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旭金属工業株式会社(京都企業紹介)

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表面処理をキーに一貫対応―日本を代表する航空器部品サプライヤー

(掲載日:平成28年8月29日、聞き手・文:ものづくり振興課 足利)

 

旭金属工業株式会社(外部リンク)(本社:京都市上京区)の中村専務取締役様にお話をおうかがいしました。

表面処理をキーテクノロジーに、日本を代表する航空機部品サプライヤー

事業と会社の概要から教えてください。

中村) 表面処理をキーテクノロジーとして、加工、検査、塗装、組立など前後工程を含めて一貫対応しています。従業員は約600名、売上は約65億円(2015年)です。航空宇宙関係主体の当社のほか、他産業向けの先端表面処理等を担う部門、特殊表面処理の研究開発部門、省力化・省人化機器部門などを分社化し、グループを形成しています。

  

―大きな会社でらっしゃいますが、上場はしないのですか?

中村) ある時期、真剣に検討し、結論として上場しない選択をしました。

―昭和23年の創業ということですが。

中村) 江戸時代から続いた醤油屋が起源でして、戦後、欧米の斬新な技術が押し寄せる中で、アメリカの電解研磨技術の情報を得た前社長が、醤油工場の隣で電気めっき業を始めました。「従来の職人仕事によるめっきではなく、企業として新しい日本の産業に貢献しよう」という志を持って立ち上がったわけですが、材料、薬品、電気すべてが不足し、材料も不純物の含有が多い時代であり、電解液を正しく作用させるのにも苦労の連続であったそうで、この頃に培われた勤勉さ、創意工夫への積極性が、当社の技術力の礎だと思います。

―航空機分野に参入された経過は?

中村) 戦後の低迷に喘ぐ日本に朝鮮戦争が空前の好景気をもたらした頃、水晶片に付けるめっきに困ってらっしゃったのを解決したのがきっかけで、株式会社島津製作所様の「お出入り(納入業者)」となりました。その後も、多くの企業様のニーズに応えながら、手作業が当たり前の時代から、電気鉛めっきの実施、銅、ニッケル、クロム、亜鉛めっきの完全自動化など高い技術力を磨き、公害防止設備を整えるなどしてきた結果、島津製作所航空機器事業部の航空機部品の表面処理を一手に引き受けることとなったのです。

  

「自動化×一貫対応」で海外競争を勝ち抜く

―今や日本を代表するサプライヤーでらっしゃいますが、航空機産業の中で御社が強い理由は何でしょう?

中村) 「自動化」と「一貫対応」の組み合わせです。当社も直接海外企業とも取引していますが、航空機産業は、発注の大元が欧米企業であり、もともと海外との競争環境にあるわけです。すなわち、品質が高いことはもちろん、価格を安くすることも不可欠なわけです。よって、最初に投資をして、切削や表面処理等の加工部分はどんどん「自動化」し人件費を抑制して、コストを下げる必要があるのです。例えば、ショットピーニングについて、ツインテーブル方式の設備を導入し、コストを半減させ、生産性を何倍も上げるなどといったことをするわけです。

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―自動化による余剰人員は前後の工程、すなわち、人手の必要な組立などに移動するということなのですね?

中村) そう。工程設計や組立など、人手が必要な部門はあるわけです。当社のように、工程設計、機械加工、三次元測定検査、非破壊検査、ショットピーニング、表面処理、塗装、サブ組立といった「一貫対応」を1社で対応しているのは世界的にも珍しいのです。

―発注者側にとっては、大変ありがたいわけですね。しかし、自動化で抑制した人員を、他部門で吸収できますか?

中村) できます。簡単な足し算引き算です。まず、自動化でコストを下げ、受注競争を優位に進めれば、売上の「量」が増えます。そして、その同じ量を、加工だけでなく、前後の工程も受注するので、ますます、売上の「量」は拡大するわけで、人員はむしろ足らないくらいです。海外にも工場を建設していますので、そこで補うわけです。

―海外工場も自動化しているのですか?

中村) いえ、昔ながらの加工を行っています。日本から技術者(指導者)を送っています。

―自動化することで、とかく失ってしまう「元来の技術」を、海外工場で維持することができるのですね。

中村) そういうことです。

―「一貫対応」は、よく聞く言葉ではありますが、実際は誰もが真似できるわけではありませんよね。

中村) 表面処理を軸に広げていったというのは、広げやすさの面では良かったと思います。技術的に難しいということもありますし、もともと環境対応もあって「認定」がよく求められる業界でありましたので、他工程から表面処理に広げる、参入するというのに比べれば、表面処理から前後工程に広げることは、なじみやすかったのだと思います。

世界に通用する人材育成と、あくなき技術開発

―なるほど。 航空業界特有の事情としては、例えばどんなことがありますか?

中村) 航空機の開発決定後、月産レートに合せた設備台数を導入しますが、プロセスは最初から月産機数の最大に対応可能な設備などの投資が必要です。度胸が要ります。また、すごく安全対策を意識した業界ですので、表面処理の技術面で例を挙げれば、一つの部材に異なる複数のメッキ処理を求められることもあり、難しい技術が必要です。これは他の業界ではなかなかありません。

  

―何より、品質管理が厳しい印象がありますが、これこそ、発注者とオンラインでつながってIoT的な手法を取り込むといった流れはないのですか? 

中村) 電子化ではなく、逆に紙で記録を残すということが求められています。電子では改ざんできてしまいますが、紙ではそういうことができないからです。いろんなことを紙で記録を残しながら生産を行っているのです。IoTは、例えば工具の交換だとか、むしろ生産本体での導入余地は多くあると思います。

―御社の課題を挙げるとすれば?

中村) 人材の育成ですね。まず1つは、世界を相手に事業を展開していますので、世界に通用する人間性を持った社員の育成が課題ですね。例えば、英語はもちろん必須ですが、その前に、日本語でも、きちんと説明する能力が必要です。日本のように、「1を言えば10分かってもらえる」などということは海外にはありません。海外では「10あれば、10を言わなければ」対応してもらえません。2つ目は、提案できる社員であってほしいということですね。航空機の場合、特殊工程はスペックが決まっていますが、それ以外は決まっていないわけですから、そこは「提案する余地」がある分野です。いずれも、実際に「経験させる」ことが大事だと思っています。

―今後の展望はいかがでしょう?

中村) 新素材への表面処理技術開発を引き続いて続けていきます。アルミ加工などは自動化を進めつつ、研究開発には手間をかけて行ってまいります。

 
(CFRP上への硬質ニッケルめっき(左)と、ステンレス鋼への着色不働態化処理)

 

企業の経営発展のモデル的存在でもある、同社のますますの発展が楽しみです。

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