ここから本文です。
知恵の経営、元気印、経営革新、チャレンジ・バイの各認定等を受けた府内中小企業を紹介するページです。
(令和2年7月20日、ものづくり振興課 足利、中尾)
株式会社マジックバス(外部リンク)京都スタジオ(京都市伏見区)の三上副社長にお話をお伺いしました。
--御社のことについて教えてください。
三上)代表の出崎が手塚治虫さんの下で修業した後、1977年に東京の荻窪で創業しました。
--1977年というと…カラーテレビが一般家庭に普及した頃ですね。
三上)当時のアニメーションはテレビ放送が中心で、家族で見るような作品が多かったです。
--現在は生活環境も大きく変わって、深夜放送やネット配信が増えた印象です。
三上)以前と比べて子どもがアニメーションをあまり見ない時代になってきましたね。将来の夢が「YouTuber」の時代ですから。オタク文化も生まれ、アニメーションはキャラクタービジネスのツールの一環として認識されるようになってきました。
--確かにそうですね。ちなみに、御社では得意な作風や作品傾向などはありますか。
三上)児童映画や教育映画、例えば、戦争、いじめ、差別なんかを題材にしたアニメーションづくりを大切に考えており、テレビアニメの作風も、例えば「プレイボール」とか、青少年育成の観点でも推奨されているようなものを手掛けてきました。
--そうなんですね!!うちの子も再放送で見ては主題歌を歌ってますが、あれを見てくれているとたしかに親としても安心で、ありがたいですよ。
三上)最近は下請け(制作協力)に徹しており海外にも専属の協力会社を有していますが、テレビアニメ最盛期の頃から、子ども向け、少年・少女向けの作品を中心に制作してきました。私自身も、アニメーションではかっこいい動きや美しい映像よりも、子どもたちに「何を伝えるのか」が最も大切だと思っています。
--何を伝えるのか、ですか。
三上)はい。例えば、戦争映画です。実写では難解だったり、痛そうだったりするシーンでも、アニメーションならその表現を和らげた上で、子どもたちに「戦争がどうして起こってしまうのか」「戦争は何がいけないのか」といったことを考えるきっかけを作ることができます。私はそれこそが、アニメーション本来の役割だと思っています。
--なるほど!おっしゃるとおり、自分で認識している以上に、アニメーションは情操教育に大きく根ざしている気がします。
三上)そうなんです。子ども向けアニメーションは、心に響きます。大人になっても、自分の考え方に影響した作品は思い出せるのではないでしょうか。それは子ども向けアニメーション作品は、道徳的な学びや考え方を示唆することを重視している側面もあるからなのだと思います。
--いやあ、いま、大変、感銘を受けました・・・。こちらの京都スタジオは2019年4月に開設されたのですね。
三上)はい。先ほど申しましたように海外にも協力会社はありますが、海外偏重することなく、「ジャパニメーション」を目指し日本の若い世代を育てたいと思いますし、デジタル化も進んできて東京でなくても作れるようになってきました。
--なるほど。
三上)東京が現在も本社であり中心ではありますが、地方ではまず、縁あって新潟にスタジオができました。個人的には関西出身でしたので、関西にも拠点を持ちたかったので、新潟のスタジオが落ち着いた頃に、次の拠点作りということで、京都にスタジオを構えました。
--関西の中でも、京都だった理由は…?
三上)はじめは、大阪や神戸なども検討していましたが、最終的に人の御縁もあって京都になった、という感じです。実際、京都を拠点にして、スタッフが大阪や兵庫はもちろん、奈良や滋賀からも通えることもあり、また今後四国、中国、九州地方出身の学生達も来やすい環境だと思います。現在は、関西の拠点として京都を選んで良かったと感じています。
--御縁に感謝しております!
三上)こちらこそ(笑)。特に京都にある他のアニメーション会社とも仲良くしていただけるのが非常にありがたいです。東京は別格ですが、大阪も企業の数が多くて、他社は切磋琢磨し合うライバル、といった感じなので、京都では他のアニメーション会社の方から様々な情報をもらえたり、助けてもらえたりして、少し驚いています。顔で繋がれる範囲、といいますか。また、それぞれのアニメーション作りのスタンスもありながら、お互いその強みを活かし合えるような環境があると感じます。
--ちょうどいいぐらい、という感じでしょうか。
三上)まさしくそうですね。それに、京都は、自然も多く、文化に触れやすく、情緒に触れるというか落ち着いて作品づくりができますしね。
(©マジックバス)
--その作品づくりに関してお聞きしたいのですが、業界全体の課題はいかがでしょう?
三上)たしかに、作画工程においてフリーランスが多いですし、フリーランスだと保証もないということとか、育成も容易ではないということとか、課題はありますね。あるいは、発注金額が決して高いわけではないということもありましょう。しかし、それは、日本だけではなく、海外も同じなんです。
--そうなのですか!?
三上)そうなのです。しかし、何が違うかと言うと、日本のアニメーターは「いい絵を描きたい」「絵を描くことが好き」という思いがあるのですが、海外のアニメーターは「お金」なんです。
--???
三上)つまり、描く枚数が違います。アニメ制作のためには、一人1日に描かねばならない動画は30〜40枚程度ではないかと思っています。しかし日本人アニメーターは、それが例えば10〜15枚であったりするのですが、海外は80枚描いたりするのです。日本では「好き」が先に来てしまい、採算度外視で「趣味」感覚に陥ってしまうことがあるのです。
--そうなのですね!「速さ」と「うまさ」はどちらが重要ですか?
三上)どちらも大事ですが、アニメーター(原画、動画)としては、「速さ」は不可欠ですね。その先にキャラクターデザイン等に携わっていくとしても、です。「速さ」がないならば、イラストレーターやゲーム業界の方がいいかもしれません。
--なるほど。
三上)しかし、当社の子たちも、やはり「日本のアニメが好き」で、「好きな作品を作りたい」と思って入ってきてくれた子たちですから、だからこそ、子ども、青少年向けの「ジャパニメーション」にこだわりつつ、いろんな作品を手掛け、アニメーターたちが楽しく描けるようにと思って、たくさんの作品の仕事を取ってきているのです。
--なるほど!いろんなアニメーションに携わることは、アニメーターにとっても、モチベーションにも繋がるわけですね。
三上)そうなのです。そして、ぜひいつか京都・関西発の作品を作ることができれば嬉しいです。東京、新潟に比べ京都スタジオもメンバーが一番若いので、いま、東京や新潟からリモート教育などを駆使しながら成長しているところですので、いろんな経験をしていければと思います。
今後の作品も楽しみです!
お問い合わせ