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株式会社H&C技術研究所(京都企業紹介)

 知恵の経営元気印経営革新チャレンジ・バイの各認定等を受けた府内中小企業を紹介するページです。

アレルゲン・臭気の除去技術はH&C 吸引ブラシシリーズ

平成30年度チャレンジ・バイ認定の株式会社H&C技術研究所(精華町)代表取締役 田原修様にお話しをお伺いしました。

(掲載日 平成31年2月20日 聞き手・文:ものづくり振興課 宮﨑)

 

大手分析メーカーで培った技術を活かし、快適な生活環境を提供

まずは御社の概要を教えてください。

当社は、私が島津製作所を定年退職した際に、今まで培ってきた空気清浄機や分析機器の開発技術を活かそうと平成18年に創業した企業であり、現在は私1人で運営しています。
「人と社会の健康的な空気環境形成のために」を理念として、健康的で快適な生活環境の提供を目指して活動しており、長年培った光触媒による空気清浄技術をベースに、「殺菌」「脱臭」「集塵」の要素技術の応用開発から、それを用いた「吸引ブラシ」などの健康機器や、「エコハニカム炭」などの機能性材料の研究開発・製造販売までを一貫して事業化しています。

 
「エコハニカム炭」とは何ですか?

冷蔵庫や台所などの狭い空間の脱臭に役立つ脱臭剤です。大きな面積を有するハニカム構造(蜂の巣状)の活性炭の表面に独自技術で光触媒をコーテイングしており、太陽光に照らせば繰り返し使えるエコ製品です。この製品は、平成24年に京都産業エコ推進機構(現(一社)京都産業エコ・エネルギー推進機構)から京都エコスタイル製品に認定していただき、平成26年には(公財)日本発明振興協会関西支部から、「考案賞」をいただきました。

画像:エコハニカム炭

 

大学などの研究機関とも共同研究されているのですね。

京都府立大学生命環境科学研究科と共同で、ダチョウの卵を利用した花粉抗体フィルターの開発を行い、このフィルターに付着した花粉などのアレルゲンを分解・不活性化する技術の開発に成功しました。この技術は、今回紹介の吸引ブラシシリーズでも使用しており、アレルゲン吸引ブラシは、平成23年に(公財)日本発明振興協会関西支部から「優秀発明賞」、平成27年の「第10回中小企業総合展in Kansai」において「ベスト H!NT賞」を受賞しました。
他にも、鳥取大学鳥由来人獣共通感染症疫学研究センターと、空気清浄機における鳥インフルエンザウイルス不活性化技術の共同研究を行ったこともあります。

 
御社の技術力の高さを表すエピソードですね。販売体制はどのように構築されているのですか。

国内では、アレルゲン吸引ブラシは数社の大手家電量販店でお買い求めいただけるほか、カタログ通販にも展開しています。また、海外展開にも力を入れており、香港や台湾、インドなどへも製品を提供しています。

 
今回ご紹介いただきます、吸引ブラシシリーズを開発されたきっかけは何ですか。

当社を創業した際、島津製作所から空気清浄機事業の譲渡を受けており、現在も空気清浄機の製造・アフターサービスをしています。
ただ、空気清浄機は既に競合が激しく、当社ブランドではなかなか販売数を伸ばすことができませんので、現在はアフターサービスだけを行っています。

 
そうなのですね。

その様な中で、今まで培ってきた空気清浄機の技術を活かし、何かオンリーワンとなるものを開発しようと考えました。毎年初春の花粉シーズンには、我が国の風土病とも云うべき花粉症に多くの方々が苦しんでおり、花粉症患者は年々増加傾向にある中で、その対策のニーズは高まるばかりです。
花粉を家の中に持ち込まないために、帰宅時に衣服に付いた花粉を払い落とすことが専門医から推奨されていましたが、これでは花粉が周囲に撒き散り、吸い込んだり、衣服に再付着するので、花粉症患者には辛い状態になっていることに着目しました。
この状態を空気清浄機開発で培った集塵技術を活用すれば、課題解決することができると考えました。そして、ブラシにハンディな空気清浄機能を装着すれば、花粉を周囲に撒き散らさずに除去できる電動ブラシができるのではないかと思いつきました。

