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知恵の経営、元気印、経営革新、チャレンジ・バイの各認定等を受けた府内中小企業を紹介するページです。
(掲載日:平成28年10月3日、聞き手・文:ものづくり振興課 足利)
株式会社ライテック(外部リンク)(京都市下京区)の坂井代表取締役様にお話をおうかがいしました。
―まず、事業の概要を教えてください。
坂井) 無線通信の送受信の切り替えに使われる高周波パワーPINダイオードの専門メーカーです。
―無線通信ですか。
坂井) はい。例えば、地方自治体などの防災用無線や消防用無線等で、送受信のスイッチを果たすダイオードを作っており、国内無線通信機器メーカー様等に多数採用されています。東日本大震災の際に使用されていた自治体防災無線機器には、ほぼ100%当社のパワーPINダイオードが搭載されておりました。
―すごいですね。しかし、あまりお見掛けしない業界のように思うのですが。競合ってどんなところですか?
坂井) 当社は国内唯一専門で作っていまして、一時的に大手半導体メーカーが数社参入された時期もありましたが、今やほとんど撤退され、当社以外は某大手メーカーが1品種作ってらっしゃるだけです。国内市場はさほど大きくありませんから。
―国内ほぼ唯一ということですね。
坂井) 全世界的にはPINダイオードの市場規模は75億円ぐらいと推測され、アメリカには、もっと市場もあり、サプライヤーもいます。国土も広いですし、ハイパワーの無線で飛ばさないといけないという事情もあります。また、計測器・防衛・宇宙関連などの高信頼性を求められる国内市場もありますので、彼らの製品の品質レベルは高いです。
―一般のスイッチングダイオードと何が違うのでしょう?
坂井) 一般のスイッチングダイオードは扱える送信パワーは小さいのですが、多数の通信方式に対応したスイッチング機能を保証する必要があるため、回路構成が複雑で数多くの製品を供給しなければなりません。一方、当社の扱っている高品質・高信頼性のPINダイオードはシンプルな構造ですが、大電力信号を長時間同じ特性にてスイッチング機能を保証するため高信頼度なダイオードが要求されます。さらに、様々な顧客要望にお答えするため、それぞれの顧客に最適な特性を有する製品を多品種少量供給するという、人の経験と技による調整が求められるアナログ的な世界なのです。
―なるほど。
坂井) 次に、大災害の際に、例えば携帯電話では「つながらない」といったことが起こったとしても、防災無線通信ではそういったことが起こることは許されません。無線機は信頼性が高く、耐熱性、耐水性などにも優れ、高品質で頑丈、長持ちしないといけないわけです。そのため、当社の製品にも高信頼性が求められます。パッケージには京都の有名な企業様より仕入れたセラミック部材や希少金属を使用しております。
―そうなのですね。
坂井) 3つ目としまして、以上のように、丈夫で長持ちするわけですし、製品の設計サイクルが長いですので、営業も大変です。サンプルをお渡しして何年も経って、やっと受注が来るといったケースもあります。新製品を開発して、その開発費のリターンを得るのに時間がかかるということです。
―こうしたニッチな分野で起業された経過は?
坂井) 以前は、京都に営業拠点がある半導体メーカーに勤務しておりました。やがて子育ての時期になり、時間に制約されず働ける方法として「起業」という選択肢を選んだのですが、PINダイオードを扱うようになったのは、それを生産している、あるメーカーの販売事業を引き継いでくれないかと、声掛けをいただいたからです。ですので、最初の頃は「販売」が中心でして、途中から、自ら開発・製造するメーカーとなったわけです。組み立てなど協力工場に外注をしていますが、設備・製品の開発は社内で行います。主要材料はメイドインジャパンです。
―国内では、ほぼ唯一ということですが、もしも御社がこの分野から撤退なんてことになったら、世の中はどうなるのですか?
坂井) そうした撤退は全くするつもりはありませんが、もしも当社が辞めたとしたら、お客様はアメリカなどのメーカーから、高額のものを導入するしかないという状況になるでしょう。
―ということは、御社は、いわば「社会的企業」ですね。今後の展望はいかがですか。
坂井) まず1つは、いま申しましたように、日本の社会の安心・安全のためにも、この事業を継続しなければならないと思っていますし、お客様に「より良い製品を適正な価格で」ご提供できるよう努力していきたいと思っています。そして2つ目は、海外展開ですね。アメリカなどの競合メーカーと競争していくために、より高付加価値の製品、市場が求める製品を提供していきたいです。こうして「小さな優良企業」を実践してまいります。
当社がなければ国内の供給元がなくなってしまうという、文字通り社会を支える会社です。同社の発展に引き続き注目です!
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