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知恵の経営、元気印、経営革新、チャレンジ・バイの各認定等を受けた府内中小企業を紹介するページです。
(2023年7月10日、ものづくり振興課 足利)
(掲載日:令和2年2月10日、聞き手・文:ものづくり振興課 足利)
株式会社Space Power Technologies(外部リンク)(京都市西京区)の古川代表取締役CEOにお話をおうかがいしました。
--御社の概要を教えてください。
古川)2019年5月設立、現在6名体制で、空間伝送型ワイヤレス電力伝送機器の開発・製造を行っています。具体的には、センサー等に対するマイクロ波による空間伝送給電ですね。
--どんどん無線化が進んでいく5G時代には、給電も無線化が望ましいですよね。
古川)PC、スマートフォン、ウェアラブル、IoTセンサなどエッジデバイスはますます多様化、小型化し、その数は指数関数的に増大していきます。これらが情報通信、画像・音声出力を行う際には電力消費が伴い、エッジデバイスを継続的に利用するためには継続的な電力供給が必須となります。しかし、エッジデバイスが多様化する一方これらの内蔵バッテリーへの電力供給手段は限られており、そのほとんどが電気配線や充電ケーブルにより「有線」で給電を行っています。近年「Qi(チー)規格」に代表される充電パッドを用いた充電がスマートフォン等で注目されていますが、充電中ユーザーはデバイスをパッドに接触させることが必要であり、真のワイヤレス給電とは呼び難いものです。このような不自由から解放し真のワイヤレス社会を実現することが我々のミッションです。
--ワイヤレス給電には、電磁誘導などの磁界結合式や電界結合式などの非放射タイプ、マイクロ波等の電波式、レーザ式などの放射タイプなど様々あるようですが、マイクロ波の特長は?
古川)設定によっては10mなど、伝送距離を長くすることができることが長所ですね。一方、電磁波なので、高出力にすればするほど、高周波数になればなるほど、干渉の問題は出てきますよね。現在、国レベルで、マイクロ波空間伝送型ワイヤレス電力伝送(WPT)の法制化を検討されているところで、2020年に第一フェーズである「屋内工場・倉庫内でのWPTの実用化」に関する制度化が実施される見込みです。
--では、御社の特長は?
古川)装置は、送信側は、直流電流をマイクロ波に変換して発信する装置、増幅器、送信アンテナ、そして、受信側は受信アンテナ、直流電流に変換する装置等で構成されますが、この全体で、他社より1割以上高い給電効率を実現できるということですね。
--すごいのですね!
古川)例えば、発信アンテナでは、アンテナ素子の配置、そこへ電力を供給する回路設計などが伴う訳ですが、アンテナを長く大きくすれば、より遠くへ飛ばせるものの、アンテナ素子を分散して回路段階で電力の消耗が進んでしまうということもあり、バランスの良い設計が必要です。
--なるほど。
古川)ちなみに、スマートフォン等で使うWi-Fiでしたら、受信される電波は送信した電波の100万分の1程度と言われますが、マイクロ波では数%に跳ね上がります。また、距離が長いほど電力は弱まります。ある設定の場合の例ですが、30Wで発信しても、1m先では0.2Wにまで減退したりするのです。当社が製品化を目指しているのは伝送距離10mほどのものを想定しており、発振器、増幅器等はパッケージとしつつ、発信アンテナ、受信アンテナ等はオーダーメード対応という組み合わせを予定しています。
--そうなんですね。
古川)また、受信側は、受信した電波を直流電流に変換するレクテナという技術が伴うわけですが、当社はこのレクテナ技術で世界トップを誇っておりまして、2GHz帯で90%、5GHz帯で80%以上の変換効率を実現しています。
--すごいのですね!
古川)我々は各方面で無線技術を探求してきたスペシャリストの集団です。私は無線通信機器メーカの新規事業でワイヤレス給電にいち早く取り組み、この分野の世界的権威である、京都大学の篠原真毅教授の下、宇宙電力伝送等について長年取り組んできましたし、国内のWPT規格化にも携わるなど、WPTのフロンティアを開拓してきました。通信事業者でモバイル通信事業に古くから携わり移動体通信を熟知したもの、京都大学でWPTを研究する国内屈指の研究室で修士号を取得したもの、など無線技術をあらゆる方面から知悉した唯一無二のチームです。
--差支えない範囲で開発中の案件についてご紹介いただけませんか。
古川)例えば、工作機械加工ツールセンシングですね。工作機において加工ツールの状態をセンシングし、刃物の破損を予知、予防保全することで機械の稼働率を高めるとともに、歩留まりの改善を図ることができます。
--工作機に振動センサを付けて予防保全をするということ自体は既に行われていますが、工作機の筐体等ではなく、加工位置近傍にセンサを取り付けられるということですか?
古川)そういうことです。通常は、振動センサに有線で電力供給するため、筐体などにセンサを付けていると思います。しかし、ワイヤレスで電力供給できるなら、振動センサを加工位置近傍に取り付けることができ、予防保全の精度が飛躍的に向上するわけです。電源供給の配線を気にする必要がなくなる、もちろん、電池交換も不要になるということです。
--なるほど!それは素晴らしいですね。
古川)あるいはデジタルピッキングシステムですね。倉庫内の商品・部品のピッキングにおいて、基幹システムと棚に設置された表示器が連動し、出荷指示リストに合わせて表示器が作業者へ指示を出すといったようなことがおこなわれますが、表示器の数が多く配線が困難ですし、電池であれば、一日数百個といったような多量の電池交換を強いられます。そこで、常時、ワイヤレスで給電を施してやれば、その問題を解決できるというわけです。
--なるほど!これも素晴らしいですね。
古川)京大発のマイクロ波無線送電技術を源に、京都発のテクノロジー・スタートアップとして、世界に真のワイヤレス社会を実現する「電力革命」を目指します。
楽しみです!!
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