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知恵の経営、元気印、経営革新、チャレンジ・バイの各認定等を受けた府内中小企業を紹介するページです。
(2023年4月、ものづくり振興課 足利・大空)
世界の製品に不可欠な「コア技術」こそ、日本で、中小企業で—
グローバル競争、人口減少など日本の製造業のあるべき姿を自ら体現しようとされているニ九精密機械工業株式会社(外部リンク)(京都市、南丹市)。この10年で社員数も売上も3倍。その秘訣は何か?
「金属加工」でありながらR&D部門を設け、大手メーカー出身者を中心に、電気電子、設計制御など様々な分野の技術者が集い、「装置開発」ができる能力も獲得されています。まさに人材の交流・融合による「社内イノベーション」の成果です。
そして、なくてはならない技術を磨いてこられたからこそ、コア技術の依頼が集中するようです。
結果として、半導体・電子、医療、分析計測、産業機器など幅広い分野の顧客と繋がり、経営安定化にも繋がっているのでしょう。
(令和2年9月9日、ものづくり振興課)
ニ九精密機械工業株式会社(外部リンク)(京都市、南丹市)の記事です。
同社Facebookページ
(掲載日:令和2年2月10日、聞き手・文:ものづくり振興課 宮崎、足利)
ニ九精密機械工業株式会社(外部リンク)(京都市、南丹市)の二九社長様、社長室の大川室長様、営業部技術係の堀川様、古屋様にお話をおうかがいしました。
--部品加工、部品製造の御社が、新しい「装置」を開発されたと聞き、おうかがいしました。
二九)2つありまして、1つは、微小部品判別装置「クラベルゾウ」です。
--あっ、デザインがすごく格好いい!
二九)責任者の堀川は、以前、大手メーカーや販売大手企業出身で、そのノウハウを活かしてくれましたね。
--さすが、どんどん人材が集まられる御社の強みが発揮されているということですね。「微小部品」というのも御社らしいですが、どんな大きさのものですか。
堀川)例えばネジで言えば、こういった大きさですね。当社ではメディカル関係の微小な部品をたくさん製造していますが、一つひとつ顕微鏡によって外観検査を行って品質保証をしているものの、部品が小さいと検査員の負担は相当大きいものとなります。
--こんな小さいものを、人間がいちいち確認するのは、相当骨が折れますでしょうね。
大川)そうなんです。そういう意味では、この装置を使うことは、時短とはまた違った形での「働き方改革」でもありますね。
--なるほど。具体的にはどういう使い方をするのですか?
堀川)予め部品を種類ごとに登録しておくのですが、まず、判別する部品をタッチスクリーンから選択します。
--ほう。
堀川)そして、カバーを開けて部品トレーをセットし、「検査開始」をタッチします。1個の判別は約6秒でして、判別結果はモニタに表示されます
--おお!次々と判別していきますね。仕組みと言いますか、アルゴリズムと言いますか、そういった辺りはどうなっているのですか?ネジがあっちこっち向いていても判別しますよね。
堀川)カメラが動いているのが分かると思いますが、対象物をバックライトで照らし、「影」をカメラで捉えています。このケースだと、影の外周の長さ等を、予め登録したものと比較して判別します。このタイプのネジですと、ネジが立っていなければ、倒れて横を向いていれば、影の外周は同じになります。ですから、ネジが横を向くようにトレイの形状を工夫しています。
--なるほど!!!
堀川)こうして対象物の形状によって、判別項目やパラメータの設定範囲などプログラムをカスタマイズします。検査装置、判別装置はも、特にラインで作るような量産品向けのものは、既に世の中にたくさんありますし、機構的、技術的には何も特別なものではありませが、クラベルゾウのような中量品向けのものはなかなかありません。
--そうなのですね。
堀川)何千万円もする量産向け判別装置を、中量品向けで用いるのは、コストが合わないのです。しかし、クラベルゾウは、汎用マイコンを用いてリーズナブルに製作し、お値段は200万円から、と格安なのです。
--おお!
