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株式会社アナテック・ヤナコ(京都企業紹介)

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途上国の課題解決 に貢献- JICA中小企業・ SDGs ビジネス支援事業採択

(令和2年9月30日 ものづくり振興課 足利)

JICA中小企業・ SDGs ビジネス支援事業採択(外部リンク)

高品質・高安定性の水質、大気・ガス環境計測機器

(掲載日 平成28年10月4日、聞き手・文:ものづくり振興課 足利)

 

株式会社アナテック・ヤナコ(本社:京都市伏見区)の川勝代表取締役様、中富取締役様、松本管理本部長様にお話をおうかがいしました。

水質、大気・ガスの環境計測機器専業メーカー

まず、事業の概要を教えてください。

川勝) 環境計測機器、すなわち、水質計測機器、大気・ガス計測機器等の開発・製造を行っています。

―基礎的なことから確認しますが、水質計測機器と言いますと、「pH値」とかですかね。リトマス試験紙だとか、酸性はレモンのしぼり汁、中性の純粋がpH7で、アルカリ性は石鹸水だとかいったことを昔、学校で習った記憶はあるのですが。ほかに「導電率」といった言葉も耳にしたことがあるのですが。

川勝) 「pH値」は、水の酸性、アルカリ性を示す重要な指数として農・畜産から食品、医療、美容分野はもちろん、化学、石油、金属精錬、めっき加工などの工業など、様々な分野で、測定対象として大変ポピュラーです。環境計測分野では、河川や湖沼などの環境水の基準や、工場の排水基準が法令で定められており、厳しく管理されています。また、「伝導率」もよく出てきますね。水に塩分などの電解質が解けると電気が流れやすくなるので、飲用水の水質、食品の塩分濃度、半導体の洗浄水、工業で利用される水溶液の品質など様々な用途に利用され、河川、工業排水の汚染度などの指標として測定されます。

―なるほど。

川勝) 当社の場合は、国や地方自治体などで定められた法規制に基づき、常時監視用の自動計測機器を開発し販売しております。水質関連では、COD(化学的酸素消費量)、りん、窒素、シアン、フェノールなど多種多様な物質の工場や研究所の排水管理、河川・湖沼の水質常時監視に、ガス関連では、工場の排ガス管理や分析センターや研究所のガス計測に役立っております。

 

―そのガス計測ですが、大気・ガス計測器の原理は、ガスクロマトグラフとはまた違うのですか?

中富) 同じようなところもあります。例えば、ガスクロマトグラフの検出器でもよく使われるFID(水素炎イオン化検出器)方式つまり水素炎の中に有機化合物が入るとその一部がイオン化され、そこにある高電圧を掛けると微少なイオン電流が流れ、それを検知することにより、トータルVOCを測定する装置があります。また特定のガスを採り出したい場合には、触媒を用いて特定ガス以外は酸化除去するという機構を用いた装置もあります。ただし、ガスクロマトグラフのようにサンプルを捕集してというバッジ処理ではなく、瞬時連続測定できるようになっています。

―なるほど。

中富) ガス計測器で一番の主力製品は、煙突から出てくる排ガス中のNOx(窒素酸化物)自動計測器です。NOとオゾンの化学発光を利用した計測器ですが、今から50年程前に世界でもいち早く装置化したと言われており、現在もユーザ様から大きな信頼をいただいております。ほかにも地球温暖化研究用のイソプレン計や食料関係では、もやし生産工場に使用されているエチレン計など、煙道排ガスから工程管理測定まで様々な分野でご利用いただいています。

 

―環境計測機器ということですが、どういったところで使われているのですか?

川勝) 官公庁や研究所、民間の工場等で約8,000台の導入実績があります。売上高で言いますと、水質計測機器は、システムの規模が比較的大きく付属品も多いこともあって、社内の比率が高くなっております。この分野においては、他社に先駆けて取り組んでいたので、実績数は大変多く、例えば京都近くで例にあげますと淀川や琵琶湖等の観測所などで、当社の自動計測機器が水質監視に大変お役に立っております。韓国では、ソウル市の漢江を始めとしての河川や工場で多くの実績を有します。

 

ニッチで高品質・高安定性でファンを獲得

―すごいですね。御社製品が支持される理由、特長はどういったことでしょうか?

川勝) 比較的ニッチな市場ですが、競合は大手メーカーばかりです。当社のような中小企業は、この様な大手メーカーと正面から競う事は出来るだけ避けられるよう「戦略」を立てます。大手と低価格競争になってしまいますと、到底勝てないですからね。大きな市場にはなるべく参入せず、なるべくニッチで手間のかかる分野を深堀することを考え、一般的な機器では計測しづらく困っておられるお客様に対し、それぞれにカスタマイズした製品を提供など、様々な付加価値のある製品の販売を心がけています。このような市場は、大変勉強になることが多く、お客様のニーズや考え方を教えていただけ興味深いのです。

―なるほど。

川勝) 「品質」についても、当社製品は故障などのトラブルが殆どなく、安定性に定評があります。また、他社製品より長期間ご使用いただけることで付加価値を感じていただいいております。もちろん、長期ご使用いただくとメンテナンス部品の長期在庫も必須となりますが、我々においても、普段長持ちする機器には安心を感じ、「また同じメーカーのものを使用したい。」と考えるのと同じで、当社の装置に関しても同じように安心してご使用いただけると考えています。そのほか、「操作性」あるいは「デザイン」についても、複数台を隣に並べて設置することを考慮して側面に突起を設けないとか、扉を開けた時に隣の装置につっかえないように扉に斜めの切込みを施しておくとか、細かい配慮もしています。

―ニッチなところを突いていくということは、ラインナップも多いわけですね?

