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株式会社京マシナリー(京都企業紹介)

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分野をまたぐ開発提案企業

(掲載日:平成29年1月4日、聞き手・文:ものづくり振興課 足利)


株式会社京マシナリー(外部リンク)(宇治市)の入江代表取締役様、角野営業部長様にお話を伺いました。

ガラス基板加工装置のスペシャリスト

―企業の概要について教えてください。

入江) 以前に私が勤めていたガラス基板加工装置に関する会社が廃業したことに伴って、それまでに納入した装置のメンテナンスを受ける窓口が無くなるとお客様がお困りになると考えたことから、当時の同僚と共に2014年1月に創業しました。当社では主に液晶パネルやタッチパネル等に用いられるガラス基板の加工装置を現場に合わせてカスタマイズを行う設計製造を主な事業としています。最近では、こうした受託製造だけでなく自社商品として樹脂溶接装置や赤さび除去剤などの製造販売にも取り組みを進めています。

 

ガラス基板の加工装置とのことですが、具体的にはどのようなものがあるのでしょうか?

入江) 一般に液晶パネルやタッチパネルには厚みが0.3~0.5mm程度の合わせガラスの基板が用いられていますが、最初からその様な厚みのものがあるわけではありません。その製造工程を簡単に言えば、厚みが1.0mm程度の合わせガラスを所定の0.3~0.5mmの厚みとなるまで酸で溶かすエッチング工程、溶けムラによる厚み調整を行う研磨工程、そして加工途中で付着した酸や研磨剤を除去する洗浄工程を経ることで作られています。当社では、これらの三つの工程で使用されるエッチング装置・洗浄装置・研磨機についてお客様のニーズを汲み取った設計を行い、納入しています。

洗浄技術と分野を跨いだ設計力が強み

主な顧客はどのような企業様がいらっしゃるのですか?

入江) 当社の製品については関東・関西の多くの事業者様に導入頂いております。

御社が選ばれる理由についてはどのようにお考えでしょうか?

入江) 当社の従業員は7名と人数は少ないものの、その大半が長年洗浄装置に関わってきた経験を持つことから、その豊富な知見が選ばれる理由の一つになっているのではないでしょうか。また、機械・化学・電子設計に関する優れた技術者が所属しており、お客様の細かなオーダーにも応えることの出来る設計力があるために重用して頂いているものと考えています。

強酸を使用する特殊な装置ですが、設計時にご苦労される部分はあるのでしょうか?

入江) 色々とありますね。特に、エッチング装置については大量の酸を使用することから漏出が起きた場合には工場の周辺機器や建屋に大きく影響してしまいます。このことから設計の段階で漏出対策が必要となるのですが、漏出対策を過剰にし過ぎると後々のメンテナンス性を犠牲にしてしまうため、双方のバランスをとった設計を行う必要があり、この点は最もノウハウが求められる箇所と言えます。また、強酸を扱うために装置の大部分が酸に強い樹脂素材で出来ており、部材同士の接合には樹脂溶接を行うことから組み立て段階においても相当の熟練が必要となります。

熟練の要らない自動化樹脂溶接機の開発

―液晶業界は変動の大きなイメージがありますが御社への影響はいかがでしょうか?

入江) そうですね。液晶パネルの黎明期においては国内での製造も盛んで装置需要も高かったのですが、近年の海外生産の流れを受けて液晶の国内生産量も縮小したため、当社のような大型ガラス基板のウェット装置等の設計・製造を行う企業も国内で10社程度にまで減少しています。このことから、将来的な需要減少を見据えて、当社ではガラス基板加工装置の設計・製造を行う中で得たノウハウと設計力を活かして、新たな分野への進出に向けた取り組みを始めています。

―新たな取り組みとは具体的にはどのようなものでしょうか?

入江) さきほども申しましたが、エッチング装置には樹脂素材が多く使用されており、その部材接合には樹脂溶接を行っています。しかしながら、樹脂溶接は密着性や仕上がりが一定のレベルに到達するまでに長い時間を掛けて作業者が熟練する必要があり、たとえ熟練者であっても溶接距離が長くなると品質を保つことが非常に難しいことが問題となっていました。このことから、作業者の熟練度に左右されない安定した品質の樹脂溶接を可能にすることはできないかと考え、社内で検討を重ねた結果、自動化した樹脂溶接装置を新たに開発しました。樹脂溶接は当社のガラス基板加工装置だけでなく、樹脂を部材とする他の産業機械にも広く使用されていることから広くニーズがあるものと考えており、今後バージョンアップを重ねながら展開を進めていきたいと思います。

赤さび除去剤「フランシスコサビトル」

ほかの取り組みについてはいかがでしょうか?

角野) その他には、赤さび除去剤「フランシスコサビトル」の開発・製造・販売も手掛けています。

 

赤さび除去剤ですか?御社の事業とはあまり関係しないようにも感じられますが。

角野) そうでもありません。当社は納入した事業者様に訪問してメンテナンスも行うのですが、強酸を使う現場であるために工具類がすぐに錆びてしまうので何とかならないかとのご相談を頂きました。その現場では工具を塩酸に漬けることで赤さびを除去されていたのですが、揮発した酸による作業者への影響が懸念されることや使用後の廃液の問題があり大変お困りのご様子でした。このことから、社内で人体に優しく環境にも負荷が少ないことを要件とするさび除去剤について検討を重ねたところ、食品添加物を主成分とする赤さび除去剤「フランシスコサビトル」の開発に成功しました。赤さびの除去も素材表面を仕上げると言う点で、ガラス基板の洗浄技術にも通じるものがありましたので開発期間も1年程度に抑えることが出来ました。現在、ご相談頂いた事業者様にもお使い頂いていますが好評を頂いています。

―なるほど

角野) この「フランシスコサビトル」には大きく3つの特徴があり、(1)機械と人に優しい (2)既存品に対してコストが安い (3)下水に流すことが出来環境にも優しい、といったことが挙げられます。これらの特徴を活かして、今後は産業用途だけでなくご家庭向けにも販路を拡大していきたいと考えています。

自動化や省エネをキーワードに新たな製品開発を!

―今後の展開について、教えてください。

入江) 当社には分野ごとのエキスパートが揃っており、それぞれの得意分野を組み合わせ、工夫を重ねることで新商品の開発に成功しています。この設計開発力を活かして、自動化や省エネをキーワードに新たな製品開発を行って行きたいと考えています。また、近頃は医療分野からもご相談を受けることが多くなっておりますので、この分野でも当社ならではのオリジナリティのある装置・製品を作っていきたいと思っています。

 

分野を超えた設計開発力で展開を続ける同社の今後が楽しみです!

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