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知恵の経営、元気印、経営革新、チャレンジ・バイの各認定等を受けた府内中小企業を紹介するページです。
(掲載日:平成30年12月3日、聞き手・文:ものづくり振興課 足利)
株式会社大平電機(綾部市)の藤田代表取締役社長にお話をおうかがいしました。
―まず、御社の概要を教えてください。
藤田) 昭和29年創業、現在24名で、主力事業は3つ、すなわち、1つがプラント等で用いられる特殊モータのメンテナンス、次に制御システムの設計・製作・施工、3つ目が電気設備・機械設備の設計・製作・施工です。
―幅広いですね。
藤田) はい。例えば、制御システム関連では、制御盤の設計・製作・据付から、PLC、インバータ、サーボ等のリニューアル工事、各種センサー、ディスプレイによる見える化、PCによるリモート操作等さまざまですし、電気設備関連では、受電盤・配電盤の設計・製作・据付や配管設備一式、省エネ空調など様々です。
―インバータ、サーボですか。
藤田) 家庭やプラント等の電源は、電圧と周波数は一定ですね。そのまま使うとモータの回転は一定でしかありません。高速回転を制御するのに、何か物理的なブレーキをかけるとなると、それだけでもエネルギーの無駄ですよね。そこで、電圧と周波数を調整してモータの回転数を自在に変化させるものがインバータで、省エネにつながるわけです。また、自在に変化させるだけでなく、逆に、コンピュータでは電圧、周波数を一定にするために使われていますし、蛍光灯や電磁調理器等では周波数を変える装置として使われています。交流の周波数と電圧の大きさを、交流のまま自在に変えることは容易ではないので、交流を一旦直流に変換(コンバーター回路)した後、コンデンサを介して、再度交流に変換(インバーター回路)することで、電圧と周波数の大きさを変えているのです。
―なるほど。
藤田) また、サーボも、似ていると言えば似ていますが、目的が違います。インバータが速度制御がメインだとすると、サーボは、速度、位置、トルクの制御が目的で、高速高精度の制御が可能です。サーボモータにはエンコーダが組み込まれており、停止時にロックできます。一方、サーボアンプ1台で1台の専用モータを駆動するのが基本であるのに対し、インバータは1台で複数台の汎用モータの駆動が可能です。要するに目的等によって使い分けですね。
―そうなんですね。
藤田) こうして、モータ故障修理、省エネインバータ化、生産設備の制御・電気工事までワンストップ対応しているところは、国内でもほとんどありません。分業化されていますので、どうしても「これはできない、他へ」という対応になりがちですが、当社ではワンストップです。プラントを人に例えますと、モーターは心臓、制御システムは頭脳、電気や配管は血管ではないかと思いますが、それらすべてを担っているわけです。
―すばらしい。さて、特殊モータのメンテナンスですか。京都では珍しいですね。
藤田) 0.2kw~600kwまで対応するなど小型から大型まで対応し、IPMモータにまで対応しているところは、メーカー以外では少なく、当社はメーカーに拘わらず幅広く対応しています。
―すごいですね。どうして御社は?
藤田) まず、設備を整えているということですね。例えば大型モーターは、5t級のモーターなど製鉄所やパルプ工場など、重工業系で使われているようなものですが、それに対応する設備も、たいそうなものですから、整えているところがなかなかないのです。大型クレーンはもちろんのことですが、このモータ専用正面旋盤も京都で一番大きいんじゃないですかね。
―大きいですね!
藤田) それに、各種試験装置ですね。例えば50Hz、60Hzをはじめ、世界中で使われている電気の周波数に対応しています。また、大型負荷試験設備も他にはないものですね。一般モータ修理業者は、モータ修理完成後に試験を無負荷で行い、無負荷電流、漏れ電流、振動、温度上昇を簡易判断しています。そのために修理品を現場の実負荷に接続して使用した際に、温度上昇や異常振動、トルク不足などが発生する場合があります。しかし、お客様からは生産中にモータを絶対に止めないように要求されており、この課題を解決する必要があります。そこで、当社では、モータ修理後にモータ定格100%負荷試験の方法として、負荷試験装置を使用することにより、負荷状況時のトルク温度、電流、漏れ電流、振動などが測定できます。これにより、良否の判断が確実になり、お客様が安心・安全に使用できるようになります。IPMモーターなど、精度が重要なモーターが増えてきていますからね。
―IPMモーターって何ですか?
藤田) モーターには様々な種類があります。「フレミング左手の法則」の電磁力の発生原理をそのまま利用した「直流モータ」、「アラゴの円盤」の原理を用いた、家電製品など身の回りでよく用いられている「誘導モータ」、誘導モータと同じ固定子の中に、電磁石や永久磁石等の回転子を置いた構造の「同期モータ」などです。IPMモータとは、永久磁石を回転子の表面ではなく、中に埋め込んだ方式のもので、はがれる心配がなく高出力、高速回転に向いているものとして、現在開発が進んでいるものです。回転速度が電源周波数によって定まり、それ故、インバータ制御が必要ですが、負荷に応じて変化しないため、速度制御精度が優れています。一方、磁石の値段が高いので、高価ですね。
―どういうところで使われているのですか?
藤田) 様々ですよ。EVなどの動力源として重要な役割を担うと言われていますが、家電や工作機等にも拡大してきています。樹脂成型の押し出し機のスクリュー用ですとか、新聞の輪転機用とかですとか、精度が必要なところですね。新聞も大量に擦りますから、歩留まりを高めないと。
―なるほど。話を戻しますと、設備をお持ちだというのは分かりました。
藤田) それだけではありません。当社は先ほど申しましたように、制御技術を有し、制御盤を自ら設計・製作しています。他社にはないシナジーがあるのです。
―素晴らしいですね。
藤田) また、メンテナンスなので職人技、人材も大変重要です。おかげさまで、当社には20歳代をはじめ若手も多く、年齢構成のバランスがいいです。しかも、デジタル化を進めており、現場でタッチパネルで入力、本社でも遠隔で閲覧できる、業界では大変珍しいシステムも導入しています。これにより、職人技とIoTを使い分けて、そのシナジーも生んでいます。
―いいですね。在庫も多くお持ちだとか。
藤田) はい。メーカーの枠を超えて、モータの在庫は大型モータを中心に500台以上あります。
―品揃えはどうして選定されているのですか?
藤田) 日頃から「他ではできない」と言って、当社に様々なオーダーがまいります。そうして、お客様の先端の声を直接聞かせていただくので、次はこれだな、あれだなということが分かってくるのです。
―なんか、オンリーワン、ナンバーワンづくめですね。
藤田) おかげさまで、お客様の多くが上場企業ですし、ゼネコンを通さず、プラントと直接お取引をさせていただいています。当社の提案力を買っていただいていると自負しています。
―逆にお困りのことはありますか?
藤田) そうですね。困っているということではありませんが、メンテナンスは、ゴールデンウィーク、お盆、年末年始など、プラントが長期休暇の際に依頼が集中しますので、カレンダーは気になりますね(笑)
―今後の展望についてはいかがでしょう。
藤田) そうですね。現在外注している工程等も、できるだけ内製化していって、スピードとワンストップサービス力を高めていきたいですね。
今後の展開が楽しみですね。
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