大川)しかも、そうしたベース部分を開発したのは舞鶴高専出身の入社2年目の若手です。
--素晴らしい!彼にボーナスは出たのですか?(笑)
二九)それは売れてから考えるかな(笑)
--では、もう1つの装置もご紹介いただけますか。
二九)この非破壊内面測定装置「アラサミール」です。京都府、京都産業21の「企業の森・産学の森」推進事業補助金で開発させてもらったものの一つです。
--順調に仕上がって何よりです。改めてご説明をお願いします。
二九)現状の表面粗さ測定器を用いた内面粗さ検査では、製品を半割りして測定する破壊検査を行っています。
--こうして破壊するのですね。そもそも、もったいないですよね。
二九)同じ製造条件、生産ロットからの抜き取り検査であり、全数検査はできないので、装置メーカーさん曰く「パイプの内面は、パイプメーカーを信じるしかない」ということになります。アラサミールは、非破壊で内面を保証する世界初の装置であり、全数検査が可能です。
--おお!御社が作ってらっしゃるような極細パイプなどはイメージできるのですが、他にどういったものが想定されるのでしょうか。
二九)測定対象内径は、0.45~2mmですので、様々な装置に組み込まれているパール配管、ノズルやバイオや医療分野で使われるピペットなど、内径0.5mm程度のものが多く、様々なものに活用できます。私どもとしては、アラサミールの「装置を売る」のではなく、アラサミールを使った「検査業務を受ける」、そうして品質を保証する役目を考えています。データを集め、その先を考えているのです。
--さすがですね。仕組みはどうなっているのですか?
古屋)パイプの内面のカメラ画像を観察していて、面粗さと反射光の明るさに相関があることを発見しました。傷や残留物があるほど、明るく光ります。
--そうなのですね。
古屋)そこで、パイプ内に挿入したファイバースコープを通じて、照明の光を送りつつ、パイプ内の反射光をカメラに向けて送り返すというものです。
--ファイバースコープで光が往復?
古屋)ファイバースコープは、外径0.35~1.2mmで、ファイバーの束になってまして、径の外側のファイバーで照明の光を送り、内側のファイバーで反射光を送り返しています。
--なるほど!
古屋)スタートスイッチを押すと、ファイバーが5mm間隔で移動し、自動で連続してカメラ撮影が行われていきます。
--いいですね!
二九)古屋も、元大手カメラメーカー出身です。最初、東京から単身赴任で来ると言うので、それはダメだと言いました。うちは、家族も幸せになってもらわなければならない会社だから、夫婦で京都に来るようにと勧めました。聞くと奥さんも京都の御出身だそうで、ちょうど良かったですよ。
--そうなのですね。それにいたしましても、クラベルゾウ、アラサミールとも、名前がユニークですね。
大川)インパクトがあって、わかりやすい名前じゃないと、ということで、社内公募しました。
堀川)実は・・・いずれも、私が提案したものです・・・。
二九・大川)そうやったんかいな!!
--社長も、大川さんもご存じなかったんですね。では、堀川さんにもボーナスは?
二九)それも売れてから、やな(笑)
良い人材が集まり、良い人材を育ててらっしゃる同社だからこそ、ですね!
