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知恵の経営、元気印、経営革新、チャレンジ・バイの各認定等を受けた府内中小企業を紹介するページです。
(掲載日:平成30年2月2日、聞き手・文:ものづくり振興課 足利)
日本電産シンポ株式会社(長岡京市)営業本部の三村次長にお話をおうかがいしました。
―本日は、御社の無人搬送台車を中心にお話をお伺いにまいりましたが、最初に、簡単に御社の概要を教えてください。
三村) 1952年に、京都で我が国初の「無段変速機」メーカーとして創業し、現在は、変速機・減速機、プレス機、無人搬送車、計測機器、陶芸機器等を世界レベルで展開しています
―減速機ですか。
三村) 減速機とは、歯車などを使って回転速度を遅くする代わりにトルク(回る力)を増加させる機械で、エレベーターやエスカレーター、自動ドアや、工場のベルトコンベア、様々な製造機械など、モーターで動くものの多くに付いています。汎用品の分野では他に世界中に無数のメーカーがありますが、当社は、小型サーボモータ用減速機の分野で日本国内や中国でシェアNo1を獲得しています。
―素晴らしいですね。一般の方には聞きなれないものですが、どういった点が難しいのでしょうか。
三村) 1分間に何千回転と回っているモーターが起こした回転を、ゆっくり、精密にコントロールするという点でしょうかね。ですので、日本の精密なものづくり、それを支える様々な産業用機械、ロボットに欠かせないものなのです。
―そうした中、御社の減速機にはどういった特長、工夫があるのでしょうか。
三村) 精度が高い、短納期などいろいろございますが、何といっても音が静かということです。他社製と比べても1機当たり5~10デシベルは静かですね。1つの産業用機械には、複数の減速機がついており、それが工場内に何台、何十台とありますから、音は結構大きな問題なのです。例えば、病院の電動ベッドや産業用ロボット等にも最適なわけです。
―どうして、御社はそれが実現できるのですか?
三村) はす歯、すなわち、歯車の歯を斜めに切ることで、歯車の歯同士の当たり方を、徐々に、そして広い面積で当たるようにするということです。はす歯自体は、自動車でも使われている一般的な手法ですが、はす歯にすると、力がモーターにより大きく返り、エンコーダを故障させてしまうと言われ、この業界ではタブーとされてきたのです。それを当社の特許技術で実現したのです。コストが上がる分は、生産拠点の工夫など社内マネジメントで乗り越えてきました。
―なるほど。
三村) もう1つは、種類、メーカーを問わず、あらゆるサーボモータに対応することができるという点です。当社は、小型サーボモーター用の減速機にいち早く着目し、製品化しました。業界の中では後発で多くのメーカーが参入してきましたが、品質・品揃え・コスト・短納期で全てを満たした製品づくりを絶えず追及して来ました。こうしたこともあり、おかげさまで、ニーズはますます高まっています。
―たしかに、2012年頃から売上がぐっと右肩上がりで伸びてらっしゃいますね。
三村) そうですね。従来事業自体が伸びている面と、プレス機を製造しているグループ企業日本電産キョーリと一緒になったということや、海外のプレス機メーカーをM&Aした影響の両方が関係していますね。
―プレス機ですか。
三村) 電子機器や自動車を構成する部品は常に小型化の要求がますます高まる中にあって、小型高速高精度プレスが特に得意なKYORIブランドをはじめ、大型の高速高剛性自動プレスを得意とし、特に食品・飲料缶プレスの分野で圧倒的な世界トップシェアを誇る、米国最大手のプレス機器メーカーNIDEC MINSTERブランドなど、プレス機から材料供給装置まで幅広く対応しています。
―もう一つ気になりますのが、陶芸機器です。京都らしいと言えばそうですが、意外です。
三村) 無段変速機の技術を伝統産業に融合させたわけですね。例えば、陶芸用電動ろくろは国内、海外ともにトップシェアを誇っており、プロからアマチュアまで幅広くご利用いただいています。陶芸窯や土練機など幅広いラインナップで、工芸機器の総合メーカーとしてNo1の実績を築いています。
―さて、無人搬送台車「S-CART」について教えてください。こうした無人搬送機は様々な分野での活躍が期待されますね。
三村) そうですね。工場のファクトリーオートメーション化に欠かせませんね。食品加工工場では原料の入ったドラム缶をS-CARTが工程投入口まで搬送して投入し、電子部品工場でも無人でコンタミネーション対策エリアに資材を運ぶことができます。ビル工事の建設現場で、夜の間に翌日の工事に必要な資材を、各階層に自動搬送しておくこともできます。病院や施設では、温冷蔵庫を載せたS-CARTが厨房から各病棟へ自動で移動していくといった使い方もできます。
―磁気テープ方式ではないのですね。
三村) はい。ガイドレスです。レーザーセンサ方式ですので、レイアウト変更や使用場所の移動にも柔軟に対応できます。
―どうやって走行するのですか?
三村) 操作は、タブレットで簡単にできます。タブレットの手動操作で、初期設定として、基準点を覚えさせるとともに、経路周辺を走らせて地図作成(マッピング)をした上で、走行経路を一度走らせて覚えさせます。もちろん、複数の経路設定が可能です。後は実際の運行に際し、タブレットで走行経路を選択するだけです。
―通信についてはどうですか?
三村) WiFi通信網を利用することで、広範囲での遠隔操作にも対応していますし、限られた場所での使用ではBluetooth通信により、S-CART本体とタブレットのみで直接操作も可能です。また、大容量リチウムイオン電池を搭載し、わずか1時間の充電で可搬重量100kg積載時で連続8時間の稼働が可能です。他に1トン積載タイプもあります。
―なるほど。
三村) 当社の工場内でも多数のS-CARTが動き回っています。中小企業投資促進税制(外部リンク)の対象にもなります。ぜひ、多くの企業様にご利用いただきたいですね!
人手不足が著しいこの時代、S-CARTが生産性革命をもたらしていくことに期待大です!
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