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共進電機株式会社(京都企業紹介)

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高効率太陽電池の高速・高精度検査システム「KOPEL」

(掲載日:平成28年7月13日、聞き手・文:ものづくり振興課 足利)


(太陽電池セル検査システム(左)と太陽電池モジュール検査システム)

 平成27年度元気印企業、共進電機株式会社(外部リンク)(京都市下京区)の小島社長にお話をおうかがいしました。

世界的電機メーカーのブラウン管検査ライン全てを担う

まず、事業の概要を教えてください。

小島) 太陽電池セル特性検査システム、燃料電離検査ユニットなどの創エネ・蓄エネ・省エネ関連機器、高圧電源パック、電気集塵機用高圧電源盤などの高電圧・高周波電源装置、自動制御装置・自動検査装置といった産業用電子・電機設備を一品ごとに開発・製作しています。強みや独自技術ということでは、ブラウン管の製造・検査装置の開発、立ち上げなどの長年の経験によって培われたアナログ精密計測技術、高精度の高電圧・高周波電源制御技術などは、高く評価いただいています。


(高圧電源ユニットと東京湾海底トンネル高圧電源盤)

―ブラウン管ですか。

小島) 当社は1948年(昭和23年)にモーターの修理販売で創業しました。そして、創業4年目にして、当時の“最先端機器”である白黒テレビの開発に携わることでき、松下電器(現パナソニック)関連企業様に指導をいただきながら、ブラウン管特性検査台の開発に成功しました。松下電器様のブラウン管の検査ラインの全てを担うに至り、当時は当社担当者のデスクも置かれていました。ハードルの高いミッションに一日で対応し、先方に「感動した」と言っていただけたこともありました。海外の厳しい環境下でさえも、トラブルに速やかに的確に対応してきた積み重ねで、高電圧高周波の環境下での豊富なノウハウを有していたからだと思います。ブラウン管で培われた技術は、薄型テレビの基幹部品であるプラズマディスプレーパネルの製造工程にも活かされ、世界オンリーワンの特殊装置を提供しています。

―すごいですね。

小島) また、高速道路トンネルの照明に使われていたオレンジ色のナトリウムランプを決定するための性能試験装置も開発しました。その後、高度成長で全国に広がる高速道路網の長いトンネルに設備された電気集塵機の約半数には、当社の高電圧電源盤が投入されています。近くですと、名神高速の天王山トンネルでも活躍しています。

第二創業― 2つの「KOPEL」

―近年、更に新しい試みをされてらっしゃいますね。

小島) 2008年に創業60周年を迎え、「第二創業」の取り組みを開始しました。2018年の創業70周年には完成したいと思っています。

―それが「KOPEL」ですね。もともとは顧客ニーズに合わせたものづくりを進めるビジネスツールのことでしたね。

小島) 当社は創業以来60年以上にわたり、一品ごとお客さんのご要望を形にする事業をしてきました。京都商工会議所が提唱される「知恵ビジネス」を意識したとき、最も特徴ある強みは“お客様と一緒に取り組むことが自然にできる”ことに気づきました。その強みをしっかりと当社のブランドにしようと考えました。
 従来、メモや仕様書、あるいは口頭で伝えられることが多い顧客からの要望を、2次元や3次元のカラー図面で"見える化"し、具体的なイメージで提案を数回繰り返すことで、ものづくりの源流において顧客の思いをしっかりと受けとめるシステムです。それまでは製品が出来上がってから「もっとここはこうしてほしかった」というような話が出たりと、ミスマッチが発生することもありましたが、イメージ図を作成して共有することで、顧客と作り手の意思疎通をスムーズにし、顧客の思いを実現できてとても好評ですし、当社も生産の効率化やスピードアップが図れるというものです。

―ところが「KOPEL」が更に進化を遂げてらっしゃいますね。

小島) 当社の太陽電池検査装置のブランド名になってきました。「第二創業」の推進を考えた時に、やはり人類共通の課題である地球温暖化問題への貢献というのが頭にありました。そんな中で、某大手太陽電池メーカーから検査工程の相談を受けたのです。太陽電池セルに疑似太陽光をあて発生する電気の電圧と電流を接触針にて測定するのですが、薄いセルが割れたり、測定結果が正確でないなどの問題がありました。私自身がDIYショップで材料を調達し、会社の机でコツコツと接触する治具を試作しました。アナログ計測の技術は持っているので、後は検査に使う擬似太陽光線の影をいかに最小にするかが課題でした。試行錯誤を繰り返し太陽電池の電極の幅より薄い、厚さ0.5mmのプローブバーを開発しました。ここから「新エネルギー」のフラッグを立て、営業担当者が様々な太陽電池検査装置等の開発受注をつかまえてきたのです。


(右は世界最薄プローブバー)

温度、光、電気を精密制御!高効率太陽電池も高速・高精度で検査できる「KOPEL」

―太陽電池検査装置ブランド「KOPEL」の特長は?

