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知恵の経営、元気印、経営革新、チャレンジ・バイの各認定等を受けた府内中小企業等を紹介するページです。
(掲載日:平成31年3月25日、聞き手・文:ものづくり振興課 足立)
株式会社バイオーム(外部リンク)(京都市下京区)の藤木代表取締役にお話をお伺いしました。
-京都大学発のベンチャー企業として注目度も高いですが、起業のきっかけは何だったのでしょうか。
藤木)大学院時代に樹木の調査で、インドネシアのボルネオ島のジャングルで2年以上キャンプ生活を送っていたとき、転機が訪れました。
生物の棲みかとして守らなければならない熱帯雨林が、パーム油の生産のために大量伐採されている光景を目の当たりにして、経済のエネルギーの大きさを痛感しました。それから「生物多様性の保全を本当に継続・推進させるには、保全すること自体をビジネスにしない限り不可能なのではないか」と考えるようになりました。
-世界的な社会課題ですが、今までなかったアプローチですよね。
藤木)帰国して、GIS(地理情報システム)と衛星画像解析分野で博士号を取得後、2017年5月に起業しました。
生物分布ビッグデータを集めて環境保全のためのビジネスインフラをつくろうとしています。データを解析することで、保全の効果を見える化することができるようになると考えています。
-たしかに、生き物の分布データや破壊の進度、保全の効果などを測る“ものさし”ってないですね。
藤木)そうなんです。ニーズは多いのに、生き物相手ということもあってこれまで客観的指標がなかった分野でした。しかしこれは、たくさんの生物分布情報と最新の解析技術を使えば可能になります。
環境への配慮や影響を科学的に証明できる国際的なプラットフォームをつくって、環境ビジネスを円滑にすることで、効果的で持続的に環境保全を推進していく社会をつくりたいと思っています。
-自然環境の破壊や種の絶滅がこのままのペースで進むとどうなってしまうんでしょうか。
藤木)個人的には、いずれ地球システムが限界を迎えて、人類の生活インフラとしての「地球」が機能しなくなってしまうのではないかと考えています…。
-この世界的な緊急課題は「SDGs(※1)」のターゲットにもなっていますよね。
藤木)国連主導のSDGsの市場規模は年間250兆円、ESG投資(※2)の運用資産2500兆円以上とも言われていて、グローバル企業は環境問題に真摯に取り組むことを益々求められる時代になっていくと思います。
(※1)SDGs(SustainableDevelopmentGoals)
2015年9月の国連サミットで採択されたもので、国連加盟193か国が2016年~2030年の15年間で達成するために掲げた国際社会共通の目標。
(※2)ESG(Environment,Social,Governance)投資
環境(environment)、社会(social)、企業統治(governance)に配慮している企業を重視・選別して行う投資
-なるほど。そこでまずは、たくさんの分布情報を集める『いきものアプリ』をリリースしたんですね。
藤木)『いきものアプリ』は、出会った生き物の写真をアップすることで、画像や、場所、季節などの情報をAI解析により国内6万種以上の生き物の名前を判別して、ゲーム感覚でコレクションできるアプリです。どこに、どんな生物が、どれだけ生息しているか、生態系を脅かす生物がどれだけ侵入しているかなどのビッグデータが、すでに集まり始めています。
-それは面白いですね!類似のアプリにはない何か特徴があるんでしょうか。
藤木)そうですね。
こういったアプリユーザーからの情報だけでなく大学など研究機関が保有する生物情報も網羅した圧倒的なデータベースをバックグラウンドに使って、生態学の考え方をふんだんに盛り込んだ独自のアルゴリズムを組み込んでいます。これによって網羅的な生物の名前を判定をすることができます。
コレクションだけでなく、希少性を競うゲームができたり、SNS対応によりコレクター同士でトークできたりと、ユーザーのニーズに合わせて飽きさせない仕掛けもありますね。
-相互コミュニケーション機能を付けて、どんどんユーザーの輪を広げていくんですね。
藤木)それだけではないんですよ。
「いきもの」の情報はバーチャルでなく確かに実在するわけですから、実際に見たり触れたり機会をつくるきっかけづくりにも使えます。
-たとえば、どんな場面でしょうか。
藤木)珍しい生き物や棲みかが資源となる観光地のイベントでは、このアプリを集客ツールとして使いたいという声を多く頂いています。来場者にこのアプリを使って名前を判別してもらい、その生き物と実際に触れてもらう、深く知ってもらう、環境保全の啓発効果もあります。すでに、複数の自治体のオファーを受けてコラボを企画しています。
-PRに苦慮している観光地にはぜひ使って欲しいですね。たくさんの生物情報と解析技術を使えば他にもニーズが広がりそうですよね。
藤木)そうですね。
たとえば、獣害に苦しむ農家さんが効果的な駆除を行うための獣害予測システムや、動物の移動情報や樹木の3Ⅾモデリングなどから、収穫量や漁獲量の予測・管理システムを構築して農林水産業に役立てたいです。
調査に莫大な時間やコストをかけていた環境アセスメントも、このプラットフォームを活用すれば今までのコストを大幅にカットできると思っています。
-あるようでなかった生物情報のプラットフォームは活用の幅が広いですね。
藤木)将来的には、世界規模の環境市場のトレンドに合わせて環境保全のための情報プラットフォームを形成すべく、まずは生物情報保有数No.1を目指しています。
-事業化には様々な専門知識が必要だと感じますがどのように人材を確保しているのでしょうか。
藤木)弊社は、生態系モデリング、センシング、画像解析など様々な分野の研究者が集結する京大発ベンチャー企業として誕生しました。しかし、社会実装に向けてユーザーのニーズに答えるためには、AI解析や分布予測解析などの更なる技術も必要とするため、他大学との専門家との連携も積極的に進めています。
-それでは、最後に今後の展望についてお聞かせください。
藤木)これからさらに生物名前判定AIの開発体制を強化し,生きものコレクションアプリ「バイオーム」の機能を大幅に拡張します。2019年4月下旬を目標にAndroid版、iOS版アプリをリニューアルして正式リリースしますので楽しみにしていてください!近いうちに世界展開も視野に入れていますので、世界中の生物を楽しんでもらえるようになると思います。これからもバイオームにご注目ください!
-今後もご活躍に期待です!
【会社概要】
◆会社名:株式会社バイオーム
◆代表:藤木庄五郎
◆会社設立:2017年5月31日
◆所在地:京都市下京区中堂寺南町134番地ASTEMビル8
◆事業内容:生物情報アプリ開発・運営、生物情報可視化システムの提供、環境コンサルティング
◆資本金:11,000千円(資本準備金含む)
◆従業員数:12名
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