 

 

払い落とすと花粉が舞い散る矢印
(払い落とすと花粉が舞い散る)
吸引ブラシで花粉を除去
(吸引ブラシで花粉を除去)
内蔵のフィルターで花粉を捕集
(内臓のフィルターで花粉を捕集)

 

吸引ブラシ
(吸引ブラシ)
収納に便利なスタンド式
(収納に便利なスタンド式)

 

そして開発されたのが、吸引ブラシシリーズなのですね

はい。最初の吸引ブラシは花粉だけを除去対象に考えていたので、スギ花粉やヒノキ花粉が飛散する時期しか売れない季節製品でした。その後、PM2.5、ダニ、ペットの毛、業務用の異物などの除去に対応する吸引ブラシを開発し、用途毎に専用化したシリーズ化製品にしたことによって、現在では1年間を通して売れる通年製品となりました。

 

軽くて小さくどこでも使える、吸引ブラシシリーズ

今回開発された吸引ブラシシリーズは、どのような製品なのでしょうか。

当社では、お客様の多様なご要望に応えて、吸引ブラシシリーズとして6つの製品をラインナップしており、乾電池式の「花粉PM2.5吸引ブラシ」、「ダニアレルゲン吸引ブラシ」、「ペットお手入れ吸引ブラシ」、電気コード式の「花粉PM2.5吸引ブラシ (強力型)」、「異物吸引ブラシ(業務用)」、充電池式の「充電式アレルゲン吸引ブラシ」をご用意しています。

 

衣服の花粉、pm2.5、ホコリ除去
(衣服の花粉・PM2.5・ホコリ除去)
布団のダニ・花粉・ホコリ除去
(布団のダニ・花粉・ホコリ除去)
ペットのホコリ・抜毛除去
(ペットのホコリ・抜毛除去)

 

吸引ブラシはどのような特徴がありますか。

この吸引ブラシシリーズ共通の特徴は、衣服、洗濯物、布団、シーツなどの繊維表面に付着した花粉、PM2.5、ダニ・ハウスダストなどのアレルゲン微粒子を、ブラッシングするだけで除去できることです。ブラッシングすることにより、まずアレルゲンをブラシで弾き出し、次に内蔵のファンでアレルゲンを吸引し、 最後に内臓の高性能フィルターで99.9%以上捕集します。
したがって、洋服ブラシのようにアレルゲン微粒子を周囲に撒き散らすこともなく、また、毛髪や糸くずなどは、ブラシに絡ませて擦り取りことができます。

 
素晴らしい機能ですね!

また、小型で軽量であることもシリーズ共通の大きな特徴です。布団などのアレルゲン除去に使われる、一般的な掃除機タイプのクリーナーの重さが2kg~3kgであるのに対して、吸引ブラシは約300gという軽さを実現しています。ご高齢の方の中には、軽くて扱いやすいことを理由に掃除機タイプから吸引ブラシに買い替える方も多数おられます。

 
たくさんのタイプがありますが、おすすめの機能や特色を教えてください。

その外の特徴的な機能は、充電式アレルゲン吸引ブラシとダニアレルゲン吸引ブラシに搭載されている生ダニ除去機能です。生きたダニは外圧が加わると素早く防御作用が働き、繊維に隠れたりしがみつく習性があり、従来の掃除機タイプのクリーナーでは強力な吸引力だけでの除去が難しいものでした。

 
そうなのですね。

しかし、この2つの吸引ブラシでは、ブラッシングにより生ダニを擦り取る機能も加わり、1回のブラッシングで95%以上の除去率を得ることができます。また、内蔵しているダニフィルターは、捕集したアレルゲンの不活性化や生ダニの増殖抑制機能も備えていますので、安心してお使いいただけます。したがって、これらの吸引ブラシは、ダニアレルギーや小児喘息などの予防に役立つことが期待されます。

