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知恵の経営、元気印、経営革新、チャレンジ・バイの各認定等を受けた府内中小企業を紹介するページです。
(掲載日:平成29年1月10日、聞き手・文:ものづくり振興課 足利)
平成28年度経営革新企業、日本食の知恵 健康和惣菜 ながいきおまめ(外部リンク)(京都市)の蔵立悦子代表、晋伍チーフマネージャーの親子お二人にお話をおうかがいしました。
―単に「美味しいおふくろの味」というだけではなさそうですね!?
チーフ) 従業員7名で、惣菜・弁当の製造販売、配達・配食サービスを行っており、「日本食」と「健康」をコンセプトに、「一からの手作り」によりご提供しています。特徴の1つは、加工品や添加物等を使用せず素材のうまみを引き出す調理法でして、無添加・減塩・低糖を実現しています。それにより、安心・安全であるだけでなく、必要以上の調理をしないことで、素材にしっかり栄養も味わいも残るのです。
―素材を活かすということですね。
チーフ) 2つ目は、その素材へのこだわりです。私どもの仕事は、毎日、その日のお出汁を取るところから始まります。創業130年の老舗削節問屋から仕入れた鰹節、鯖節、うるめ節、昆布、ほし椎茸を、料理に合わせて当店独自にブレンドして用いています。野菜は、提携農家からの直送やオーガニック専門店経由等で、有機栽培、減・無農薬の野菜を中心に用いています。お米は、有機JAS認証の最高ランク「特A」評価を何度も取得している丹後産コシヒカリを用いています。
―なるほど。
チーフ) そして、「惣菜のセルフ量り売り」という売り方も、近隣にはないオリジナルサービスとして御好評をいただいています。
―おもしろいですね。さて、昨年から新たに取り組まれている高齢者施設向けの配食サービスの特徴はいかがでしょうか?
チーフ) まず、当店のように、カロリー調整を始めとする各種制限食、病気の治療や術後の回復促進のための療養食、ご高齢の方のための介護食、各種のアレルギー対応食など、一般の普通食以外の様々な食事を網羅して提供できるところは大変珍しいです。しかも、一般にはレトルトパウチを送付しているところも多いのですが、当社の場合は管理栄養士が監修に関わり、先ほど申しましたように、加工食品ではなく一から手作りで、できたての料理をお届けしているので、施設様は盛り付けるだけでいいのです。
―どうして、他ではやっていないことを、こちらでは実現できるのですか?
代表) 私自身、大手病院給食会社で調理インストラクターを務めてきました。各福祉施設にも栄養管理の方はいらっしゃったりするのですが、入居者様・利用者様の状況は福祉施設の種類ごとに様々ですので、例えばデイサービスと老健施設では食事に対する留意点が違いますから、普通は自分の施設の食事対応は分かっても、他の施設のことは分からないものです。しかし、私の場合は、各種の病院や福祉施設を幅広く指導し、こうした特別食の様々なノウハウを蓄積してきたのです。
―そうなのですね。
チーフ) もう一つは、高齢者施設の個々の入居者様・利用者様に応じた、オーダーメードの食事を提供する点です。
―どういうことですか?
代表) 糖尿病食や減塩食をはじめとして、病態別にカロリー、塩分、たん白などを個々に調整させて頂いております。また、咀嚼力低下の方には「きざみ食」、嚥下の困難な方には「ミキサー食」というのが、一般に介護食の定番です。しかし、風味や味、見た目がイマイチで、正直、食欲がそそらないものが多いと思いますし、咀嚼のための「きざみ」が、場合によっては、むせる、誤嚥を引き起こすこともあるなどの危険性を有するとの指摘もあります。ですので、きざみの際の、食材の大きさはもちろんのこと、素材のゆで加減などの固さまで細かな配慮も行っていますし、ミキサー食は煮汁やお出汁を使って食材をミキサーにかけるため、汁ごと食べていただくイメージなので味の濃さの加減にもノウハウが要るのです。
―お一人おひとり、本当に様々な状態のご高齢の方向けに、オーダーメード対応をするというのは、なかなかできるものではありませんよね。
代表) 中小企業ならでは、ということでもありませんが、各施設の施設長さんや栄養士の方々と連絡を密にしています。試験導入している事業所では、直接、栄養担当者とカンファレンスを行ったり、食事形態や内容のアドバイスも行っています。
―しかし、コスト面の負担は大変ですよね。
チーフ) そうですね、薄利ですね(笑)。しかし、「素材の味が味わえる制限食、介護食」だと、評判がよく、おかずのレパートリーは100種類以上ありますし、皆さんに食事を楽しんでいただけており、徐々にこのサービスの利用者が増えてきています。
―創業は2014年でらっしゃいますね。
代表) もともと料理好きの普通の主婦でしたが、母が病気を重ねた上に認知症となり、やむなく福祉施設に入所することとなった際、「せめて母が食べる食事は自分で作ってあげたい」と強く思うようになり、その施設の調理場に就職したのです。
―すごいですね。
代表) 現場での調理業務の傍ら多くの料理に関する専門の勉強、資格の取得を重ね、先ほど言いました大手病院給食会社での調理インストラクターを経て、独立起業を志したのです。
―開業の場所として、北野商店街に隣接するこの地を選ばれた理由は何ですか?
チーフ) 賑わっている商店街の中で開業したいと思ってましたので、いろいろリサーチしてこの地を選びました。
―「おばんざい」の言葉の由来上も、ぴったりですね。
チーフ) そうですね。おばんざいとは「お番菜」と書きます。この「番」とは「番茶」などに使われているのと同様に、「通常の」とか「上等ではない」という意味があり、常日頃食べるおかずのことです。いわば、本来はお客様には食べさせられない「おはずかしい」おかずのことだったのです。京都の織物、染物などの商人の家では奥様も働き手でしたので、少しの時間の合間を見て、その時期の旬のお手軽なものや乾物で作り置きできるおかずを用意する必要があったわけですね。
―今後の展望はいかがでしょう。
チーフ) 創業して業歴は浅いですが、なんとか順調に事業を立ち上げてきました。今後は更に積極的に配食サービスなどの新事業を掘り下げていくとともに、更なる需要の拡大に対応できるよう店舗拡大等にも取り組んでいければいいですね。
今後の発展が大変楽しみですね!
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