(掲載日:平成30年3月29日、聞き手・文:ものづくり振興課 足利)
ニ九精密機械工業株式会社(外部リンク)(京都市、南丹市)の二九良三社長にお話をおうかがいしました。
―フェムト秒レーザー加工機を導入されました。まず、レーザーって一般的に、除去(穴あけなど)、接合(溶接など)、改質などができますし、レーザーの媒体によって、例えば気体のCO2レーザー、固体のファイバーレーザーやYAGレーザー、半導体レーザーなど様々ありますよね。
二九) CO2レーザーは、板金加工などで最もよく使われていて、レーザー加工機の中心的存在であり、波長が長い赤外線によって材料に熱をかけて加工します。それに比べてファイバーレーザーは、焦点直径が小さく、同一の平均放射力で数十倍ものレーザー強度を持っています。YAGレーザーは、媒体に使用されている元素の頭文字をとってYAGと呼ばれていますが、金属の溶接に適しているほか、医療分野でも多く使われています。半導体レーザーは、小型で消費電力が少なく安価に製造できるため、民生分野の情報機器や歯科用などで広く使われています。
―そんな中にあって、フェムト秒レーザー加工機ということですが、ミリの1/1000がマイクロ、その1/1000がナノ、さらにピコ、そしてフェムトですね。
二九) レーザー光を照射している時間、すなわち、パルス幅がフェムト秒という超短パルスのレーザー加工を行うものです。1フェムト秒は、1000兆分の1秒です。1秒間に30万km進む光も、1フェムト秒では0.3マイクロメートルしか進めません。
―想像を絶しますが、その超短パルスによってどういう効果があるのでしょうか。
二九) レーザーの強度は、エネルギーに比例し、ビームスポットの面積とパルス幅に反比例します。従って、フェムト秒レーザーは、エネルギーはさほど大きくなくとも、パルス幅をフェムト秒レベルまでに圧縮しているので、凄まじいレーザー強度を持っています。このように、まず第1に、時間的、空間的に圧縮されたエネルギーにより、サブミクロンから数ミクロンという極めて高い加工精度を実現します。
―なるほど。
二九) また、通常の加工に用いられるCO2レーザーやYAGレーザーなどと違い、非熱加工です。CO2レーザーやYAGレーザーの場合、分子が光エネルギーを吸収して振動し、熱エネルギーに変換されて、蒸発、溶融することになるのですが、フェムト秒レーザーの場合は、瞬時の熱エネルギーで分子結合を切断し、熱拡散する間もなく除去するのです。これにより、第2として、熱の影響が少ないということで、金属だけでなく樹脂加工も可能ですし、融点が非常に低い、熱の影響を嫌う素材の加工も可能です。
―素晴らしい。
二九) 同じく、熱が周辺に伝わる間もないため、第3として、周辺部のクラックなどの損傷が少ないというのも特長ですね。
―フェムト秒レーザー加工機って、他ではなかなかありませんね。
二九) 京都では大学を除けば、民間企業では当社が初めて導入したと思います。特に3軸のものは、大学でもほとんど珍しいですね。
―どうして今回導入されたのでしょうか。
二九) これにより、例えば次世代カテーテルの設計開発など、予防医療と低侵襲性治療の発展、医療費削減等に寄与できます。こうして、微細加工応用法の確立を図り、様々なニーズにも応えていきたいですし、京都の他社様からの依頼も受け、京都に仕事を呼び込むようなことにも繋げ、地域にも貢献していきたいと思っています。
全国でも、フェムト秒レーザーに本格的に使ったビジネスはまだまだこれからであり、最先端を走っておられる同社。この4月には、社員数がいよいよ200名を超えるそうです。今後の展開がますます楽しみです。
(掲載日:平成27年12月22日、更新日:平成29年3月1日、聞き手・文:ものづくり振興課 足利)
平成25年度元気印企業、27年度知恵の経営の二九精密機械工業株式会社(京都市、南丹市)の二九良三社長にお話をおうかがいしました。
―創業100周年を迎えられました。βチタンなど有名な御社ですが、改めて、事業概要を教えてください。
二九) 鉗子・ステント・ニードルなどのメディカルパーツから、各種分析器・産業機器部品、釣具の穂先などレジャー用品の部品、樹脂を用いた眼鏡用ねじなどの日用品の部品に至る幅広い分野の部品の加工と、βチタンパイプの生産年間を行っており、年間5,700を超える品目に及びます。
(左:マイクロ鉗子(かんし)、右:カテーテル治療に用いられるステント)
―すごいですね。
二九) 従業員は170名を超え、京都本社、京都工場・R&Dセンター、八木工場のほか東京やドイツに営業所があります。お客様の要望に応えて日々、より小さく細かな加工に取り組んでおり、他社で敬遠される課題に応える「最後の砦」的な存在だと認識していただいているのではないでしょうか。今最も力を入れているのは、単なる製造・加工だけでなく、コア機構部の開発、設計からお客様をサポートすることです。
―どういうことですか?
二九)1917年に「りん」や蝋燭立て等の仏具の金属加工を行う店として創業した当社ですが、今や160名を超える多種多様な人材を抱えるようになりました。当社の最先端の高度技術、多品種小ロット生産。顧客の課題への対応力などの「強み」を支えているのは、まさにその人材であり、長年にわたって蓄積してきたオンリーワンの加工方法や加工技術など多岐にわたる専門知識、外部ネットワークです。そこで社内ユニットを組み、人的資産・構造資産等を組み合わせることで、図面ができる前、仕様が決まる前の開発・設計段階から、顧客をサポートする体勢が整いました。
―欧米やインド等でも展開されてらっしゃいますが、ご苦労も多いのでは?