小島) 革新的な太陽電池検査システムでして、今後主流となる高効率太陽電池の発電性能を高速・高精度でテスト可能なのです。

 

―どういうことですか?

小島) 「温度」「光」「電気」という太陽電池測定の三大要素を精密に制御することにより、正確で安定した測定を提供するもので、まず、「温度」制御は、被測定セルとプレートの温度管理をすることで、国際規格で規定された25℃の測定環境を守ります。通常定常光ないしロングパルス光(300ms~1000ms)の照射では温度上昇を抑えることは難しいのですが、KOPELでは10ms~50msでのパルス光源の短い照射により温度上昇を抑えています。

―なるほど。

小島) 次に「光」の安定性ですが、一般的な定常光のショートアーク・キセノンランプでは、アークの揺らぎ、電源のリップルノイズなどの影響で、±0.5%前後の誤差が出ます。KOPELでは、専用の電源と制御系の新規開発により、変動誤差を±0.1%までに狭小化することに成功しました。これによりパルス発光は、50msの単一パルス、あるいは2段階、3段階のパルスとすることが可能です。量産時のクラス分けでは、0.2%前後の精度を要求される場合、光の安定度は重要なのです。

kyoshin09

―すごいですね。 

小島) そして「電気」です。当社のI-V計測システムは、まず、バイポーラ電源を内蔵し、4象限動作で太陽電池セルの特性を正確に測定します。

―I-V測定?4象限動作?

小島) I-V測定ですが、太陽電池に電流が流れていない時の電圧を開放電圧と言いまして、太陽光発電の性能を確認するには、開放電圧測定だけでは判断できず、正確に確認するためには、電流電圧特性曲線、すなわち、I-Vカーブを測定することが重要です。カーブで見ると不具合が簡単に確認できますが、開放電圧測定では、ほとんど差が出ないため、発電量が大きく低下しない限り、不具合を見つけるのが難しいのです。加えて、I-V特性から、太陽電池の「変換効率」を求めることができます。太陽電池から最大の電力を取り出すには、電圧と電流の積が最大になる点、「最大出力」で動作させることが必要となります。
 そして4象限とは電圧を縦軸、電流を横軸で区切ったグラフの領域のことで、抵抗などの場合であれば、電圧と電流が比例するため、第1、3象限のみのグラフになりますが、太陽電池などでは、電力を供給するだけでなく、第2、4象限での電力を吸収するような動作もありますから、精密な測定をするために4象限全てで出力可能な自社開発の高速バイポーラ電源(電力増幅器)を搭載しています。

―なるほど。そして、そのI-V測定について、どんな特徴があるのでしょう?

小島) まず、定常光タイプや一般的なフラッシュタイプのシステムと異なり、当社のパルス光タイプは光源が十分に安定しているので、補正も調整も不要です。そしてこのハード技術の下で、静電容量の高いセルやモジュールでも高精度・高速測定を可能としたのが、最新技術PDA(Photo and Dark Anylysis、特許出願中)です。従来の結晶型セルの場合は、光の変化に速く応答するため、従来1~10ms程度の短いパルス光で測定されてきました。これに対して、一般的な高効率の太陽電池は複雑な構造を持ち、静電容量が高いことから、ショートパルスでは正確な特性を測定できませんでした。しかし、定常光ないしはロングパルス光(600-800ms)で計測する場合、太陽電池の温度上昇や光の変動を考慮する必要があり、太陽電池の正確な特性評価が難しいのです。また、長時間光を照射するにはさらなる設備コストがかかることも太陽電池業界の問題として、世界で認識されています。そんな中、静電容量の高いセルやモジュールでも高精度・高速測定を可能としたのです。

―どういう原理ですか?

小島) 光を当てずI-V測定するダーク測定(ダイオード特性測定)という手法で太陽電池の癖を正確に測定した後、50msのショートパルスの光照射で発電量を測定します。この2段階の測定を組み合わせることで、短時間照射でありながら高精度測定を実現するもので、国内、海外7か国に特許出願を済ませています。この新測定技術を”KOPEL Method”と名付けました。

 

オンリーワンの技術を京都から世界へ

―今後の展開はいかがでしょう?

小島)最先端の技術を世界に認めてもらうために、2014年から継続的に世界の太陽電池学会に論文発表し、併設展示会に出展してきました。また同じ年に神奈川県相模原市に「東京テクニカルセンター」を開設し、太陽電池のデモ計測も可能となり、羽田空港からも1時間という便利なところでもあり、国内はもとより海外からも利用いただいています。周囲には東京の大手電機メーカーの下請企業も多く、新しいコラボレーションも生まれています。
 「オンリーワンの技術を京都から世界へ」をスローガンに、太陽電池、燃料電池、マイクログリッド等に関連する機器の開発を中心に、海外展開も積極的に進めてまいります。

 

同社の今後の展開にますます目が離せませんね!

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