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知恵の経営、元気印、経営革新、チャレンジ・バイの各認定等を受けた府内中小企業を紹介するページです。
(令和2年3月30日、ものづくり振興課 足利)
「まだまだマスクが不足しておるようですので、弊社で作ってみました。従業員とその家族、そして地域の方々に無償でお配りしております。販売は考えておりませんが、このご時世ですので、「ここに行けばある安心」を感じてもらえたら」(株式会社西山ケミックス(外部リンク)(宇治市)森代表取締役様 談)
販売はされておりませんが、元気をいただける活動でありますので、ここに紹介させていただきました。
(掲載日:平成28年8月2日、聞き手・文:ものづくり振興課 足利)
株式会社西山ケミックス(外部リンク)(宇治市)の森代表取締役様にお話をおうかがいしました。
―まず、事業の概要を教えてください。
森) ゴム製品の製造、液晶保護フィルムの加工を行っています。ゴムは、電気機器や精密機器に使われるパッキンや小型成型品、医療機器に使われるチューブやシミュレータから、水回りをはじめとする住宅設備、キーボードカバー、その他のOA周辺アクセサリなど生活雑貨に関するものまで様々です。
―ゴム製品の製造は京都では珍しいですね。御社が運営されてるウェブ「ゴムナビ」を拝見すると、ゴムにも本当に様々な機能があるのですね。
森) 工業用のパッキンであれば耐摩耗性や高温環境での耐油性に優れたもの、窓枠用であれば強度があり耐候性に優れたもの、キーボードカバーであれば熱や水に強く透明性が高いものなど、用途に応じて様々な機能を持たせます。導電機能を付与することもあります。こうしたゴムについて、世の中の開発者、設計者の方々にもっと知ってもらおうと始めた1つが「ゴムナビ」(外部リンク)でして、おかげさまで、月2万人もの方がページに訪れています。そしてもう1つが、当社ゆるキャラ「かばきち」(外部リンク)です。2013年度の新入社員らが考え出し、運営しています。現在「ゆるキャラグランプリ」に出場中ですので、応援よろしくお願いします!(笑)。去年は京都で3位だったのですよ。
―それはぜひ応援しなければなりませんね!(笑) さて、一方の液晶保護フィルムはどのような機能を持たせたものがあるのですか?
森) 反射のギラツキを軽減し画像を鮮明に見せるための「高精細フィルム」、ブルーライトから目を守る「高透明ブルーライトカット」、指スベリを良くし液晶画面を皮脂や汚れから守る「フッ素フィルム」など、いろいろあります。
―そうしたゴム製品や液晶保護フィルムは、どういう加工工程があるのですか?
森) ゴムを採り上げてご説明しましょう。材料は、シリコーンゴムを中心に、エチレンプロピレンジエンゴム、クロロプレンゴムなど様々な材料を扱っていますが、ゴムは高分子構造であり、最初は「練り」工程では、それを切断、均一化構造にするとともに、配合剤(加硫材、加硫促進剤、顔料等)を均一に混ぜ合わせるために、練り込みます。触ってみると粘土みたいな感触かもしれませんね。そして続く「分出し」工程では、金型へ仕込む際の大きさに切り分けます。
― 一見すると単純作業に見えますが、よく拝見すると手さばきが難しそうですね。
森) はい、そうなのです。実はかなり難しく、当社内でもこの作業ができるのはわずか数名です。そして、次は「直圧成型」です。見た目はたい焼きを焼く方法に少し近いかもしれません。加熱した金型に加硫ゴムを入れ、金型を閉じ加圧し硬化させます。よくご覧いただくと、ガス抜きのためのバンピングでわずかに開く瞬間がありますが、これも含めて自動、手動の両方の機械があります。マーケットの大きさから樹脂等に比べると、自動化指向というよりは労働集約型の部分が残っています。その他、「真空注型」、トムソン型による「打ち抜き加工」だけでなく、NC加工機による「切削加工」や「ウォータージェット加工」もできますので、金型レスで1個からの加工、試作にも対応しています。そしてバリ取り、検査などの「仕上げ」等へと続いていきます。液晶保護フィルムについても、さきほど申し上げたような機能を持たせるために、様々な材料を塗り重ねていったり、形をカットしたりという工程があるわけです。
(左から、直圧成型、打ち抜き加工、ウォータージェット加工)
―生産管理での工夫にはどんなことがありますか?
森) 生産管理システムでは、注文、工程、作業者ごとに現在の進捗状況が分かるようになっています。これは生産効率の向上という観点もありますが、それ以上にお客様へのスピーディな対応のために、進捗状況を「見える化」し、社内で共有しようということが一番の目的です。また、(公財)京都産業21様にも支援していただいて、「NKシステム(注:NKは開発した社員、野呂さん・梶栗さんのイニシャル)」という顧客管理システムを導入しました。展示会等で知り合った方々との関係性を深め、当社のファン、将来のお客様になっていただくためのツールで、成果を上げています。
―御社の特長はどういったところでしょうか?
森) 当社は、図面レスの案件にも対応するとともに、ファブレスメーカーの最終製品のOEMも多く、設計・デザイン、試作から、量産、検査に加え、パッケージング・出荷までワンストップ対応が可能です。例えば、材料にしても、既製品をそのまま使うケース、ゴム製品加工業者ごとの「秘伝のレシピ」の如く、様々な機能を加えていくケースがありますが、当社の場合は、さらに大手材料メーカーや製品メーカーとともに新たな機能性ゴムを共同開発するケースも多いです。製品サイクルがどんどん短くなってきている中、大手にとっては我々のスピードが魅力なのだと思います。最近であれば、水回り関係や、導電性向上の関係などが多いかもしれません。「ビッグデータ」などが言われていますが、当社も参画している「京都試作ネット」(外部リンク)や「ゴムナビ」(外部リンク)などには既に情報がたくさん集まっており、それをどう活かすかという時期なのかもしれませんね。
―なるほど。
森) 特に当社の場合、スマートフォン用の液晶保護フィルムをはじめ、市場に近い製品を取り扱っていますので、競合製品や市場の調査、コンセプト立案、デザイン設計といったところからから開発を引き受けます。実際「スマートフォン用の液晶保護フィルムがほしい」という要請だけで動きます。このように、「デザインする」ところから、実際に「カタチにする」ところまでできるところは珍しいと思いますし、いわゆる「スマイルカーブ」で言うところの、上流工程、下流工程は常に意識しています。
―すごいですね。さて、最後に「金型引受サービス」について教えてください。「ゴムナビ」と同じく、業界全体のためのサービスだと思いますが。
森) そうですね。業界全体としては規模の小さい企業が多く、経営者がご高齢になれば廃業されるところも多く出てしまいます。通常、他社で使ってこられた金型には、やはり癖が残っていたりするので、引き受けたくないものです。しかし、その仕事が海外に移転するとせっかく続いてきた国内の「ものづくり」が廃れていくことに繋がってしまいます。幸い当社は若い社員も多いですし、ものづくりの技術継承にも繋がるということで、始めることとしました。発注してきたゴム成型屋さんが廃業されて困ってらっしゃるメーカーさん、商社さんらを中心に、2年間で30件もの利用があります。
―業界全体、国内のものづくり全体をカバーしていくお考え、素晴らしいですね。御社の行動指針も素敵です。
森) 社員みんなで考えてくれました。レイヤーが少しばらけている面はあるかもしれませんが、自分たちの行動指針ですから自分たちで考えて実践するということで、良いものが出来上がったと思っています。
関係者みんなに幸せを届けようという思いをもって進んでらっしゃる同社。今後のますますの発展が楽しみですね。
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