川勝) 当社は、大変豊富なラインナップを有していると思います。お客様オリジナルの計測機器を作成することも珍しくありません。様々な種類の計測機器を製造することは、先程も申し上げましたが、当社にとっても大変勉強になるのです。しかし一方で、当社は基本的に小ロット対応なので、例えば新しい規制が設けられた際などは、受注が殺到しても生産が追い付かず、結果的にシェアーを落とすということが発生します。しかし、当社は、いちど当社製品をお使い頂いたお客様には必ずご満足して頂ける、製品の品質とサービスを提供し、当社のファンになって頂き長くお付き合いする事を目指しており、リピート率100%を目標に、信頼関係のもとシェアーを一歩一歩確実に拡大して行っていると自負しております。現場の方が口コミなどで評判を聞いてお問い合わせいただくこともあり、大変嬉しく思っております。

高品質・高安定性を支えるロングスパンの部品開発とシンプルな設計思想

―どのようにその高品質、安定性を実現されているのですか?

川勝) 何十年もの間、何度も何度も改良を重ねた製品であること。その中に、ノウハウや設計思想が息衝いているからだと思います。

 

中富) まず、「部品」については、部品メーカーさんと「絶対壊れないものを」ということで、最低でも1年かけて試行錯誤して独自のものを開発しています。そういう部品から構成された製品ですから、出荷後の故障も殆どありません。

―すごいですね。

松本) また、当社の水質関連の装置は、万が一、故障などトラブルが発生したとしても、お客様でも対応できるようなシンプルな設計をしています。これは、本装置の役割として早急な復旧が必要だからです。装置が測定できなくなると排水できず、生産が止まってしまう場合もあり、工場としては大変困られます。お客様での修理が困難な構造であったり、ブラックボックス化してしまうと、専門の技術者を呼ばないと復旧できなかったり、時間が掛かる事になります。当社の装置は、まずお客様ニーズが第一だと考え、お客様のご要望に応え、この様なメンテナンスし易い設計思想になっております。

―中を拝見させていただきますと、本当に大変シンプルに設計されているのが分かります。逆に、ここまでわかりやすくされてると、他社に簡単に真似されませんか?

松本) それは実際に起り得ます。しかし、それは、当社の技術を認めていただいたことにもなります。当社の技術は、長い間お客様からいただいた要望や課題を繰り返し検証して作り上げてきたので、同じものは出来ないと確信しております。

世界展開と新分野展開

―これだけのラインナップでそれぞれに独自のノウハウが詰まっているということで、社員の育成面等ではどのような工夫をされてらっしゃいますか?

川勝) そうですね。「社員」の教育は、基本的にはOJTの繰り返しで時間と経験が必要です。その他には、展示会、学会、や研修に積極的に参加し常に新しい技術、動向を得るためのネットワークを構築するよう努めてもらっています。また、社内では、日々のメールに多くの学ぶべき重要な教材が潜んでいると考え、個人アドレスではなくグループアドレスを設定し、常にメールで情報共有ができるようにしています。新入社員は、メールの文章の書き方についても、先輩の手法を学ぶことが出来ます。社員採用については、新しいことにも目を向けられ取り組める「素直な」人材であるかどうかを重視していますね。

―なるほど。

川勝) また、信頼できる「仕入先」が多いことも当社の強みです。何十年もお付合いしている仕入業者が殆どで、当社の状況に応じ、協力して頂いています。最近、中国への販売が増えて生産体制が変化した中、柔軟に対応したいただき、本当に助かっています。

 

―中国の話が出ましたのでお尋ねしますが、新しい動きがあるようですね。

川勝) 一言でいえば、これまでの当社の手法ではない「大量生産」を中国向けに考えています。水質も大気も環境問題が深刻な国です。市場が莫大なので欧米メーカーも参入してきており、価格競争の様相を呈してきていますので、当社なりの工夫を施しながらじわじわと進もうと考えています。

―今後の展望は?

川勝) まず1つは、海外市場の勉強ですね。中国向け輸出についても、実際に出ていかないと勉強は出来ませんので、今後インドその他のアジアなどの市場も考え、慎重に進めます。もう1つは、工場の工程管理だけでなく、農業の工程管理・生育管理等への展開も興味があります。例えば、モヤシはあるエチレン濃度を維持すれば、シャキシャキ感が増すと言われています。TPP、食糧問題など課題が多いこの分野をいかに支えていくか、大変意義深いと考えています。

 

 

同社の今後の発展がますます楽しみです!

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