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知恵の経営、元気印、経営革新、チャレンジ・バイの各認定等を受けた府内中小企業等を紹介するページです。
(掲載日:令和2年3月19日、ものづくり振興課 足利)
株式会社味京(外部リンク)(京都市)の奥村代表取締役にお話をおうかがいしました。
--今、新型コロナウイルス感染症の感染拡大で大変な状況ですが。
奥村)当社のお客様は、スーパーに卸している食品メーカー様が多いため、どちらかと言うと、むしろ忙しい状況です。
--それは何よりです。
奥村)当社は、10名体制で米飯専用調味液や、それを用いた冷凍寿司等を製造しています。
--米飯専用調味液?
奥村)専門的には改良剤とか、ph調整剤とか、向上剤とかいろいろな言い方、種類がありますが、ざくっと言いますと、米飯の「腐敗防止」、「老化抑制」や「保湿」等の効果を発揮するものです。
--そうなのですね!順番に教えていただきたいのですが、「腐敗防止」というのは?
奥村)米にもでんぷん等が含まれていますが、食品は、細菌等の持つ酵素により、糖類等の有機化合物が分解され、腐敗していきますね。細菌は、特に気温が高い時期に活発に増殖します。そこで、酸性環境を作り出して、細菌を抑えるということです。
--なるほど。
奥村)酢の主成分である酢酸等を用いている例が多いですし、当社でも用いるのですが、どうしても酸味が強くなります。薄味が好きな京都では合いません(笑)。
--さすが会社名の「京」を入れてらっしゃるだけあって、京都を意識されてますね(笑)
奥村)そこで、当社では例えば、クエン酸、酢酸ナトリウム、乳酸など、もっと酸味が少ない、やさしく米飯の美味しさを活かすものも研究してまいりました。
--清酒造りでも雑菌汚染対策に乳酸菌を用いますものね。配合など様々研究なさっているんでしょうね。
奥村)そうですね。例えば、単純に濃度を上げたら効果があるかというとそういうわけでもないんです。その他の要素も含めて全体のバランスによって作用が異なってきますから。理論だけではなかなか分からない部分で、実際に試して、自分でも口にして、ということを繰り返さない限り、なかなか気づきません。
--素晴らしいですね。では「老化防止」ということですが、老化とは何ですか?
奥村)でんぷんの老化です。お米を炊く時、お米の中のでんぷんが水を吸って膨らみ、糊のような状態になります。でんぷんの糊化、α化です。炊きたてご飯はこの状態ですが、時間が経ち、また温度が下がるにつれて水分が蒸発するとともにでんぷんが元の生に近い状態に戻っていきます。この水分の減少とでんぷんの老化がご飯を硬くします。
--温度が下がると細菌の増殖は減りますが、代わって老化が進むのですね。
奥村)そうですね。でんぷん老化抑制効果の高いものとしてトレハロースが有名ですが、米(でんぷん)も糖で、甘くなり過ぎるといったこともありますから、離乳食のとろみ付けなど、適度な粘度を与えるのによく使われるデキストリン(でんぷんを分解したもの)など、当社では様々な成分を研究し、活用しています。
--なるほど。
奥村)さらに「保湿」というのは、でんぷんを硬くしないためには、根本的には水分を失わないようにすればいいわけで、オイルでコーティングをする方法です。当社では、チョコレート等で使われるパーム油等を活用しています。
--たしか粉末タイプもお持ちでしたね。
奥村)はい。京都エコノミック・ガーデニング支援強化事業の補助金を活用しながら開発しました「炊味(たくみ)」ですね。オイルを粉にしたもので、これには、「腐敗防止」、「でんぷん老化抑制」「保湿」の全ての機能が備わっています。
--ネーミングがまさしく“たくみ”ですが(笑)、オイルを粉に、ですか?
奥村)冷凍シャリを輸出するとか海外展開用を意識したものです。オイルは各国とも、自国のオイル企業を育てたいという思惑があるのか、なかなかすんなり輸入してくれません。
--そうなのですね。
奥村)また、「腐敗防止」、「でんぷん老化抑制」「保湿」の全ての機能を、この商品には詰め込んでいますのは、それぞれ別の商品とすると、それぞれの量を測って配合する、なんてことは大変だろうということで。
--なるほど。
奥村)オイルを粉にするのはとても難しかったです、そこに最大のノウハウがあります。おかげさまで、輸出用だけでなく、人手不足でお困りである、国内の老人ホームやビジネスホテル用としても、食事の準備期間を短縮できると好評です。
--すみません。先ほどから私が素人なもので成分までお聞きしたりしましたが、大丈夫ですか?
奥村)大丈夫ですよ。私は学生時代から、数学や物理、化学などの科学が大好きで、こういうことを考えるのが好きなのです。先ほども申しましたが、当社の商品は、単純な足し算で出来上がっているわけではありません。濃度を上げたらその分効果があるかと言うとそうでもなく、他の様々な要素とのバランスでして、そのノウハウは、なかなか他では真似ができないものですから。
--競合他社はどのくらいあるのですか?
奥村)「競合」など恐れ多いです。はM社さんや、A社さんなど大手ばかりで、中小企業は当社くらいです。
--そうなのですね。そんな中で、御社商品の差別化要素はどういったところでしょうか?
奥村)当社は中小企業ですから、ニッチ戦略ですよね。規模も今以上にさほど大きくしようとは思っていません。
--そうなのですか?!いかにも京都企業っぽいですね。
奥村)もともと京都の呉服屋でも働いていたことがありますから(笑)。ご質問の件で言いますと、まず、普通は「腐敗防止」の機能のある商品が中心で、当社のように「老化抑制」や「保湿」の機能を有するものは珍しいですね。
--そうなのですか?!
奥村)と申しますのは、例えばコンビニのお弁当用であれば、商品の消費期限は、陳列して数時間で入れ替えるくらいに短いですから、老化防止等の機能が不要ですよね。しかし、当社の商品は、スーパーのお弁当等で用いられることが多く、それらの消費期限は数日間に及ぶものですから、「老化抑制」や「保湿」についても考えていかねばなりません。
--なるほど。
奥村)そして何より、お客様である食品メーカー様に「味京さんは至れり尽くせりですね」と喜んでもらっていることです。
--どういうことですか?
奥村)先ほども申しましたように、6月から9月頃にかけては、気温が高いため細菌の増殖が進みますし、逆に12月から3月にかけての寒い時期は、でんぷんの老化が進みますから、季節によって、お客様に応じて配合を微妙に変えてあげています。お客様の方で、機械の設定を変える必要がなく楽だと評判です。
--いいですね!
奥村)まあ、いちど、どういったものか食べてみてください。これが当社の冷凍寿司で、解凍したものがこちらです。
--これ、本当においしいです!いや、むしろ普通より、格段においしいです。
奥村)でんぷんを凍結させるのも難しいんです。特に鯖寿司の冷凍は難しいとされてきましたが、できちゃったんです。
--素晴らしい!では、最後に今後の展望についてはいかがでしょう。
奥村)例えば将来は、「常温」で長く持つお酢なんかを開発したいですね!
好きだから考え、考えるほどに楽しくなる、そんな社長様がおいしさを追及された商品、ぜひご利用ください。
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