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知恵の経営、元気印、経営革新、チャレンジ・バイの各認定等を受けた府内中小企業を紹介するページです。
(掲載日:令和元年9月17日、聞き手・文:ものづくり振興課 中島、足利)
バイオロギングソリューション株式会社(外部リンク)(クリエイションコア・京都御車(外部リンク)入居)の最高技術責任者 野田さんにお話をお伺いしました。
―まず、御社の概要について教えてください。
野田) 2014年に、代表取締役の小泉と私とで共同で設立しました、バイオロギングの会社です。バイオロギングってご存知ですか?
―生物に小型のカメラやセンサーを取り付けて、その行動や生態を調査することですね。予習してきました(笑)
野田) 2003年に日本の研究者が名付けた、bio(生物)とlogging(記録)を組み合わせた造語です。来年には7回目の国際バイオロギングシンポジウムも開催され、参加者も既に千人規模です。ちょっとこちらの映像をご覧になりますか。私が南極でペンギンにカメラを取り付け記録した映像です。
―これはすごい!海に潜って他のペンギンたちと泳いだり、氷の上に上がって歩いたり、全てペンギン目線で、とてもおもしろい!
野田) 世界的には1960年代に、南極のアザラシに取り付けたのが最初と言われています。
―そうなのですね。この映像を記録したカメラはどうやって回収したのですか?
野田) 卵を育てている時期でして、卵のところに戻ってくるんですよ。
―なるほど。しかし、逃げないのですか?
野田) ほとんど逃げませんね。おそらく、彼らにしたら人間は見たことがない生き物なので、危険だと思われてないのです。
―へー!!そうなんですか!
野田) こうしたデータロガーも、日本国内においても海外製品が大半です。そこで、せっかく日本で生れたバイオロギングでありますし、日本の最先端の技術を使って、また、私ども自身が研究者でもあり、その知見を用いて、データロガーの製造販売とそのデータ解析支援サービスというハード・ソフト両面のソリューションをご提供し、世界の行動・生態研究分野に貢献するリーディングカンパニーを目指しています。
―素晴らしいですね。まず、御社のデータロガーは、どういった特徴があるのですか?
野田) 小型で低価格、多機能で、長く持つということです。こちらは、世界最小の14チャネルロガーです。わずか、直径8mm、長さ30mm、空中重量3gの大きさに、最大14個の計測項目を同時搭載可能な耐圧・耐水ロガー(水深1,500mまで)です。
―最大14項目?
野田) 深度、温度、3軸加速度、3軸地磁気、3軸ジャイロ、照度、塩分などですね。
―すごいですね。
野田) そして、最大512MBの大容量メモリを搭載し、長期間または高周波での連続計測が可能です。電池サイズにもよりますが、例えば深度・温度ですと10秒に1回の計測で連続1年の計測が可能ですし、3軸加速度を1秒間に8回、深度・温度を1秒に1回という組み合わせでも約1か月の連続計測が可能です。
―そうなのですね。では、解析サービスというのは?御社のお客様は、研究者も多いと思いますが、そういった方々は自ら解析されるのではないのですか?
野田) そうですねえ、例えば、カレイに深度計を取り付けたとしましょうか。カレイは海底を這うように動きますから、海底の深度がある程度分かるわけです。でも、あくまで2Dです。というのは水の中ではGPSが効かないので、位置が分からないんです。
―ほほう。
野田) そこで、潮汐データを組み合わせます。カレイが長時間海底を這っている時は、潮汐変化も同時に記録しますので、潮汐予測モデルと組み合わせますと、位置もある程度推定できて、3Dに近づいてきます。
―なるほど!
野田) 3Dデータにするためには、潮汐だけではなく、衛星からの情報、日の出日の入り情報など、様々な情報を駆使しています。
―どうして御社はこうした特徴的なデータロガーや解析支援サービスを実現できるのですか?
