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知恵の経営、元気印、経営革新、チャレンジ・バイの各認定等を受けた府内中小企業を紹介するページです。
(掲載日:平成29年5月1日(インタビュー:平成28年秋)、聞き手・文:ものづくり振興課 足利)
エス.ラボ株式会社(外部リンク)(長岡京市)の柚山社長にお話をおうかがいしました。
―3Dプリントには、光造形、粉末焼結積層などいくつかの方法がありますし、価格帯も大変幅がありますが、今回開発された3Dプリンター「Mothmach」は?
柚山) 熱融解式の3Dプリンタで、熱可塑性樹脂のフィラメントを高温で溶かし積層するもので、価格帯としては20~30万円といったところです。
―3Dプリンタは海外メーカーのシェアが高く、一方で2010年代に入り特許の期間が切れ、オープンソース化も進み、新規参入、低価格化も進んでいると聞きますが、今回開発された動機は?
柚山) 高いシェアを誇る海外メーカーのものは、数百万円するような高価なものだけでなく数十万円の安いものもありますが、修理費が高かったり、納期が遅かったりと、アフターフォローが十分ではありません。また、オープンソース化により、「メカ」が好きな人は自分で改造したりしているようですが、メカを使って「造形」したい人達にとっては、アフターフォローの行き届かないという問題は解消されていません。そこで、当社がメーカーとしてきちんと対応するものを安く供給するものです。
―他の3Dプリンタと比べて、どういう特長がありますか?
柚山) まず1つは、世界初、プラスチックペレットから直接3Dプリントができるということで、特許を取得しました。通常は、プラスチックペレットから、3Dプリンタ用にフィラメント状にしたABS材料などを使うという方法しかありません。
―それにはどういう利点があるのですか?
柚山) 実際の製品と同じ材料で試作ができるということです。プラスチックペレットから配合物を加えて射出成型で実際の製品を作ってらっしゃるとしたら、それと同じ材質で再現できるわけです。しかも当社の場合、一品対応で、大きなもの、長いものなど特殊な形を造形するための3Dプリンタを一品対応で作りますので、某業界の世界的メーカー等からも相談が来ています。
―すばらしいですね。ほかには?
柚山) 2点目として、位置決め精度が高いということです。具体的には、モーター1パルスで16μmの位置決め精度を実現していますが、補正は1μm単位で行っています。しかも、3Dプリントはそれなりに時間がかかりますが、何時間も動いて1度でもミスがあってはならないというもので、信頼性も高いです。
―すごいですね。
柚山) 日本中の3Dプリンタを扱っている大手メーカーからも、当社製品が最も精度が高いと太鼓判を押していただいています。おまけに音も静かなのですよ。
―どうして、そういうすごい3Dプリンタを開発できたのですか?
柚山) まず、創業当時から、もともと卓上プラスチック押出機、すなわち、少量のプラスチックペレットで混連したりシートにする装置の製造をしてきましたので、プラスチックペレットの加工について詳しいですし、発想することができるということがあります。
―なるほど。
柚山) 次に、プラスチック押出機の製造に必要な旋盤、フライス盤などのCNC工作機を、最初は輸入していましたが、より精度の高い加工を追及するに従い、次第に工作機自体を自ら製造するようになったのです。そんなわけで、位置決めに重要な「剛性」に冠して豊富な知識を有しています。
―CNC制御基盤も作ってこられましたので、電気にも詳しいのですね。
柚山) はい。プラスチック、切削、電気に至るまで幅広い技術・ノウハウを有し、設計から製造まで社内一貫体制ですので、大きな物、細長い物など特殊な形のものを造形するための3Dプリンタを、一品対応もできるのです。そしてこれらの結果、設計思想が優れ、機械も不要な部分をそぎ落とし、コンパクトな製品化を実現しているので、音まで静かというわけです。
―どうして、そこまで追求されるのですか?
柚山) おもしろいからに他なりません!技術者集団で、宣伝はほとんどできていませんが、他ではできない技術を磨き実現していくことに生きがいを感じているのです。
―プラスチック、切削、電気のノウハウがあれば、ほかにもいろいろできそうですね。今後どうしたいですか?
柚山) そうですね、「ドローン」も作ってみようかと思っています。そして何より、価格帯的にも子どもが使える3Dプリンタを作りたいのです。今はまだ、必要な設計をするのに、3次元CADを使うか、インターネットから3Dデータをダウンロードするかでないと、3Dプリンタを使うことができません。しかし、5年後くらいまでには、きっとスマホで3Dスキャンできるようになるのじゃないでしょうか。そうすれば、誰でも簡単に3Dプリンタを使うことが可能になります。何かが壊れたという場合に、スマホでスキャンすれば、作って治せるという時代が来ると思います。その時までに子どもでも使える3Dプリンタを作っておきたいのです。
5年後がますます楽しみですね!
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