二九)おかげさまで、国内外のメディカル・分析・産業機器の大手企業・グローバル企業と直接取引をさせていただいておりますが、逆にそうした企業になると、国を問わず求められる基本は同じです。引き続きマーケット・インの発想を忘れず、高度な技術を提供してまいります。
―技術面についてご紹介ください。
二九) まず、切削加工、レアメタルワイヤー加工、レーザー加工、レーザー溶接、鏡面加工、内径研磨などの表面処理技術まで、幅広い技術を駆使して、様々な微細加工を行っています。例えば、最小径0.32mmのチタンメディカルパーツもオール削り出しで加工しています。あるいは、レーザー加工も様々な材質に対応するとともに、レーザーカットで発生するドロス(反対面にできるバリ状の溶けカス)が発生しますが、独自技術でドロス除去を行いきれいな面を可能としました。
(左:チタンメディカルパーツ。 中:針の部品と胴体をレーザー溶接にて組み合わせたもの。 右:溶接痕がキレイに仕上がっています。)
―なるほど。
二九) また、最小内径0.1mmの小径パイプに内面研磨加工が可能です。医療機器や分析記に求められる高度な面粗さや真円度を実現し、研磨剤、ワイヤー等を駆使しコンタミネーションの発生を極限まで抑えるとともに、厚膜1ミクロン以下の、コートや、テフロンコーティング、めっきなど、目的に応じた表面処理も行っています。この技術は世界一だと思います。
―すごいですね。
二九) そして、βチタンパイプについては、圧延でパイプの形状を作るところから、用途に応じて加工を施すところまで、世界初の一貫生産を行っています。
(右:パイプにレーザー加工を施した部分の拡大図:このお陰でフレキシブルな動きが生まれます。)
―車1台を吊り下げられる強さで、ポケットティッシュよりも軽く、曲げても形状回復し、ステンレスよりも錆びない耐久性があるなど、すごい製品です。
二九) 「曲げに強く、さびにくい血液分析装置用ノズルがほしい」というお客様の切なる声によって誕生した製品です。一般に、βチタンは、焼き付きやかじりつきが発生しやすいため、加工が非常に困難なため敬遠されがちですが、当社はその類い稀な強度や耐食性、復元性に着目し、10年もの歳月をかけて、世界初の外径0.5mm、内径0.3mmの小径パイプ自社内一貫生産の術を見い出しました。
―そして、超軽量チタン製折りたたみ式車椅子「ZEN-禅」も開発されましたね。
二九) 超軽量チタンフレームにより、折りたたみ式ながら固定式並の強度を実現するとともに、モジュラー機構により利用者自身で座面高や座枠傾斜角度の調整も可能です。
―小径パイプ内径粗さ判定装置も開発されました。
二九) これまで、お客様に提供する商品そのものの内面の粗さを判定するためには、パイプを割るしかありませんでした。これは、入口・出口の空気圧測定で判定し、非破壊で、メーカーにもユーザーにも有益だと思います。
―さて、今後の展望はいかがでしょう。
二九) いろいろありますが、例えばガラスや樹脂など、金属以外の素材と組み合わせた製品開発も強化していきます。また、フェムト秒レーザーも導入し、これまでにない更に高度な加工を行って参ります。
―楽しみですね。
二九) 当社の全受注の4割が1~5個の小ロット対応です。こうした多品種小ロット生産で得たノウハウを活かし、既に世にあるものでもより安く作ることが可能だと考えています。また次の100年に向けて進んで参りたいと思います。
(子供たちから同社への応援の手紙(社長室にて))
成長を続けながらも、社内の風通しの良さが伝わってくる同社。社長の提案される「FUTA-Qのあいうえお」にもその真髄が垣間見られるのではないでしょうか。
「FUTA-Qのあいうえお」
あ:明るく
い:意思を強く持ち
う:運がいいと思い込み
え:縁を大切に
お:大きな夢を持ちましょう。
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