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知恵の経営、元気印、経営革新、チャレンジ・バイの各認定等を受けた府内中小企業を紹介するページです。
(掲載日:平成28年7月12日、聞き手・文:ものづくり振興課 足利)
平成26年度元気印・平成27年度経営革新企業、長津工業株式会社(外部リンク)(京都市伏見区)の津田代表取締役会長にお話をおうかがいしました。
―まず、事業の概要を教えてください。
津田) 世界第2位の建機メーカー・コマツのメインサプライヤーとして、ブルドーザーや油圧ショベルの足回り部品(履帯)、ホイールローダー用トランスミッションなどの建機部品から精密機械部品に至るまで幅広い分野の製品を製造しています。
―具体的な製品としては、例えばどんなものがありますか?
津田) 地面と接触するシュー(履板)をつけたリンクを帯状につないだ履帯Ass'y、その構成部品の一つで、前後のリンクをピンとブッシュ等で繋ぎ合わせ、地面と接するシューを取り付けるレギュラーリンク、油圧駆動システムの配管の継手である油圧ブロック、なめらかな加減速、低騒音が特徴のハイドロ・スタティック・トランスミッション(HST)、ペダルの踏込み量に応じてエンジンの燃料噴射量を制御するために使われるペダルセンサーなどです。
(左から、履帯Ass'y、レギュラーリンク、油圧ブロック、HST)
―センサーもですか?!「i-Construction」など、今流行りの「IoT」の先駆け的な事例として印象深いものですが、それを支えるセンサーも作ってらっしゃるのですね。
津田) コマツでは「ICT建機」と呼んでおり、たしかに伸びている分野です。例えば、ICT油圧ショベルは、通常3年以上の経験が必要と言われる法面形成を、新人オペレーターが乗車3日で仕上げることができるほどの優れもので、深刻化するオペレーター不足解消に期待されています。当社は、油圧ショベルの作業機角度センサーやブルドーザーの作業機を動かす油圧シリンダーのストロークセンサーなどを生産・供給しています。
―精密機械部品には、例えばどんなものがあるのですか?
津田) 半導体フォトリソグラフィ用エキシマレーザーのコア部品である光源用アルミチャンバー等です。エキシマレーザーの光源市場は、コマツの子会社と米国企業が世界を二分していますが、シリコンウエハに回路パターンを露光する際の光源は、半導体の集積を高めるため、より短波長の光を発することができるものが求められており、次世代のEUV(極端紫外線)光源の開発競争が進んでいます。EUV光源に使用されるチャンバーは大型かつ複雑な形状ですので、当社がこれまで培ってきた、大型のアルミ素材を複雑かつ高精度に切削加工するノウハウを生かし、新規導入した5面加工門型マシニングセンターや5軸加工マシニングセンターを使いこなして、その開発段階からサポートをしていきたいと考えています。
―コマツからの信頼が厚いのですね。
津田) 当社先代会長である父と私の親子2代で、コマツの協力会の会長を務めさせていただきました。同社はバブル崩壊後の厳しい時代も我々外注先を大切にされました。そうした姿勢、価値観が、近年定められた「コマツウェイ」にも記されており、大変ありがたいことです。また、そうした厚い信頼関係があるからこそ、思い切った投資ができるのです。2008年には小松拠点1万坪のほか、ベトナム、タイの3か所同時に工場を建設し、現在は国内4工場、海外2工場を稼働させています。
(左から、長津ベトナム、バンコク長津)
―生産現場ではどういった工夫をされてらっしゃるのですか?
津田) 当社は創業以来、QC(品質管理)活動に力を入れて取組んでおり、全員参加で様々な現場改善活動を推進することを得意としていますが、それに加え、近年は特にICTなど新しい技術を積極的に活用した技術革新を進めています。例えば、少量多品種の機械加工職場においては、540本のドリルやチップなどの工具フォルダー1本1本にICチップを埋め込み、工具の所在地・寿命・オフセット値などをコンピュータ管理することによって、交換時間の短縮や工具費の低減、品質の安定化を図っています。システムとリンクした工具自動倉庫により、作業に必要な工具が自動的に運ばれてきますし、工具は時間の経過とともに摩耗したりしますが、ツールプリセッターで計測した工具長測定データをシステムに自動登録できますので、いちいちマシニングセンターに手入力しなくてもよいようになっています。
―さて、今後の展開についてはいかがでしょうか?
津田) 私自身、昨年度会長職に就任し、精力的に京都での新たな事業展開を模索しているところですが、先ほど述べました生産工程の工夫の次には、CAD/CAM/CAEによるシミュレーション、プログラム作成などの生産リードタイムの短縮やコスト低減を図っていきたいです。そうすることで、開発案件や試作対応のほか、装置メーカーからの少量多品種品のニーズをターゲットにした取り組みなどにも繋げていきたいと考えています。
―あえて課題を挙げるとすれば?
津田) そうですね。石川県では知名度が高まってきていると自負していますが、逆に京都では必ずしもそうではありません。ICT/IoTを進めていく人材、新しい事業展開を一緒に進めていく人材などの確保も進めていきたいところですね。
今後の展開がとても楽しみですね!
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