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株式会社大滝工務店(京都企業紹介)

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老舗工務店による、新しい地域工務店の在り方の模索

(掲載日:平成29年1月23日、聞き手・文:ものづくり振興課 足利)

画像:おかげさまでの気持ちを大切に

 株式会社大滝工務店(舞鶴市)の大滝代表取締役様にお話をおうかがいしました。

文化財も手掛ける大工を抱え、上流工程から下流までワンストップで手掛ける老舗工務店

まず、事業の概要から教えてください。

大滝) 昭和27年に私の祖父が創立し、現在従業員24名で、鉄筋コンクリート造や鉄筋造の事務所、店舗、一般木造住宅の新築、社寺仏閣、大小さまざまな規模を手掛ける総合建築業を営んでいます。

   

―1級建築士が6名もいらっしゃるなど、なかなかすごい規模でらっしゃいますね。

大滝) お客様からは、当社の丁寧さ、まじめさが評価いただいています。当社は基本的に建築一本で、「官」の仕事もしていますが民間がほとんどを占めます。創業以来、厳しい時代でも大工を外注とせず社員大工の育成にずっと取り組み続けており、それが営業から現場の大工の施工までワンストップで全て完結できる技量と体制につながっており、この部分を評価していただけるお客様もいらっしゃいます。

―なるほど。

大滝) 「舞鶴一の大工を育てる、そのために大工の待遇も良くする」という創業者の方針がずっと引き継がれています。例えば厚生年金制度が開始した時から大工にも適用しており、現役を引退された大工さんからは、今でも感謝のお言葉をいただきますね。

倒産の淵からの見事な事業再生!

―たしか、東京で働いてらっしゃって、超大手情報通信企業にお勤めでらっしゃったのですよね?

大滝) 先代社長の父が病になり、サポートするため2007年に帰ってきた時は、建設業が大変不況な時期で、往時数十億円あった売上が大幅に減っていました。従業員も、給料も士気も上がらない状況でした。会社は、年間数千万円もの借入金の返済に追われ、せっかく東京から帰ってきたのに「これは、一生、会社の奴隷、返済の奴隷になるな」と思ったのを覚えています。

―どうやって資金繰りを立て直したのですか?

大滝) まずは頻繁に京都銀行様、会計士様、私の3者で作戦会議を重ね、資金繰り表、実行計画づくりに取り組みました。それでも最初の頃は、あまりに状況が厳しかったので、閉じることも頭をよぎることが多かったです。京都銀行様も会計士様も本当に親身になって相談に乗って、一緒になって計画づくりを助けていただき、心から感謝しています。

―金融機関として素晴らしい行動ですね。

大滝) 次に、売上よりも利益が重要と、販管費などのコストを下げ、利益率をいかに確保するか、かなり細かく細分化した実行計画を立てました。大手情報通信企業での勤務経験を活かして、という面と、そういうのが性に合っていたという面があり、状況が厳しい中にあって比較的楽しみながら(?!)取り組めましたね(笑)。そして、全従業員の全ての行動に対して厳しくコスト縮減、利益率向上に繋げるよう促しました。「出張に行くのになぜ特急電車に乗るのか」「今のお客様への話し方はいけない」「腰パンするな」とか、かなり細かく、うるさく言っていました。いわば「欠点探し」ばかりしていたようで、従業員には嫌われたと思います。

―利益率重視ということは、せっかくの発注案件であっても選別されたということ?難しいことですよね。

大滝) はい。高額な発注案件が飛び込んできても、すぐに飛びつかず吟味し受けないこともありました。かなり苦渋の選択でしたけれど。しかし、こうした全社的な取り組みが実り、2010年には大幅に収支を改善でき、利益が確保できました。これで再生に道筋がつきましたし、自信にもなりました。その後2011年以降に特需も重なり、今では再生に係る借入金を完済できました。

メッセージを伝える大切さ

―再生達成ですね。素晴らしい。しかし、社員さんには嫌われたまま?(笑)

