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知恵の経営、元気印、経営革新、チャレンジ・バイの各認定等を受けた府内中小企業を紹介するページです。
(掲載日:平成28年3月25日、聞き手・文:ものづくり振興課 足利)
株式会社パシフィックウエーブの田中社長にお話をおうかがいしました。
―御社と言えば、「ジェルトロン」です。その特徴を教えてください。
社長) アメリカの宇宙船内用衝撃緩衝材の研究開発から生まれた立体格子型グミ状ジェルを、当社独自で二層一体成型に進化させたもので、国内の実用新案、中国・香港・台湾・韓国の特許を得ています。まくら、クッション、マットレスなどの製品を開発し、家庭用から介護用まで幅広くご使用いただいています。
―近年普及している低反発ウレタン素材等と比べてどう違うのですか?
社長) まず1つは、グミキャンディーのように肌に優しい感触が特徴で、体圧分散性・荷重吸収性に優れています。垂直荷重だけでなく寝返り(体動)時に発生するずれ、ねじれの荷重にも柔軟に形状を変化させるので、高レベルの床ずれ治療の実績も多く、まくら使用時の抜け毛対策にも効果をもたらします。ずれ、ねじれ荷重を吸収できないと、筋肉がねじれたようにつぶれ(せん断力)血流が悪くなり、不要な寝返り(体動)が増えるため安眠を妨げますし、ひいては、血行障害、しびれや痛みなどを引き起こすことにつながります。
―なるほど。
社長) そして、高い形状安定性があります。柔軟性に優れながらも、ウレタンの4~5倍以上の耐久性を備えており、同一箇所の長時間圧迫を多数回繰り返しても、10倍に伸ばしても元に戻る伸縮性があり、これらは数ある寝具・クッション素材のなかでも他に類を見ません。それに、-30℃から+70℃まで硬さの変化がほとんどありません。
―温度変化にも強いのですね。
社長) そうです。3つ目として通気性にも優れます。格子の一つひとつに空気層を含みながら、体の動きにあわせて蒸れた空気を外に排出するポンピング作用が働くため、自然に空気の入れ換えを行うことができるので、夏場は汗などの蒸れをスムーズに発散し、冬場は空気層が最適な温度をキープします。夏は涼しく冬は暖かく、1年を通じて快適な睡眠環境を実現できます。特に寒い部屋や冷え性の方には、電気敷毛布をマットレス内ジェルセグメントの下に敷いてご使用いただくことも可能です。
―快適なのですね。洗うことも・・・?
社長) はい。4つ目として、もし汚れた場合でも、丸洗いができ衛生的なのです。素材は米国食品医薬局(FDA)が認可したミネラルオイルとポリマーを使用しており、100%リサイクル可能な安心素材で、かつダニやカビの温床にもならず、アレルギー誘発性もありません。赤ちゃんからお年寄りまで広く安心してお使いいただけます。
―販売ルートについてはどうですか?
社長) 全国各地の家具寝具の小売様、福祉用具等の卸様・小売様に加えて、介護・医療施設様や個人ユーザー様への直接販売などさまざまです。卸様、小売様には、当社の神戸ショールームにて、しっかり研修を受けていただいております。
―マットレスは、オーダーメードシステムがあるとお聞きします。
社長) 安眠を得るには、リラックスした楽な寝姿勢を保ち、いかにマットレスが体にフィットして体圧分散しているかが肝心です。そこで、お客様の性別、体型、健康状態、お好みに合わせ、体の部位ごとに硬さの異なるマットを組み合わせて、オーダーメードでご提供する「e-MOS(e-Mattress Order made System)」というシステムを有しています。これは、業界初ビジネスモデル特許を取得しています。
―ゴルフ業界でもすごく広まっているとか。
社長) キャディーさんの負担を減らす、ゴルフバッグ用サブショルダーベルトを多くご利用いただいており、大会によってはほぼ全員が利用していた、などということも起こっています。バッグ業界とのコラボなど、素材として異業種に提供することもウェルカムです。
―生産面での難しさはどういったところですか?
社長) まず、当社独自の製品ですので、独自に改良を加えた機械で生産しています。そして何より、「素材・品質」が大事な製品ですが、デリケートな素材ですので、製造時の温度管理、圧の強弱、そしてスピードが重要です。例えば四季の寒暖差はもちろん、少し時間が違うだけで状態が変わってくるなど、温度管理ひとつ取ってもノウハウが必要です。本社工場の地下には、季節による温度変化がほとんどない「真名井の清水」で有名な地下水の水脈があり、これを冷却水として活用できることはありがたい要素です。また、地元舞鶴や綾部の作業所の皆さんにも手伝っていただいています。
―開発の経過を教えてください。
社長) 父が家具販売業を営んでおり、本場アメリカにインテリアアドバイザーの勉強をしに行っていた1980年頃、ウォーターベッドと出会い「睡眠道具の販売」から「睡眠の質を提供」するビジネスを確立せんと決意しました。アメリカのウォーターベッドメーカーと日本総代理店契約を結び、日本におけるウォーターベッドブームを作ろうと考え、1994年家具販売業から独立する形でメーカーとして会社を興したのが弊社です。ところが、やがて、大手ベッドメーカー製のウォーターベッドによる水漏れ事故が多発するようになったのをきっかけに、水を使わないで「パスカルの原理」を実現しようと考えました。
―業界の難しさ、御社の課題はどういったことですか?
社長) 大手と比べると弊社のネームバリューは劣りますし、ジェルトロンが新しいタイプの商品であることです。既存商品で夏場における重度(ステージIV)の床ずれが治ったという話はほとんど聞いたことがありません。ジェルトロンは大学等との共同研究により、床ずれが治っていくデータも取得していますが、「無難」な既存品が選ばれがちです。
―そんな中で、御社のモットーは?
社長) 「一人のお客様の喜び」、その積み重ねだと思っています。一人のお客様のご満足を自分の喜びとするということです。従業員にも、徹底的に行動の一つひとつに対し「何のために」ということを問いますし、採用面接でも問います。こうした積み重ねで、一人、また一人と、当社のファンになってくださる方が増えてきたのだと思います。
―さて、今後の新しい展開として、例えばどんなことがありますか?
社長) 自動車のシートなど、ジェルトロンの自動車業界への活用です。大手自動車メーカーから依頼があり、取り組みを始めたのですが、ジェルトロンの素材が米国食品医薬局(FDA)から認可を受けているように、食べても大丈夫な素材で、燃えるというのが難点でしたが、このたび「難燃性ジェルトロン」を開発し、特許も取得しました。今後、本格的に国内外の自動車メーカーとのコラボレーションを進めていきたいと考えています。
―会社全体についてはいかがですか?
社長) おかげさまで順調に事業は伸びており、遠くない将来、IPOも選択肢の一つとして考えています。そうすることで、会社としてのより確かな持続性を備え、ジェルトロンが一人でも多くのお客様のお役に立てるようにという願いです。
同社の今後の展開がますます楽しみです!
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