技術者育成に努めたといった背景が浮かんでくるのです。また、台湾とモンゴルの大学の管理運営の在り方が似ており、民主主義の捉え方の視点が共通して可能性があるなど考えます。

--なるほど。

ジャル)教育体制から、その国の政治、経済、あるいは文化的な側面を紐解き、教育への考えを見出していく研究とも言えます。

--日本はどうですか?

ジャル)国立大学も独立行政法人化され、つまり民営化しているわけですが、ご承知のとおり、2004年から毎年、大学の運営交付金が減っています。その結果、研究者のポストの減少、競争的資金の強化等により、利益に直接結びつかない、お金にならない分野、ビジネス化とは遠い分野の研究がどんどん消えていっています。研究って5年、10年先の利益ではなく、100年、200年先を見て行うべきですし、そういう意味であらゆる分野の研究を平等に行う環境づくりは大学にとっては、とても大事だと考えています。

--私見ですが、市場を追いかけないアートや研究は、成功すれば究極のビジネスになると思います。ニーズを追いかけるのではなく、シーズそのものが、独創性そのものが人々を惹きつけ市場を創造する。一見無意味に思える研究をどんどんさせておくことが、豊かさそのものですし、現状は残念ですね。

ジャル)そう、結果的に、今は将来研究を担う存在である日本人の博士後期課程への進学率はとてもひくく、このままだと日本では研究者がいなくなり、学問の危機が訪れている状態です。

モンゴルと日本の食の違い

--さて、日本に来てどのくらいですか?

ジャル)2011年の10月に来ましたから、もう10年以上ですね。

--当初、困られたことは?

ジャル)日本語がわからなかったので、買い物すらおぼつかなかったですね。あと、電車もややこしかったですね。モンゴルではシベリア鉄道しかありませんから。

--モンゴルでは?

ジャル)小さい頃はゲルの家に住んでいました。

--へえ!!

ジャル)夏は川辺に移動し、冬は山の方に移動します。途中から、私の学校のためにウランバートルのマンションに引っ越しました。

--食事はどうですか?

ジャル)食事は全然違いますね。日本食は甘口だなあという印象です。最初のころはどうしてそんなに砂糖を入れているの?と思ったものでした。後で、砂糖ではなくみりんだと知ったのですが(笑)

--モンゴルは甘くない?

ジャル)例えばミルクティには、岩塩を入れますし、牛乳のほか、牛の乳由来のバターを使った油を入れたりします。

--朝、昼、晩とどんなものを食べるのですか?

ジャル)朝はパンですかね。昼は弁当であったり、ボーズと言って、ひき肉を餡として小麦粉の皮で包んだモンゴル風の蒸餃子であったり、夜は羊肉とジャガイモであったり、ですね。

モンゴルのパン モンゴルのボーズ モンゴルの肉料理
左からモンゴルのパン、ボーズ、肉料理

--ほう。

ジャル)日本の肉は、私にはまずいです。

--まじっすか!!

ジャル)日本の家畜は、自然の草を食べていません。与えられた餌だけを食べています。でもモンゴルでは、遊牧で自然の草を食べています。だから脂身が少ないです。

--肉にも「天然」と「養殖」の違いがあるわけですね(笑)。私は脂身が好きなんですけどね。

ジャル)日本の食は、バリエーションが豊富ですよね。おばんざいに代表されるように小皿が多く、見た目も美術品のように美しいものが多いです。

ヤングドクター「偏愛講座」&発見・体験ツアー「ぶらりさーちゃー」

--さて、目下の取組は?

ジャル)先ほど申しましたように、厳しい環境に置かれている日本の若手研究者を支援したいという思いがありまして、2つの取組を始めています。ヤングドクターが自分の研究を講演する「偏愛講座」と、研究者たちの研究領域をテーマにして、彼らの得意なフィールドで学べる知的な旅をプランニングする「ぶらりさーちゃー」(研究者の偏愛発見ツアーと偏愛体験ツアー)です。研究者は、特化した分野をマニアックに研究していますので、敢えて「偏愛」という言葉にしてみました(笑)。

 

--むちゃむちゃいいですね!実は私どもも、京都の研究者を取り上げて紹介する「知の京都」というインタビューを続けてきておりまして、ぜひ連携しましょう。最後に今後の展望はいかがですか?

ジャル)是非とも、よろしくお願いいたします。今後の展望は長年お世話になっている京都、京都大学に恩返しをしたいです。「ぶらりさーちゃー」のように、研究者にしかできないツアーをどんどん広めていくことで、研究者の地位向上、そして、研究者と引き出す秘められた地域の魅力は地方活性化にも繋げていければと思いますね!

今後、ますます楽しみですね!

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