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知恵の経営、元気印、経営革新、チャレンジ・バイの各認定等を受けた府内中小企業を紹介するページです。
(令和3年9月24日、ものづくり振興課・足利、(公財)京都産業21北部支援センター・土江)
株式会社シオノ鋳工(外部リンク)(与謝野町)の塩野浩士代表取締役社長にお話をおうかがいしました。
--まずは御社の概要を教えてください。
塩野)天保元年、1830年より与謝野町の地で鋳造を営んで参りました。現在は40名以上の体制で、ポンプ部品や工作機部品、繊維機械部品、建設機械部品等を製造っています。
--すごい!もうすぐ200周年ですね。その鋳造の工程を簡単に教えていただけませんか。
塩野)自動車関係などの量産部品を製造される分野では、自動化されたライン生産方式で対応されていますが、当社のような一品モノの分野では、手作業、手づくりが基本です。
--そうなのですね。
塩野)まず、「製品模型(木型)」の周囲を砂で固めて「鋳型(砂型)」を作ります。砂は熱に強く、樹脂と硬化剤が混ざったものです。
(左)木型 (中)枠のせ (右)砂充填
--なるほど。
塩野)上型と下型をそれぞれ作り、それを合わせることで「鋳型(砂型)」ができます。
--しかし、ポンプなど中が空洞ですけれど、それはどうするのですか?
塩野)そうした中空用に「中子」と言う砂型を作り、鋳型に固定します。後で注入する金属とくっつかないように薬剤でコーティングします。
左から、中子型(木型)、砂充填、抜型、薬剤コーティング
--なるほど。この鋳型に流し込む「鉄」はどうされているのですか?
塩野)製鉄所で作られる銑鉄、もしくは、スクラップ鉄を用います。まず、高周波誘導炉という溶解炉で、電気の力で鉄を溶かします。溶かした鉄は「湯」と言います。
--銑鉄は品質が担保されているのでしょうけれど、スクラップを用いるとなると、成分が様々ですよね?
塩野)そうです。炭素やシリコンがどのくらい含まれているかなど成分の分析を行っています。例えば銅を加えて、鋳物の強度を上げることもあります。
--そうなのですね。
塩野)マンガン、リン、サルファーなど様々な微量成分を検出できる検査装置も用いていますよ。
--きめ細かくなさっているのですね。
塩野)そして、溶解炉から鉄を取り出し(出湯)、先ほどの鋳型に注ぎ込みます(注湯)。
(左)出湯、(右)注湯
--なんか、かっこいいですねえ!
塩野)そして、注湯したばかりの枠は熱いので、翌日「解枠」します。
--せっかく上手に作った「型」なのに・・・、一品ずつ、丁寧に、とはまさにこういうことなのですね。
塩野)そうですね。できあがった製品は、ショットブラストで砂を落とし、ハンドグラインダーで削るなど仕上げを行います。
--よくわかりました!今、お仕事の具合はいかがですか?
塩野)鉄の価格上昇の問題はありますが、おかげさまで受注は好調ですね。
--御社が選ばれる理由は?分野によっては価格競争が激しい分野もありますけれど。
塩野)そうですねえ。価格ももちろん重要なファクターなのでしょうけれど、品質、精度、納期、信頼性といったことが、まず何よりも必要不可欠ですね。そういう意味で、当社の場合は、いちどお声かけいただいたお客様は、その後も取引が継続し、受注が拡大しているといったところですね。
--素晴らしい。
塩野)特に当社の特徴としては、リードタイムの速さが挙げられると思います。各工程のタクトタイムを均一化し、手作業、手づくりですが、あたかもライン生産のように生産プロセスの改善を図りました。
--そうなのですね。
塩野)また、来年秋を目指して、新たな機械加工工場の建設計画を進めています。
--これがその模型ですか?!むちゃむちゃオシャレじゃないですか!!!
塩野)鋳造だけでなく、仕上作業を中心とした機械加工まで求められることが多くなり、そのニーズに応えるためです。
--素晴らしい。
塩野)しかし、竣工後にスムースに機械加工を受注し立ち上げるかが大きな課題となりますので、今のうちから、CAD/CAMを習熟しておく必要があります。
--良いことですが、世間では、設計人材がなかなか集まらずに困っているケースが目立ちますけれど。
塩野)社内で機械加工への挑戦意欲のある人材を確保しており、既に勉強会に参加しています。さらに、京都府・京都産業21の「小規模企業等経営基盤強化支援補助金」を活用してCAD/CAMシミュレーションソフトを導入し、習熟を進めようと考えています。CAD/CAMシミュレーションソフトと専用デバイスがあれば、3DCADで製品の形状を作成し、CAMで加工プログラムを作成し、実際の機械と同じ条件を仮想空間上で再現してシミュレーションすることができます。
--ところで、新工場にはカフェも予定されているんですね?!
塩野)今も社員のために手作り給食を用意していますし、社員だけでなく地域の方にも、という発想です。社員には、鋳造、機械加工にカフェ・・・と働く選択肢を増やしてあげる効果も狙ってはいます。
--そうそう、御社の動画にも若い社員さんが積極的に登場されていますよね!
塩野)実はまだ社員ではないのですよ。来春入社予定の大学生なのです。
--なんと!
塩野)田舎暮らししながら、地域や会社のブランディングを図っていくことに関心があるようで、技術職のお友達ともども入社が決定しています。
--素晴らしいですね。
塩野)丹後・与謝にも地域を盛り上げようとする若者、ブランディングが上手なスタートアップ企業が増えてきており、大変助けてもらっていますし、UIJターンで入社する社員も増えてきていますよ。
--いい感じですね!
塩野)「仕事のための仕事ではなく、この会社で働くことで何を得るか?」ということを私たち自身も考え、自分たちの存在意義を掘り下げ、辿り着いた1つの結論は、「人として成長することこそ、人間の幸福」だということです。つまり、「成」長が「幸」せとなる、ということで「成幸」と名付けています。ここで働くことで人として成長し、社会の要となる人財に育つような場になりたいと考えています。
今後の展開が大変楽しみです!
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