大滝) きっと、そうでしたね(笑)。転機の1つは、2012年に開催した会社の「60周年祭」の頃です。全社員で取り組み、地域の人たち約700人が来てくれて、一致団結感ができました。しかし、それでもまだ私は口うるさく指示を出したりしていたようです。そしてもう1つの転機は私が結婚したことです。家族が出来て、私自身、見方が変わったのです。「みんなそれぞれのご家庭では立派なお父さんだったり、お母さんだったりするのだな」と、そういう見方ができるようになりました。そして素直に一人ひとりの社員に尊敬の念が生まれてきました。こうして心のゆとりが好循環になっていったと思います。

―いい話ですね。

大滝) 2015年からは「働きやすい職場づくりワークショップ」を全社みんなで取り組んでいます。職場でBGM流す、トイレをきれいにするなどといったことを始めています。また、最近、気づいてきたことがあるのです。全てのことに、きちんと「メッセージを伝える」ということです。ちゃんとはじめに自分の理念、方針を一つひとつの物事について伝える、ということですね。

―なるほど、私にもためになる話です!(笑)

大滝) つくづく思いますのが、「お客さんのためもあるが、それ以上に自分自身のため。人生の中で働くということの意義を考えてほしい」ということです。こういうことを伝えるようにしています。コップのフタが下を向いていては、いくら水を注いでも水は貯まりません。でも、みんなの持っているコップを上に向けることができれば、本来どんどん水が入って貯まっていくのです。経営者の仕事の第一歩はコップを上に向け、そこにどんどん水を注ぐことだと思っています。

―ほんと、いい話ですね。

大滝) そして今、会社の理念づくりや、組織の機能を分化して、目標や責任を明確化し、問題を分析できるような体制再構築に向けた検討を始めているところです。

「KAN,MA上安プロジェクト」

―社外から来られた利点を存分に発揮されていますね。さて、「KAN,MA上安プロジェクト」など、新しいプロジェクトも手掛けてらっしゃいますね。

大滝) 広い土地の一角に、カフェ、暮らしのことならなんでも相談できる暮らしのコンシェルジュデスク、当社の住宅に体験住まい(宿泊)ができるモデルハウスが一体となった店舗を建築します。当社の遊休不動産を活用し、その付加価値を高めて、新しいまちを作り出すものです。

―「KAN,MA」の意味は?

大滝) 「良い間をとる」ということですね。程よい距離感、伸びやかな空間を創出します。今後、当社の木造住宅のブランドとしていきたいと考えています。

町家再生プロジェクト「KOKIN

―また、町家を活用したプロジェクト「KOKIN」もされてらっしゃいますね。

大滝) 会社の事業ではなく、私個人として、舞鶴の仲間達と一緒に「まちを楽しみ、発信すること」をテーマに様々な活動をしています。町家には、レンタルスペースのほか、チャレンジカフェ「FLAT+」があり、日替わりで飲食店が変わるのですが、ほぼ毎日出展者が埋まっています。

―すごいですね。

大滝) 家屋を持っているけど使わない人、家屋を持っていないけど使いたい人、このマッチングをしたいなと思っています。舞鶴にも素敵な古い町家がたくさんあり、それを残していきたいのです。

―舞鶴に帰ってこられた直後は、本当に大変だったと思いますが、今は、楽しくて仕方がないんじゃないですか?

大滝) はい、ほんとに楽しいですね!同じ事をしているのになぜか東京ではカッコ良く見え、地方ではそう見えないことが多くあります。なので、工務店をカッコ良くしたい、舞鶴をカッコ良くしたいのです。地方でもおしゃれに生き生きと働ける職場を作り出したいのです。そうして、他府県からも働きに来てくれるようにしたいですし、働く人達にとって「自分が上がる場所」にしていきたいと思っています。

 

舞鶴発のとても素晴らしい取り組み。ますます楽しみです!

「いつかは」KYOTOかえるゼミin東京♯2 事例発表

(掲載日:平成28年10月31日 ものづくり振興課)

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