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知恵の経営、元気印、経営革新、チャレンジ・バイの各認定等を受けた府内中小企業を紹介するページです。
(掲載日:平成28年12月22日、聞き手・文:ものづくり振興課 足利)
(公財)京都産業21中小企業事業継続・創生センター(外部リンク)の「プロフェッショナル人材戦略拠点事業(外部リンク)」をご利用いただきました、株式会社アクア(外部リンク)(久御山町)の金子代表取締役様にお話をおうかがいしました。
―まず、事業の概要を教えてください。
金子) 平成12年に創業し、現在、社員8名で、半導体の洗浄装置、液晶テレビ・有機ELテレビ画面用ガラス基板の洗浄装置のほか、最近の新事業として大気圧プラズマ処理装置等の製造をしています。
―まず、半導体やガラス基板の洗浄装置とは?
金子) カセットに入っている半導体ウエハをカセットごとバッジ処理で洗浄する「バスケット搬送式洗浄装置」、ガラス基板1枚1枚を洗浄する「枚葉式洗浄装置」などです。
―こうした半導体装置等で気を遣う点はどういったところですか?
金子) 多軸のマシニングセンタのような複雑な動きをするというものではありませんが、酸、アルカリなどの薬品を使い、純水で洗浄して仕上げるものですので、錆びないこと、不純物やゴミが混ざらないことが重要です。そこで、金属は樹脂で覆う、テフロン加工するとか、ステンレスを用いるなどの工夫が必要です。通常のベアリングも油が入っていますので使えませんので、特殊な禁油式の樹脂ベアリングを用います。
―大手もいらっしゃる業界だと思いますが、御社の特徴はいかがでしょうか?
金子) 中小企業ですし、お客様のご要望に応じて、きめ細かくオーダーメード、カスタマイズに対応し、お客様にどれだけ寄り添って、どれだけお役に立てるか、これに尽きると思います。1品1葉の製品ですし、機械をよりコンパクトにしようと思うと、例えば配管等は逆に複雑になるのですが、当社の職人の経験・ノウハウで対応しています。おかげさまで、当社でお客様の新規開拓をするというより、お客様の紹介や問い合わせをいただくなど、ご好評いただいているものと思っており感謝しています。
―次に、新規事業の大気圧プラズマ処理装置についてお聞きしたいのですが、大気圧プラズマとは何ですか?
金子) 真空容器や反応用ガスの充填などの特殊な環境を必要としない、常圧大気中で発生させる方式のプラズマ装置です。従来から産業用として利用されている低温プラズマ装置は、装置内を真空状態にした後、処理用ガスを必要量送り込んでプラズマを発生させるものが主で、精度や効果が高いものの、大掛かりな設備と、バッジ処理でプラズマ処理ごとに装置内を真空にするための時間が必要でした。従って、半導体製造や蒸着、ドライエッチング加工等、設備投資に見合う特殊な用途に限定されていました。一方、近年、減圧を伴わず、通常大気圧の中でも安定してプラズマを発生させる技術が確立され、徐々に産業用として利用されるようになってきたのが、大気圧プラズマです。大掛かりな装置も不要で、連続処理ができ、生産ラインの中にも容易に組み込めるようになりましたし、卓上で扱えるような小型装置の製作も可能で、研究用途や手加工での使用など応用範囲が大きく広がりました。
―具体的にはどういうシーンで利用されるのですか?
金子) 主な用途としましては、まず、素材表面の有機物等を分解、気化することによる洗浄効果があります。次に、表面の組成を変化させることにより液体等が弾きにくくなる親水性の向上効果があります。素材としての撥水性が高く、水や洗剤、アルコール等で洗浄しても変化の少ない素材、洗浄の困難な素材に対して、プラズマを照射することで親水性を持たせることが可能になります。親水性向上効果により、塗装、メッキ、接着、吸水性素材等の品質向上が期待できます。
―なるほど。
金子) 半導体の製造工程でも、さきほどのウエハの洗浄工程の後に、プラズマを使って膜を形成したり、ドライエッチングで表面を削ったりという工程もありますし、ほかにも、改質効果による新素材の開発、微細粉末の水溶化、殺菌、有毒ガスの分解、水質浄化等への利用も研究されており、様々な用途に応用できる可能性があります。
―どういう原理でプラズマは放出されるのですか?
金子) これも様々な手法がありますが、当社の場合は、誘電体バリア方式を用いています。向かい合った電極板に高電圧をかけると―電極から+電極に向かって電子が高速で移動し、それが電極間に存在する気体原子に衝突し、その電子を弾き飛ばすことで気体原子はプラズマ状態になります。しかし、常圧空気中では、高電圧をかけた電極を近づけると、少しでも電気の通りやすい部分に電子が集中し、雷状のアーク放電が起こってしまい、有効なプラズマガスを発生させることは困難です。そこで、当社では、電極板の間に誘電性絶縁物を設置することでアーク放電を防止し、電極全体から均等に電子が放出される現象を利用しています。
―プラズマの照射距離はどれくらいあるものなのですか?
金子) 気体の密度が高い常圧大気中では、電子が頻繁に気体原子と衝突して急速にエネルギーを失うため、短い距離、理論的には3mm程度、実測ですと1.5~1.7mm程度です。この「ダイレクト方式」に対し、「ジェット方式」では、ガス通路内にプラズマ発生用電極ユニットを設け、窒素ガスを送り込むことで、プラズマ化したガスを放出し、10mm程度の照射距離になります。
―御社の特徴的な製品にはどんなものがありますか?
金子) 安価なテスト用装置として、ペン先型の照射機はよくあるのですが、当社のジェット方式のものには、照射の「幅」が25mmと幅広いタイプの、オンリーワンのものがあり、ムラの少ない表面処理が可能です。プラズマ発生用電極を面的に製作することで実現しています。100V電源仕様で価格を安価に抑えていますので、手軽に効果を試して頂き、大気圧プラズマ装置の普及に繋がればと思っています。
―大気圧プラズマ処理装置という新事業を立ち上げられた意図はなんですか?
金子) 液晶パネル関連の国内大手企業の統合が進むなど、基本的には市場が減少傾向であるということがきっかけで、新しい「自社ブランドを」と考えました。しかし、全く異分野で新しいお客様を探すのは至難の業です。そこで、半導体の製造工程の前後で、プラズマ処理工程が行われることがありますから、洗浄装置の既存のお客様のルートで提案していくことができるということですね。加えて、プラズマ装置の場合は、メッキやフィルムなど新しい顧客も見込まれます。
―そこで、今回の「プロフェッショナル人材戦略拠点事業(外部リンク)」のご活用ですね。
金子) はい。営業人材がほしかったのです。今後の事業展開のために営業部門の強化は必須ですので、大変助かっています。
―今後の展望はいかがでしょう。
金子) 例えば、機能水などを使った洗浄方式の開発など、洗浄分野で、自社ブランドの確立を引き続き進めていきたいです。そして「洗浄装置ならアクア」と思っていただけるようなところまで進んでいきたいですね。
今後の躍進が楽しみです!
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