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知恵の経営、元気印、経営革新、チャレンジ・バイの各認定等を受けた府内中小企業を紹介するページです。
(掲載日:平成30年12月25日、ものづくり振興課 足利)
ミヤコテック株式会社(本社:京都市伏見区)が実施された「平成29年度中小企業共同型ものづくり事業(シェアリング事業)」の概要です。
(掲載日:平成28年8月25日、聞き手・文:ものづくり振興課 足利)
平成19年度元気印、平成27年度知恵の経営、経営革新企業の、ミヤコテック株式会社(本社:京都市伏見区)の市川社長様にお話をおうかがいしました。
―オムロン様、京セラ様、島津製作所様、村田製作所様をはじめ、錚々たる企業と取引されてらっしゃいますが、まず、御社の事業概要を教えてください。
市川) 大きく3つあり、1つ目はプラスチック成形加工及び金型製作、2つ目は緩衝材「環境対応型発泡体」製造、3つ目は装置機器等設計製造「JES事業」です。
―それぞれの事業の特徴を教えてください。プラスチック成形加工及び金型製作についてはいかがでしょう。
市川) 当社は、産業用スイッチなど、公共部門や産業部門で使う機器・設備の内装部品等をメインに、数百種類を取り扱っており、その数は他を圧倒していると思います。100分の1ミリの精度の加工も行っています。
熱硬化性樹脂製品(左)と熱可塑性樹脂製品
―すごいですね。
市川) ポリエステルやフェノールなどの「熱硬化性樹脂」をはじめとする高機能素材の成形を得意としています。その中でも特に熱硬化性樹脂を用いたインサート成型技術が弊社の「強み」です。生活雑貨をはじめ、多くのプラスチック成形で取り扱われる「熱可塑性樹脂」は、温度を上げれば溶け、固まっても再加熱すると溶ける、いわばチョコレートのようなものです。一方、「熱硬化性樹脂」は、温度を上げれば固まり、一度固めれば溶けない、いわば卵のようなもので、加工が難しく、その設備も希少なのです。熱可塑性、熱硬化性の両方に対応しているところというのは、大きな強みだと評価いただいています。
―熱硬化性樹脂の技術上の難しさというのは、例えばどういったことですか?
市川) 「熱硬化性樹脂」より発生するガスを逃がす特殊な金型構造(ガスベント)としなければならず、また専用の成形機により金型やシリンダーの温度調節が必要となり、成型条件が大変難しくなります。ガスベントから発生するバリ除去には専用設備が必要であり、その条件設定も難しいものがあります。
―なるほど。
市川) そして、金属など異なる素材を金型内に設置して一体的に成形する「インサート成形」も得意としています。内側の金属等をどうやって金型でホールドするかなど、金型の構造、耐久性などバランスを考えた金型設計が必要なのです。その他、二色(同時)成形なども手掛けています。
―次に、「環境対応型発泡体」についてはいかがですか。
市川) 2000年頃から始めた事業で、主に「緩衝材」として、環境に優しい「発泡体」を製造しています。古紙やでんぷんを原料とし、廃棄にも特別な規制は受けません。一般の発表スチロールのように、発泡剤(化学剤)を用いず、水と材料を押出機で加熱・混練し、水蒸気と高圧熱で発泡させます。
「環境対応型発泡体」(左)と「ハート型緩衝材」
―チャレンジ・バイ認定をさせていただいた「ハート型カラフル緩衝材」もよく売れているそうですね。
市川) ありがたいことです。バレンタイン商戦など大変忙しかったです。
―そして、「JES事業」ですが、まず、「JES」とは何ですか?
市川) 治具(J)、電気(E)、システム(S)から名付けたもので、メーカー様の生産工程に必要な検査機器、組立装置、作業補助治具を一品一葉にオーダーメード生産や試作を行う事業です。いわば「生産ラインのお悩み解決」をするコンサルティング事業でもあり、2007年に始めました。
―コンサルティング事業ですか。相手は、メーカー様、つまり、発注企業さんですよね。
市川) 生産ラインには改善したいけど手つかずになっている問題が必ずあるものです。担当者様も現場の作業に追われて忙しいので、引き合いが多いです。
JES製作例
―ここまで経営の多角化を進められてきた背景、理由とは何でしょうか?
市川) 私が社長に就任したのは、バブル経済が崩壊し、製造業の海外移転が進み、業界に受注減、コスト競争が押し寄せていた時期です。その対応のため、付加価値を生み出すための設備投資、生産管理体制や目標管理制度の再構築などを進めるともに、取引先への信用力を高めるために、「元気印認定」を始めとする第三者機関の認定取得等にも積極的に取り組んできました。そして、創業50年に当たる2011年までの10年間を「第二創業期」と銘打ち、それまでの樹脂成形事業に加えて「2つの新たな柱」を作ろうと考えました。それが、環境対応型発泡体とJESです。
―新たな柱を「2つ」とした理由は?
市川) 一言で言えばリスク分散で、片方が調子が上がらない時にはもう片方で踏ん張ろうということです。
―そして、実際に新たな柱を2つ実現されたわけですが、普通、願ってもそれが実現することは簡単ではありませんよね。
市川) 色々な課題に正面から取り組んできましたが、「自分はこれだけ」という限定を設けたくありませんでした。何でもやっていきたい、何でも知っておきたい、ちょっとやってみないと気が済まない、そういう性分なのです。「不真面目」は当然ダメですし、「生真面目」も必ずしも良くないと思います。私は過去の事例に囚われない「非真面目」でありたいと思うのです。つまり、自由な発想を大切にし、あらゆる選択肢を模索する感性を持ってやっていく、そういう考え方です。
―大変研究熱心でらっしゃるわけですね。では、今後の展望はいかがでしょうか?
市川) 2021年までに、更に2つの新たな柱を作っていきたいと考えています。キーワードは、3Kと申しておりますが、環境、健康、介護に関連するものです。例えば、植物の繊維をナノレベルまで細かく解きほぐして作るセルロースナノファイバーにも注目しています。鉄の5倍の強度、5分の1の軽さであり、炭素繊維のように石油系ではありませんし、資源の少ない日本でも輸入せずに生産できる素材です。この加工方法の確立ですとか、病院、福祉施設等をもっと快適にするような事業を想定しています。
新しい事業の誕生が大変楽しみです!
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