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知恵の経営、元気印、経営革新、チャレンジ・バイの各認定等を受けた府内中小企業等を紹介するページです。
(掲載日:令和元年5月16日 聞き手・文:ものづくり振興課 足利)
WHILL株式会社(外部リンク)(日本本社:横浜市、西日本オフィス:京都市(京都リサーチパーク))APAC営業・マーケティング本部の増本大助さんにお話をおうかがいしました。
-こんにちは。
増本) はい、こんにちは~。
-おお!いきなり、搭乗して登場!しょうもないダジャレですみません。とても乗りやすそうですね。
増本) はい、我々は、このパーソナルモビリティWHILLを製造しています。試乗してみてください。
-おお!とても乗りやすい!操作も右手のコントローラーで前後左右、回転全てできて簡単ですね。
増本) スピードは、左手のスイッチで4段階の切り替えができます。また、レバーから手を離せば、坂道でも自動でブレーキがかかりますし、傾斜のある道でも、左右のモーターが適切に制御しますから、まっすぐに進むことができます。
-とても安定してて快適です!今はこうして搭乗して操縦していますが、遠隔操作や自動運転は?
増本) まず、遠隔操作についてですが、WHILL MODEL Cは、Bluetooth LEでスマートフォンと接続でき、スマホアプリで簡単に操作できます。これによって、自分の元にWHIILを呼んでくることなどができますし、スマホ画面で走行距離やバッテリー消耗度を確認できたり、本体にキーをかけたりもできます。
-なるほど、いいですね。これは、目視できる範囲での操作というわけですね。
増本) そうですね。一方、「WHILL自動運転システム」を新たに開発し、現在、商品化に向けて準備を進めています。ハードウェアとしてのWHILL自動運転モデルと、複数の機体を管理・運用するシステムから構成されます。これまで、世界中の空港や商業施設から、WHILLを設備として導入したいという要望を多くいただいてきました。広い施設内では、人にぶつからずに安全に走行できることや、車椅子の運搬や回収、管理の人手を減らすことなど、さまざまな条件が求められます。
-今おっしゃった2つのことについてお聞きしたいのですが、まず、空港や商業施設という人が多いところで「人にぶつからず」というのは、なかなか難しい技術です。事前にマップを作る方式の場合、人が多いと言いますか、物の配置が代わったり、レイアウトが代わったりすると、とマップを認識できない場合がありますよね。
増本) 独自に開発したステレオカメラ等のセンサー群で補完しているのです。特にこのステレオカメラは、視野の広さが特長です。前・横方向監視のために、左右のアーム部分に1台ずつ搭載し、広い視野角度を実現しています。後方にもセンサー等を搭載し、バック走行の際のぶつかりに備えます。
-なるほど。もう1点は、「車椅子の運搬や回収、管理の人手を減らす」ということですが、そんなに空港等は苦労なさってるのですか?
増本) はい。特に海外の空港では、そういう人件費について明確にコスト計算がなされていますね。WHILL自動運転システムですと、乗り捨てたWHILLは自動で待機場所まで戻るなどの運用が可能で、回収にかかっていた人手を減らすことができます。また、WHILLは通信回線を搭載しているため、機体の位置情報を一元化して管理することも可能で、どの場所にどの機体があるかを把握でき、サービスを提供する方の運用の負荷を削減できます。使用シーンにあわせたオプション・アプリケーションを開発することもでき、サービスを提供する方にとって最適な機能を提供します。
-素晴らしいですね。デザイン性の良さなどでも大変有名なWHILLですが、改めてその特長を教えてください。
増本) まず1つは「走行性」ですね。日本電産様と共同開発した高出力のインホイールモーターを採用しており、10度の傾斜の坂でも登れますし、5cmの段差も乗り越えます。街中には、2.5cm程度の段差が結構たくさんあるのですが、従来の電動・手動切換型の車いすですと、乗り越えられない場合も多いようですが、その倍でも乗り越えられるようにしています。
-素晴らしいですね!ちなみにバッテリーは?
増本) 5時間の充電で、16km走行できます。パナソニック製の2.8kgの軽量バッテリーで、取り外して自宅で充電できます。
-先ほども大変乗りやすかったです!
増本) しかも、4つに簡単に分解することができまして、セダンの車のトランクにも入れることができますので、遠出した先等でもご利用いただけます。
-ユーザーの世界が広がりますね。
増本) そうですね。そして3つ目が、やはり「デザイン性」です。世界的なプロダクトデザイン賞である「レッド・ドット・デザイン賞」もいただきました。
-特に、斜め後ろからのフォルムがすごく格好いいですよね!真ん中に1つテールランプがあるようなデザインって、なんかF1マシンのそれみたいです!