 

グラフ
1回ブラッシングでダニの95%が除去されました。

(抗アレルゲンフィルター)


さらに、静音性が高いことも特徴です。赤ちゃんが寝ているベビーベットに使用しても、赤ちゃんを起こす心配は少ないです。また、寝たきりの方の布団にも違和感を与えずに使用することができます。

逆境を乗り越え、ヒット商品へ

開発秘話などや苦労した点はありますか。

最初の花粉吸引ブラシの試作は、製品デザインも信頼できるデザイナーに依頼し、経験上手慣れた手法で試作品を製作することができ、各種試験評価した結果は予想通りの良好な結果を得ることができました。しかし、問題はその後でした。

 
後ですか。

最初の課題は、アイデアだけで試作しても、販路も無ければ、製品化のキッカケも見出せず、悶々とする日が続きました。
第二の課題は、花粉吸引ブラシは花粉飛散シーズンである2月~4月しか売れず、また、毎年変動する花粉飛散量によって販売数が大きく左右される完全な季節製品なので経営的に安定せず、どうしても通年製品にする必要がありました。

 
どのようにその現状を打破されたのですか。

最初の転機となったのは、(公財)京都産業21からモノづくりの展示会に招いてもらったことです。そこで、幸運にも大阪の中堅商社の目にとまり、大手カタログ通販に採用が決まったことから直ぐに量産体制を整備するよう要請されました。
そこで短期間での金型造りや量産ラインの整備など大変でしたが、何とか納期に間に合いました。これが現在の発展の礎になり、多くの“縁”の大切さを再認識しました。
第二の課題は、「このような機能が付加できないか、このようなモノができれば嬉しいが」、というお客様からの要望を素直に聞き入れて、各種の吸引ブラシを水平展開してシリーズ化開発した結果、一昨年から香港でダニアレルゲン吸引ブラシが多く売れるようになり、トータルで4万台以上を生産することになりました。

 
すごい数ですね。でもなぜ香港なのですか。

はい、香港は温暖で高層マンションが多いことから日本以上にダニ対策が求められており、小型軽量の吸引ブラシが香港のニーズにマッチしたと考えられます。現在は、日本の大手家電量販店でも販売していますが、中国、香港、台湾からの観光客の方々が当社の製品を指名買いすることも多いと聞いています。また、海外展開で生産量が急激に増加したので、繁忙期には人材派遣を受け入れたりしています。

 

新たな異物処理の方法を提案

最後に、今後の展望や思いをお聞かせください。

はい。今後は一般家庭用途だけでなく、事業者向けの製品を伸ばしていこうと考えています。衛生的な環境の配慮が必要な、食品工場や医薬品工場、電子工場、塗装工場、バイオ工場などの事業者におすすめしたい機能が異物吸引ブラシの異物対策機能です。

 
異物対策ですか。

はい。これまでは、異物対策には、数十万円以上もする高価な専用の異物除去装置を用いるか、安価な粘着ローラーで異物を取り除くしかない状況でした。しかし、この異物吸引ブラシなら、異物除去装置よりも格段に安く、粘着ローラーでは取れない繊維間の微粒子も効果的に除去することができます。したがって、粘着ローラーの代替となる新しい高性能な異物対策手法として新提案しています。

食品工場の使用例
(食品工場の使用例)

(繊維生地に花粉を添着)

矢印
(1回のブラッシングで除去)

 

価格は12,000円(税抜)であり、小型軽量で使い勝手も良いので、粘着ローラーに疑問を抱かれている現場作業者にとってはお手頃であると考えています。
今後は、この新たな市場へ吸引ブラシを投入して、各種業界の安全・安心に役立つように頑張りたいと思います。

 
今後の展開が楽しみですね!

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商工労働観光部産業振興課

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