野田) まず、企画・設計、生産管理、組立・モールドまで社内で一貫して対応しています。基板の設計からしています。私自身は農学部のあと情報学研究科におりました。
―なるほど。
野田) それから、先ほども申しましたが、私ども自身も研究者でもあります。小泉もアザラシやウミガメの研究をしてきましたし、サンゴの保護にも情熱を燃やしています。
―アザラシが数分の息継ぎで数十分、数百も海に潜るとか、ウミガメは年100個ほど卵を産むとか、予習してきましたよ(笑)。サンゴについても、動物だとは知ってるもののピンとこなかったですけれど、口があって、造礁サンゴだと石灰質の石を体の下に作る、つまり体がその石を覆うようにくっついているといったことなど、「ああ、そうなのか」と(笑)
野田) そうですか(笑)。私もさきほどお見せしたように、ペンギンや、ウミガメ、クロマグロなど研究をしてきましたし、第54次南極地域観測隊に同行しました。
―それなんですよ!それについてお聞きしたいのです!南極に行ったことがある人に出会ったの、人生で初めてなのです。何人くらいで行くのですか?
野田) 結構、京都にもいますよ。同行された料理人の方が京都で店を出してらっしゃったり。
―そうなんですか!そのお店また後で教えてください。で、南極隊は、何人くらいなのですか?
野田) 私の時で、観測隊員と同行者合わせて97人ですね。うち約半分はそれぞれの観測の方ですが、半分は昭和基地の設営の人ですよ。
―行かれる期間は?
野田) 私の場合は夏の4か月でした。夏というのは、だいたい11月末や12月初旬に出発して、船で1か月、現地で2か月、そして帰りの船で1か月で、3月末に帰ってくるというものです。
―船で1か月もかかるのですか?北半球の日本からとは言え、ちょっとかかり過ぎじゃないですか?
野田) 日本からではなく、オーストラリアからですよ。そこからなら近いようですが、氷をかき分けて進まねばならないから、それくらいかかってしまいますし、近くまで辿り着けないこともあります。その場合はヘリコプターも使って、ということになりますね。
―そうなんですねえ。
野田) 97人のうちの7割ほどは、私同様夏の間の派遣ですが、残り3割程度の方は、そのまま越冬して、翌年の夏隊と一緒に帰ってくるというものです。冬場は帰ってこれないので。
―基地のご飯はおいしいのですか?
野田) 先ほど申しましたような料理人さんもいらっしゃるので、おいしいですよ。ただ、私は、ペンギン調査のため、2か月間のほとんどを、基地から離れたところで3名でキャンプ生活していましたので、ほとんど基地の食事を食べていないのです。なお、船では、自衛隊の船ですので、よく「海軍カレー」を食べましたね(笑)
―南極でキャンプですか?!寒くないのですか?
野田) 夏は、平均気温が0℃前後ですし、しっかり着込んでいるので、体感的には京都の冬の方がむしろ寒いですよ。
―それにしても、すごいことですね!こうした南極のペンギンなど以外でも、バイオロギングは需要があるのですか?
野田) もちろんです。例えば、先ほども言いましたが、食卓にのぼる魚(カレイ、マグロ、ブリ、サケ、サバ、ウナギ)など、いろいろですよ。
―ウナギなどはまだまだその実態がよく分かっていないと聞きますが、そっか、今年もサンマが不漁だと聞きますが、どうしてそういうことになるのか、まだまだ解明できてないことがたくさんあるわけですね。
野田) 海洋生物だけでなく、陸上動物、鳥、昆虫等にももちろん有効で広がっています。あるいは海洋生物だけでなく海洋調査にも有効です。例えば、海の垂直温度分布を図るのに、高額な機材で測定しているのを、生物に付けたセンサーでつかめるわけです。
―データを通信で飛ばすことができれば、そして、多くの生物にセンサーを取り付けられれば、まるでコネクテッドカーならぬコネクテッドバイオの時代になるわけですね。
野田) 漁船にロガーを付けてというようなことも、今後出てくるでしょうね。
―漁船にはソナーがありますよね?
野田) はい。しかし、基本的に画像データなので、温度や塩分など様々なデータをとることができるのは、データロガーです。
―そういうことですね。
野田) 例えば最近では、海鳥にデータロガーを取り付けておけば、風向、風速がおよそ分かり、気象予測にも活用できる、そういう研究も行われています。
―様々な分野で活用が広がっていくのですね。
野田) そうなのです。当社も、現在、事業拡大につき、エンジニア(回路設計および組み込みソフトウェア)を募集しているところです。ご連絡お待ちしております!
大変夢のあるお話!今後の同社の活躍が大変楽しみです!
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