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知恵の経営、元気印、経営革新、チャレンジ・バイの各認定等を受けた府内中小企業を紹介するページです。
(2023年6月4日ものづくり振興課 足利・中尾・町野)
株式会社京都科学(京都市伏見区)(外部リンク)販売促進部の中江部長、影山課長にお話をお聞きしました。
1948年に株式会社島津製作所の標本部を継承し、京都科学標本株式会社を設立したのが始まり。物理・化学は島津製作所が、生物・地学は当社へという考えがあったそうです。今年75周年を迎える同社の現在の主力事業の1つは、医学・看護・介護教育用実習シミュレータの開発製造です。
例えば、症例によって異なる特徴を忠実に再現できる心臓病患者シミュレータや、妊娠期に応じた妊婦腹部触診シミュレータをはじめ、そのアイテム数は計り知れません。
こうした各種症状を想定したものはもちろん、注射など痛みを伴うケース、生殖器まわりなどプライベートな箇所に関するケース、あるいは乳児など反応がわかりにくいケースは、実際の人間で練習することが困難ですから、シミュレータが存在意義を大いに発揮するところです。
例えば赤ちゃんのモデル。まるで玩具のようなかわいらしさがありますが、玩具と違って、骨格や重さ、肌触りなどをリアルに再現しているところが特徴です。
そのリアルさを「人体の中」まで追求したのが「ファントム」と呼ぶモデルです。例えば救急搬送された患者さんで、外傷では分からない腹部の中を診断するための超音波診断トレーニングやCT撮影トレーニングなどに用いられるものです。
例えば、気管支もすごく細かなところまで精密に再現されているからこそ、様々なシミュレーションが可能となっています。
国内で既に相当なシェアを占める同社。輸入品も流通していますが、お医者さん曰はく「粗いものが多い」とのことで、同社のきめ細かな製品が求められるそう。それ故、海外も60か国以上に展開されています。
しかし、これだけアイテム数が多い整品を精密に生産するのは大変では?
「だから全て京都で作っています」という影山課長。大量生産用の金型、小ロット多品種対応のための樹脂型の製造、自律ロボットや3Dプリンターを活用した生産方法の研究など、様々なノウハウの結晶が支えているのです。
さらに近年は、材料開発も大手材料メーカーとのオープンイノベーションで進めておられます。「小ロット多品種なので、普通は大手企業が相手にする市場ではないと思いますが、社会的な貢献のためにご協力をくださっている」とのこと。
近年の医療現場の変化も、追い風になっています。医療が複雑になるにつれて、輸入品をはじめ、医師にとって不慣れな医療機器が増えているため、シミュレーションのニーズが高まっているのです。
さらに「コロナは教育現場に大きな変化をもたらした」と言います。コロナで、医療現場や介護現場に実習に行くことが困難になったのです。その点では、こうしたシミュレータのニーズは高まっています。しかし、教育現場にとっては、こうしたハードの導入はコストがかかります。
そこで、注目されているのが、AR/VRなどのデジタル技術です。既存のハードにXR技術を組み込むことで、低コストでより多くの、よりリアルなシミュレーション実習を可能とする新しい仕組みの構築にも現在着手されておられます。
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