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知恵の経営、元気印、経営革新、チャレンジ・バイの各認定等を受けた府内中小企業を紹介するページです。
(掲載日:平成28年12月27日、聞き手・文:ものづくり振興課 足利)
平成26年度経営革新業、株式会社桶谷製作所(外部リンク)(京都市)の野口専務取締役様にお話をおうかがいしました。
―経営発展著しい御社でらっしゃいますが、まずは事業概要から教えてください。
野口) 製造装置の大型部品の製造を行っています。自動車、産業機械、建設機械、造船などの生産工場の設備や部品で、例えばメインフレームやベースプレートなど1品1様の部品ばかりでして、製缶(溶接)、機械加工のほか、協力工場とも連携して組立、塗装などを含めた一貫対応を行っています。
(左から、半導体製造装置の架台、その上に載せるベースプレート、医療機器部品)
―「大型」は京都では珍しいですよね。どれくらいの大きさのものまで対応できるのですか?
野口) 5面加工のMCを複数台有しており、例えば3500W×6500L×1750Hといった仕様のものなど、車のような大きさのものに対応できますね。京都には数十cmのものを扱うところが多いと思いますが、当社のような大型対応は、京都にはほとんど見かけません。また、特注カッターによる平面仕上げをすることによって平面研削盤による加工並みの面粗度、平面度をマシニング加工で実現でき、平面研磨工程がなくなる分のコストダウンの提案なども行っています。
(5面加工MCの数々)
―「大型」の難しさはどういったところでしょうか?]
野口) まず1つは、大型であっても、小型と同様の精度、品質が求められるということです。そのため、品質管理の専任スタッフを置いて、加工データを蓄積、分析して社員の育成を図っています。顧客企業の品質への要求が、レベルアップを続けますから、それを満たしていけば自然とレベルアップしていけるわけですが。もう1つは、やはり運搬ですね。大きいので納品も容易ではありません。自社が保有するトラックで運んでいます。
―数年間で売上、人員も倍増されてらっしゃるそうですね。
野口) 売上は20億円に近づいてきましたし、社員も約90名になりました。主要取引先も1000を超えまして、また、この半年間の受注構成の2割は新規顧客です。
―急成長の秘訣はなんでしょうか。
野口) まず1つは、この間の景気を反映して装置業界自体が伸びており、ニーズ自体が増えているということです。当社も中京圏、首都圏、播州方面を中心に積極的に営業展開して、その増えているニーズに応えています。
―なるほど。
野口) また2点目としては、24時間交代制で生産することによって「短納期」を実現しているということでして、当社の大きな武器です。当社が手掛けているベースプレートなどは、その上に様々な部品や装置を搭載していく、まさにベースなので、装置メーカーさんにとっては、これがないと始まらないということで、早く調達したがってらっしゃいます。
―そうなのですね。
野口) そして3つ目は、当社自身の生産設備への設備投資です。これには2年前に取得した経営革新計画が本当にありがたかったです。その承認により融資枠が拡大したことにより、思い切って攻めの設備投資ができ、24時間交代制での生産体制が整い、短納期対応ができるようになり、増加しているニーズに対応していって、経営が伸びたという、すべてがうまく好循環したわけです。
―すばらしいですね。きっかけは何だったのですか?
野口) リーマンショックです。当社の商材は「製造装置」ですから、もともと景気の波の変動をもろに受けやすく、リーマンショックの影響は大きかったです。その時に当社の課題を整理しました。まず、社員の平均年齢も高く「変化」に強くないこと、そして、1品1様の大型部品を扱っていますので、1人が図面を見てプログラミングをしてMCを動かすという自己完結型であること、さらにそうした結果、高価な設備投資をしている割には、機械の稼働時間が一人の人に束縛され、費用対効果が高くないこと。こうしたことから、24時間交代制で、社員が互いにリレー方式によりノウハウも共有しながら、短納期を実現していこうという経営革新計画を策定したのです。
―それほど売上が伸びてらっしゃると、当面の課題はやはり・・・。
野口) はい、人材の確保ですね。製造部門はもちろんですが、営業部門、調達部門の人材を特に求めています。これらは経験者、熟練でないと対応が難しくぜひそうした方々に来ていただきたいですね。
―さて、「装置産業」の面についてお聞きしたいのですが、景気の波に飲まれやすいというマイナス面に対しては、どのような対策を講じてらっしゃいますか?
野口) まず1つは、先ほども触れましたとおり、新規顧客を次々と開拓しておりまして、取引先の分散化を図っており、多岐に亘る業界との取引関係を構築しており、特定の業界に偏らないようにしています。また、現在も自社対応だけでなく協力工場とも仕事を割り振っており、こうした自社生産比率を引き続きコントロールすることで、いざという時のために備えています。
―一方、大雑把に言えば、「製品産業」が安い人件費を求めて生産拠点を海外にシフトさせた流れにあって、「装置産業」は技術的理由などから国内に残ってきた分野であり、こうしたプラス面もありますね。
野口) そのとおり、景気に左右される反面、国内に残っていく産業だと思っています。例えば、中国でスマートフォンを製造していますが、資本は韓国、主要部品や製造装置は日本製です。製造装置は、日本、アメリカ、ドイツに集中しています。半導体なども日本で生産していますしね。
―「自動化」の流れは御社にとってどうですか?
野口) 省力化装置は、それこそ日本、アメリカ、ドイツを中心に、今後ますます成長分野となっていくと考えています。当社にとっても、省力化装置の大型部品作りは大きなビジネスチャンスです。
―最後に、今後の展開についてはいかがでしょうか?
野口) 現在の業務領域や営業領域の拡大など、内製化対応部門の拡大など、既存事業の拡大とともに、京都の強みである産学公連携により、新分野進出等も視野に入れていきたいです。加えて、より一層大きな飛躍を遂げるために、2回目となる、新たな経営革新計画の検討もしていきたいと思っています。
飛躍を遂げる同社。今後の展開がますます楽しみです。
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