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知恵の経営、元気印、経営革新、チャレンジ・バイの各認定等を受けた府内中小企業を紹介するページです。
(令和2年8月21日、ものづくり振興課 鴨井)
大平印刷株式会社(外部リンク)(京都市伏見区)の営業本部長 杉本豊明様にお話をお伺いしました。
-まずは、御社の概要を教えてください。
杉本) 弊社は宝ホールディングス株式会社を株主に持つ宝酒造やタカラバイオと同じ宝グループの一員で、創業以来、お酒のラベル等の印刷に携わってきました。ライフスタイルが変化する中、市場のニーズに合わせ、パッケージも進化し続けます。特に商品の「顔」となるラベルは、デザインや印刷の美しさはもちろんのこと、「梱包や運搬の際に擦れて劣化しないか?」、「長期間の店頭陳列で退色しないか?」といったさまざまなシーンを想定し、常に均一であり続ける機能性も求められます。
また、お客さまのご要望にスピーディかつ的確に応えられるよう、パンフレット、冊子、マニュアル作成から、Web制作、各種撮影や動画撮影・編集などのプロモーションに至るまで、幅広い事業を展開しています。
-御社の“友禅印刷”について教えていただけますか。
杉本) “友禅印刷”は友禅染に使用する糊(バインダー)に材料を混ぜてインキ化し、乾燥させて材料を定着させる技術で、友禅染のような多彩な色調が表現できます。銅や亜鉛の粉末で表現する高級感のある金色や、蓄光材によって暗闇で光る表現も可能です。また、炭や抹茶、お香などの素材をそのまま紙に定着させ、香り、手触り、効果効能までを紙に定着させることが可能な印刷技術です。
-香りや効果効能まで再現できるのですね。
杉本) はい。弊社では金色とお香を組み合わせた“香金(こうきん)”という特殊印刷も手掛けていまして、銅の持つ「抗菌性」や「消臭効果」等の付加価値を持つ印刷技術を、日々、研究・開発しています。
-環境負荷低減策としても注目を集めているようですね。
杉本) 本来なら捨てられるはずのものをインキ化することで、印刷物にまつわる「ストーリー」という奥行きを生み出しています。例えば、京都の葵祭で装束に使用された葵と桂の葉を粉末にして、インキ化した下鴨神社カレンダーを作成しました。造形作家の鈴木尚和氏(外部リンク)による掛け軸をイメージしたデザインにより、高貴でご利益を感じるカレンダーに仕上がっています。
他にも、京都府綾部市の特産品である「黒谷和紙」の原料は楮(こうぞ)という植物の表皮ですが、芯部分は廃棄されています。そこで、廃棄される楮の芯部分を炭にし、友禅印刷インキに生まれ変わらせました。綾部市産の楮で作られた和紙に、綾部市産の楮で作られたインキで印刷した「まるごと楮カレンダー」は、炭が持つ消臭機能も持ち合わせています。こういった活動が評価され、共同研究を実施した京都府立大学の細矢憲先生とともに、「京都環境賞 特別賞(環境未来賞)(外部リンク)」を受賞いたしました。
-パッケージに必要な撮影技術などについて教えて下さい。
杉本) 弊社では、モデル撮影や商品撮影など用途に合わせて使い分けられるスタジオを完備し、幅広い撮影に対応しています。近年はスマートフォンに搭載されたカメラの品質も大幅に向上し、誰もが高画質写真を撮影することが可能ですが、透明感や容器の質感、「高級な」、「柔らかい」、「優しそう」など、雰囲気の表現も必要です。専門のスタッフが工芸品や精密機器、照明などの高い再現性が求められる製品もそのアイテムにふさわしい質感に写し出します。
-ドローンでの撮影や360度カメラもいち早く取り入れているようですね。
杉本) ドローンや360度カメラなどの新技術を取り込んでいくことで、今までになかった表現も可能となるため、変化する時代に対しても、幅広いニーズに対応していくことが可能です。単に撮影するのではなく、「何を伝えるために、どのような撮影をするべきか?」を徹底的に考えることが重要です。
ドローン等を使った空撮は、各種申請が必要で、高品質の写真や動画を撮影するためには、熟練パイロットによる操縦も必要です。2名のパイロットは現役カメラマンで、国土交通省の全国の包括許可はもちろん、認定団体の訓練をうけ、「操縦技能証明証」を取得しています。
-デジタルコンテンツも積極的に活用されていますね。
杉本) 「“京都を楽しむプロ”がおすすめする、いろんなKYOTO」の紹介として、京都情報サイト“デジスタイル京都(外部リンク)”を運営しています。イベント情報紹介ページだけでなく、タイアップ記事の作成などもお手伝いしています。また、目的やターゲットに合わせて「子どもと一緒に楽しむ京都」、「フォトジェニックな京都」、「寺社等のデジタルアーカイブ」など、様々な視点で30名以上のライターが京都情報をお届けしています。
最近では、新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、山鉾巡行をはじめとした主な行事が中止となった祇園祭について、「リモートで愉しむ山鉾巡行2020デジタル祇園祭(外部リンク)」をお届けしました。今までに撮影をしていた360度VRデータを活用し、多くの方に「来年は京都に行って祇園祭を楽しみたい!」と感じていただくため、また「本来の祇園祭をよく知らない」という方にとって祇園祭をより深く知っていただくために、WEB上で祇園祭を疑似体験できるコンテンツになります。
-今後の展開についてはいかがでしょうか。
杉本) お客さまのご要望にスピーディかつ的確に応えられるよう、印刷やパッケージ制作、Webなどの様々な技術を連動させ、最適なご提案ができることが弊社の強みです。画像だけで伝わらないものは、ドローン撮影などを生かして空間で表現するなど、お客様が伝えたいことを表現していきます。高品位印刷や美術印刷を得意としてきた弊社は、現在も取り組んでいる色の再現性と「分かりやすさ・伝わりやすさ」に加え、「香り」や「ストーリー」などの新たな価値を付加し、数多くの商業印刷制作に取り組んで参ります。
-今後の展開を楽しみにしています!
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