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知恵の経営、元気印、経営革新、チャレンジ・バイの各認定等を受けた府内中小企業を紹介するページです。
(掲載日:平成28年5月9日、聞き手・文:ものづくり振興課 足利)
平成27年度知恵の経営の株式会社近畿レントゲン工業社の勝部社長にお話をおうかがいしました。
―どんな製品を製造されてらっしゃるのですか?
勝部) まず、歯科・耳鼻科用のX線CT、ポータブルレントゲンなど、医療用のX線装置を製造しています。例えば当社製品「KR-X SCAN」は、都市部の歯科医院様などに配慮した軽量・コンパクト設計により、室内寸150cm×150cm以上の撮影室であれば設置可能であるなど、業界最小クラスの撮影室スペースを実現しました。
―なるほど。
勝部) 次に、工業用では非破壊検査装置、各種X線発生装置等を製造しています。また真珠貝用X線脱核検査装置を作っている唯一の会社です。また、連続照射に比べてより低被爆のパルス照射X線発生装置も開発しており、任意のスピードでX線をON/OFF可能な歯科では国内メーカー初の装置として展開予定です。
パルス照射X線発生装置とパルス照射波形
―医療用、工業用と幅広く対応されてらっしゃるのですね。
勝部) 両方に対応しているところは珍しいです。まず、歯科用であれば、管電圧にしても80kV前後とだいたい幅が決まっているのですが、工業用になると用途に応じて様々です。溶接箇所などのインフラ検査向けでは高電圧が必要ですし、食品異物混入対策、半導体製造工程の検査等向けでは低電圧です。
―他には?
勝部) 開発の仕方、市場へのアプローチも全く異なります。医療用では業界ルール的なものを理解しながら自社で企画開発を進めていきます。一方、工業用の場合は、顧客の求めに応じて開発を進めていきます。
工業用製品の数々
―そういうことに対応するためには、人材育成が重要ですね。
勝部) そうですね。創業して以来、ブラウン管やIC制御の登場など様々な外部環境の変化に応じ、柔軟に対応し、技術力も向上させてきました。危機を乗り越える中で、人材が育成され、できないことができるようになった、というのが正直なところです。特に、X線発生装置を自社設計、自社製造できるメーカーは大変珍しく、当社のこだわりです。
―X線発生装置ですか。
勝部) レントゲン装置やX線非破壊検査装置などの心臓部には、X線発生装置が必ず組み込まれています。X線管に高圧を供給する電源部と制御部からなっていますが、簡単に言いますと、X線管内部には陽極、陰極と呼ばれる2つの電極がありまして、エジソンが白熱電球の研究で発見した熱電子放出の現象と同様に、陰極に繋いだフィラメントの両端に電位差を与えることにより、約2000℃まで加熱されたフィラメントから、そのエネルギーにより電子が飛び出します。それを陽極表面にあるターゲットに高速で電子を衝突させると、ターゲットからX線が発生するというものです。発生するX線の制御、発生する熱その他にも配慮した設計など、高度なノウハウが必要です。カスタマイズ製品、OEM製品の場合であっても、X線発生装置は自社製品を組み込んでいます。
―今回、「知恵の経営」に取り組んでいただきましたね。
勝部) 医療用から工業用まで大変幅広く、また、自社設計・製造など多岐に亘る技術ノウハウを有しているため、一度これらを整理してみようということで、「知恵の経営」に取り組んでみました。私自身も頭が整理できましたし、社員にとっても当社の全体像が整理され、大変良かったです。
―ありがとうございます。今後の展開はいかがでしょう?
勝部) 当社の得意な軽量・コンパクト設計力を活かした製品については、都市部のお医者様等への提案を増やしていきたいですね。また、ASEANへの展開も勧めていきたいです。
日本のものづくり力をおおいに展開していただけること、大変楽しみです。
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