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知恵の経営、元気印、経営革新、チャレンジ・バイの各認定等を受けた府内中小企業を紹介するページです。
(令和3年5月27日、ものづくり振興課 足利)
株式会社野崎染色(外部リンク)(亀岡市)の田中左智枝取締役企画部長にお話をおうかがいしました。
--昨年度、ものづくり中小企業等経営変革緊急支援事業に取り組んでいただきありがとうございました。現在、コロナ禍で大変お忙しくされているとお聞きしていますが・・・。
田中)そうなのです。当社は約20名体制で、アパレル関連の無地染色加工、インクジェットプリント加工を行っています。ありがたいことに、従前より忙しくお仕事をさせていただいてきたのですが、コロナで国内回帰と言いましょうか、更に忙しくさせていただいています。
--御社の顧客はどういったところなのですか?
田中)NDAで名前は言えませんが、海外の有名ブランドなどですね。
--この分野は中国や東南アジアなどにかなり移ってしまったわけではないのですか。
田中)もちろん海外も多いですが、メーカー様によっては「日本の品質でないと」とおっしゃるところもあります。また、今回のコロナで余計にそうかもしれませんが、納期などのリスク分散のために、日本と海外の両方と取引をなさっておられるところもあります。
--なるほど。
田中)ですので、中には当社はサンプルづくりを担い、量産になれば海外に、というようなケースもありますね。
--機械金属等でも見られる「開発は日本、量産は海外」というのと重なって見えますね。
田中)また、特に最近は、ファンを獲得するために、「製造へのこだわり」をPRされるメーカー様も多く、その工場として当社の映像等もよく用いられますね。
--そうなのですね。ハイエンド向けとして御社の品質が支持されてらっしゃるということかと思いますが、高品質というのは例えばどういったことなのでしょうか?
田中)例えば、大量に染めても色のぶれがないといったことですね。
--シロウトで分かってなくて申し訳ないのですが、同じ染料で同じ機械なら同じ色になるという単純なものではない?
田中)例えば、シルクって蚕から紡ぎ出されますよね。つまり、生物の個体によって微妙にシルクの品質って違うのです。それでも当社は、同じ色に合わせるのです。
--おお、なるほど!それは逆にすご過ぎますね!
田中)あるいは、サンプルを作った時は春だけど、量産する時は夏になっているという場合、気温も湿度も全く異なりますから。
--どうやって合わせるのですか?
田中)その都度、小さい生地で試作をして、ということを丁寧にしているのです。
--依頼主側でも受入検査はされるのですか?
田中)もちろんです。反物でしたら、検反屋さんという業種もあるくらいです。
--そうなのですね。こうした品質を実現するノウハウを身に付けるというのは相当なものでしょうね。
田中)そうなのです。生地って、どんどん新しい素材が登場してきますので、研究は尽きることがありません。当社の特徴の1つが、シルク、コットン、ポリエステル、ナイロン、ウール、レーヨン、麻など多種多様な素材、300種類以上の素材に対応できるということです。同じシルクでも様々あるのですよ。
--そうなのですね。「職人」の皆さんがそういった研究を?
田中)そうです。当社は20歳代、30歳代から幅広い年齢構成です。忙しくてみんな大変だと思いますが、熱心に取り組んでくれています。
--そういう職人の皆さんは、どういったご出身なのでしょうか?
田中)芸術系の大学の子など、最近は大学を出た子が入ってきますね。
--芸大ですか。デザインの力が必要なのでしょうか?
田中)アパレルブランドなど顧客企業様の方でデザインはされるのですが、インクジェットプリントの場合などでは、フォトショップなどのソフトウェアを使って画像データ作成や処理を行います。
--そうなのですね。一般的な「職人のイメージ」と違う、クリエイティブ集団って感じですね。例えば補助金申請書も大変読みやすく素晴らしい文章だなと思っていたのですが、田中部長が書かれたのですね、驚きです。
田中)ありがとうございます。書き慣れているわけではないですが、私は文学部出身です(笑)。
--どうりで!(笑)
田中)当社の高品質、短納期を支えるもう1つの特徴が社内一貫加工を行っているということです。
--加工工程を、シロウト向けに超簡単にご紹介いただけませんでしょうか。
田中)インクジェットプリントの場合は、まず受け入れた生地への「前処理」、すなわち、生地に染料とのバインダーとなる糊付けを施します。そして「インクジェットプリント」。次に「蒸し」工程で染料を固着させます。そして「洗い」で精錬をし、最後に「仕上げ」ですね。アイロンのイメージですね。
--なるほど。
田中)無地染色の場合は、まず、染料の配合量の調整をし、顧客企業様に確認します。
--そうなんですね。
田中)「色」って無限なので。
--それ、名言ですね!
田中)ははは。そして素材に応じて様々な染色機で染めていきます。例えば、ポリエステルなどは、強度があるのでこういった感じで、機械の中で揉むようにして染めますし、繊細なシルクなどは、釣り染めによって染めます。
--特殊加工も様々なさっているのですね。
田中)例えば、抗ウイルス加工「コロナころり」は、今よく求められますね。加工を施した生地をテストした結果、2時間後には新型コロナウイルスを99%以上不活性化させるというデータが得られています。シルクや綿、麻、ポリエステルなど全素材対応で、風合いもそのままで、洗濯10回後のデータも良好です。
--バイオ加工というのは?
田中)いわゆる「ビンテージ調」加工のことですね。今、少しブームですよ。
--事業引継ぎもなされたとお聞きしています。
田中)知り合いの京都の和装関係の染色企業から事業承継の相談を受けていました。経営状況も良く顧客も多くお持ちでらっしゃいましたが、後継者不在で仕方なく廃業を検討されていたのです。それで、希望される従業員の方は全て当社でお引き受けし、機械等も買い取って引き取らせていただきました。
--そうだったのですね。社員様どうしの融和は進んでいますか?
田中)お互い穏やかなメンバーなので、問題ありませんね。
--それは何よりです。
田中)事業面では当社にはない「和装」「製品染色」をなさっていたので、当社の事業拡大にも繋がっています。当社は1945年の創業当時は和装もしておりましたが、工場拡大等のために亀岡に移転をして以降は特に、アパレル関係中心でありましたが、これを機に再び和装も担っています。
--「製品染色」というのは?
田中)生地の状態で染める「反物染色」ではなく、縫製された製品の状態で染めることです。引継ぎで買い取ったもののほか、今回の補助金でも導入させていただいたドラム染色機で染めます。敢えて分かりやすく言うと、当社の従来のハイエンド層向けのものよりは、もう少しカジュアル路線のものが多いですので、当社にとって新たな客層の取り込みになります。
--事業引継ぎとしても理想的ですね。さて、最後に今後の展望についてはいかがでしょう。
田中)これまで、値下げ要求などに対し、悩みながらも断ってきました。そしてコロナによって逆にさらにお客様が拡大し、自信になっていますし、これまで貫いてきた姿勢が間違ってなかったのだと安堵もしています。引き続き、高い品質を目指し、改善や研究に一層励みたいと思います。
今後の展開がますます楽しみです。
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