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知恵の経営、元気印、経営革新、チャレンジ・バイの各認定等を受けた府内中小企業を紹介するページです。
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(掲載日:平成28年3月24日、聞き手・文:ものづくり振興課 足利)
上場企業、株式会社ファーマフーズ(外部リンク)の金社長にお話をおうかがいしました。
―起業された経過は?
社長) 1990年代後半に、アメリカである講演会に参加しました。ホテルの会場で、お金持ちの老人、すなわち投資家が、投資対象として若手起業家のプレゼンを聞き、見定める場だったのです。そういう場があるということに、すごいと感心するとともに、自分の方がもっとできそうだ!という風にも感じました。
―運命の出会いだったのですね。
社長) はい。その時にギリアド・サイエンシスというバイオベンチャーを見学しました。ベンチャーと言っても、日本の中堅くらいの規模ではないかと思いますが、ホールの壁には、社員がサングラスをはめて映っている写真が貼られていました。「自分たちの未来は輝かしい」ということを意味していました。もう一方の壁には、「自分たちが世界をチェーン化する」というメッセージのあるデザインが描かれていました。アメリカのベンチャーのとても強い信念を感じました。こうしたことがあり、帰国後すぐにベンチャーを立ち上げたのです。
―起業当初の御苦労は?
社長) どのベンチャーでもそうでしょうが、立ち上げ当初は、金もない、人もいない、場所もない、という状況でした。特に場所については、バイオ関係は、臭いや様々な微生物が発生するのだろうとか、ガスを扱うのだろうとか、様々な懸念を持たれ、結局、石川県小牧市で立ち上げました。
―どういうテーマを設定されたのですか?
社長) マーケットで受け入れられることを意識し、まず、エンドレスに続くものを考え、「免・老・神」すなわち免疫・老化・神経をターゲットとすることとしました。次に、身近なもの、例えばお茶、米などの中から「タマゴ」を扱うこととしました。やがて、京都府中小企業技術センターの協力を得て、京都市南区で会社を設立しました。
―どうしてタマゴなのですか?
社長) 例えば牛乳と比較しましょうか。牛乳は温めたらホットミルクになるだけです。しかし、ニワトリのタマゴは温めると、21日後には孵化して生命が誕生するのです。タマゴは生命のすべてが詰まっているのではないか、今でいうiPS細胞ではないか、ということです。ここに着目したのです。ニワトリにピロリ菌などの抗原を免疫すれば、タマゴの中にはそれをやっつける抗体が得られます。ニワトリはそういうタマゴを毎日生んでくれるのです。
―具体的な製品を少しご紹介いただけますか?
社長) タマゴからヒヨコの骨もできてくるということに着目し、黄身から骨の成長を助けるペプチド成分「ボーンペップ」を見出しました。ロート製薬株式会社様の「セノビック」等に配合されています。また「iHA(アイハ)」はタマゴから得られたペプチドで、ヒアルロン酸(目の網膜や、膝の関節・肌などに多く含まれ、体に潤いを与える物質)の産生や軟骨細胞の増殖を促進する成分です。株式会社エバーライフ様の「皇潤」等に配合されています。
―事業は順調に立ち上がっていったのですか?
社長) いえ、研究を続けてきてお金が尽きてきました。いくら新しいことを生み出しても、経済的価値も生み出さなくてはイノベーションは成り立ちません。そこで、キャッシュを立て直すことを考えていたところに、京都府中小企業技術センターがGABA(γーアミノ酪酸)の技術を開発したことを知り、「これだ!」と思いました。様々なことにトライしましたが、中でもストレス抑制効果を測定するのに、奈良県十津川村にある日本一の長さで有名な「谷瀬の吊り橋」で実証をしたりしました。これらの実験結果をもとに江崎グリコ株式会社様がチョコレートとして製品化しました。おかげでGABA活用製品の中で当社のシェアは8割ほどに達したかと思います。これでキャッシュは持ち直しました。
―ベンチャーからIPOを果たされました。
社長) これまで途中でやめようと思ったことは何度もあります。「社長はやめてしまうのではないか」と思った若手社員が、「決して諦めず、やめないでくれ。」と言ってきてくれたこともありました。そんなことを言われてはやめられません。その日がきっかけで猛烈に働きました。ベンチャーには「カネ」も「伝統」もありませんが、「時間」だけは平等にあると考えたのです。
―新しい展開としてどんなことを進めてらっしゃいますか?
社長) 約20年前に私に起業を決意させた、アメリカのバイオベンチャー、ギリアド・サイエンシスの新聞記事を最近見ることがありました。なんとたった一粒が18万円もする薬を販売しているというのです。すごい付加価値です。これを見て再び奮い立ちました。そこで注力したのが創薬事業です。例えば、国立がん研究センターの先生とともに、がん細胞が免疫の働きを抑える機構を解除する技術「免疫チェックポイントインヒビター」を開発し、抗体を作っています。これをがん免疫創薬として、実用化を目指しています。
―ほかには?
社長) これまで素材をB2Bで提供してきましたが、自社ブランド「タマゴ基地」を立ち上げ、B2Cの通販に乗り出しました。iHA配合の「タマゴサミン」などがあります。これら「機能性素材(Bio seeds)」「創薬(Bio medical)」「通販(Bio value)」を「BBT(Bio Business Triangle)」と名付け、推進しています。
―最後に、心がけてらっしゃることを教えていただけませんか?
社長) 卵は立たない、と一般的に思われていますが、それはウソです。卵は立ちます。静かに心を落ち着けて行うと、10分もすれば立てることができます。「コロンブスの卵」ではないのです。こういう「常識の盲点」を突いていく、そういう姿勢を常に持ち続けなければならないと考えています。
女性社員が約半数、海外出身の社員や留学生の受け入れも積極的に行っているという同社。社長の発想力、リーダーシップに加え、こうしたダイバーシティも同社の牽引力の一つなのでしょう。今後の発展がますます楽しみです。
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