増本) 自動車メーカーでデザインを担当していた者によるデザインですが、どのシルエットがカッコよく見えるか何度もスケッチを重ね、「カッコよさ」を第一に検討したのち、利便性や機能性を磨いていったと聞いています。おっしゃった、斜め後ろから見たときの後輪からバッテリー、アームサポートまでが直線で同じ角度で伸びていますよね。我々は「GoGoLine」と呼んでいて、ここを美しく見せることで、WHILLの前進していく乗り物感を表現しています
-はまります、これは!(笑)
増本) また、小学生からご高齢の方までどの年代の方にも馴染むというのはWHILLの重要な要素でして、カラーバリエーションはどの年代にも合うように、8色ご用意しています。カラーバリエーションで目指したのは、「元気に見える、でも上品にも見える」という印象です。そのテーマを実現するために何度も試作を重ねました。ピンクやゴールドは、シャンパン系の色味を入れて上品に仕上げています。ゴールドは男女問わず人気の色です。特に難しかった色はブルーとブラックだと聞いてまして、ブルーは普通に塗装するとどうしても沈んだ印象になってしまうので、落ち着きと爽やかさを兼ねた明るい印象にするために何度も試作したようですし、ブラックは遠くから見たときは深い黒が出て、近くに寄って見たときは繊細な美しさが感じられるように、パールの量を微妙に調節しています。他の色も、屋内で見たとき、屋外で見たとき、晴れの日、曇りの日、様々な光のもとで色の出方を何度もチェックしたものです。
-なるほど、そういったことが大切なのですね。とても参考になります。
増本) オプションも充実しています。例えば、コントローラーも、標準のマウスタイプのほか、スティックタイプ、グリップタイプなど合計4種類あります。
-なるほど、そういうことも大事ですね。完成度が高いですが、これだけの高機能であれば、お値段も高いんじゃ?
増本) いえいえ、一般の電動車いすとほとんど変わらない、メーカー小売希望価格で45万円(非課税)です。介護保険レンタルでレンタル価格月3千円ほどです。
-素晴らしいですね。よく、ロボットで問題になるのが、事故などの補償の問題ですが。
増本) サポートサービス「WHILL Smart Care」により、年間契約価格19,800円(税抜)で、ご自身のケガや相手への補償のための「保険」、24時間365日全国対応の「ロードサービス」、修理が必要となった際のお知らせなどの「スマート診断」の3つのサービスをご提供しています。
-そこもしっかりと抑えてらっしゃるわけですね。お客様はBtoC、BtoBの両方ですか?
増本) そうです。BtoCに関しては、75歳以上の日本人3,000万人うち、約3分の1の900万人が長距離歩行が困難だと感じていると言われています。しかし、車椅子に乗ることに対し、2つのバリアがあると言われています。1つは物理的なバリアです。舗装されていないところであったり、舗装されていても溝や段差がありますし、急な坂道もありますね。もう1つは精神的バリアです。高齢者と思われたくないということであったり、介助者に申し訳ないという気持ちであったりです。
-WHILLは、そうした物理的バリア、精神的バリアを打開するような機能、デザインを有していますね。
増本) BtoBに関連することとして、高齢者の介助に関する人手不足も大きな課題です。なかでも空港、駅、商業施設などの大型施設では、先ほども申しましたように車椅子の介助や回収に多くの人手が必要とされます。そうしたことからも、WHILLは様々な遊園地、施設などでも導入していただいています。
-介助者、施設の負担を減らすことも、WHILLには可能なのですね。さて、創業してまだあまり時間がたってらっしゃらないですね。
増本) 2012年に、代表である杉江を含む3名で設立されました。代表は元自動車メーカーのデザイナー、残る2名は、メカ、ソフトウェアのエンジニアです。現在は約200名(うち国内は70名)の規模になりました。こうして人数が増えてきましたので、大阪にあった西日本本社も手狭になったので、ここ京都リサーチパークに移転してきたのです。
-最後に、今後の展望については、いかがでしょうか。
増本) 代表がいつも「つるつるの地球にしたい」と言っています。パーソナルモビリティで、地球をバリアフリーにしたいということです。
-大変共感します。京都府ではこの4月から「けいはんなロボット技術センター」をオープンしましたが、「ロボットのためのバリアフリー」実現も、その目的の一つです。御社はMaaSの取組も進めてらっしゃいますね。
増本) 現在、さまざまなプレーヤーがMaaSに参入していますが、電車やバス、タクシーなど、既存の交通手段を降りた後のわずかな距離=ラストワンマイルをつなぐ、だれもが安全に乗れるインフラは、まだ存在していません。私たちがMaaS事業で提供したいのは、年齢や障害の有無に関わらず、だれもが乗れて、だれもが乗りたくなる、ラストワンマイルのための新しい移動手段です。WHILLはMaaSの中での「最後の1ピース」としての役割を果たし、すべての人の移動をシームレスに繋ぎ、歩道領域の移動にイノベーションを起こします。
今後の展開がますます楽しみですね!
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