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今年の大晦日は朝から雪が降り、一面、銀世界の風景がひろがっています。植物園の年末年始は閉園しておりますが、最少限の職員が出勤して、観覧温室、栽培ハウスの管理や園内の点検を行っています。
クスノキ並木(写真左)とシダレエンジュ(写真右)
雪が積もると植物のシルエットがはっきりと映し出され、それぞれの特徴がよく見えます。
アベマキの冬芽(写真左)とシナマンサク(写真右)
冬芽には、春に芽生える葉や花の組織が入っており、通常、夏ごろにはできあがっています。冬の寒さや乾燥、虫害などから新芽を守るために、鱗片(りんぺん)という鎧のようなものを着ています。中国原産のシナマンサクは開花時にも枯れ葉が残っているのが特徴で、冬芽を保護するために風よけになっていると思われます。
平成23年は、昭和36年4月24日に再開園してから50年目に当たる節目の年です。 先輩職員から受け継いだ植物財産を大切に育て、府民のみなさまに、様々なかたちで還元できるようにがんばりたいと思います。
新年は平成23年1月5日(水曜日)から開園いたします。
生け垣とは、家屋、道路や公園などの境界、目隠し、侵入防止や風景の区切りとして利用される植物でできた垣のことです。
生け垣の樹種としては、刈り込みや病気に強い常緑樹や紅葉も楽しめる落葉樹があります。
さて、当植物園では、どれだけの種類の生け垣が見られるでしょうか。調べてみると隣接の鴨川や京都府立大学側に見えるものを含めると29の樹種の生け垣がありました。
ウバメガシ(北山通り側、約400メートル)
イヌマキ(正門)
アラカシ(水琴窟付近、写真左)とタマツゲ(写真右)
カイヅカイブキ(盆栽・鉢物展示場付近、写真左)とオカメザサ(鴨川土手(手前はアラカシ)、写真右)
ユキヤナギ(北山門付近)
その他では、キャラボク、クチナシ、ツバキ、チャ、ドウダンツツジ、トベラ、ニオイヒバ、マサキなどがあります。樹種の違いによる雰囲気や形なども見ていただければと思います。
懸崖菊づくりのスタートは、12月の初旬に行う冬至芽とりから始まります。これは菊花展の展示が終わった鉢の中から、この時期に出てくる冬至芽と呼ばれる新芽を取り分けて、鉢上げする作業のことです。
根を鉢から出して株を切り分けます。
冬至芽はできるだけ株元から離れたものを使い、余分な葉を除きます(写真左上)。鉢上げされた冬至芽(写真右上)。
冬至芽をとるポイントは、茎が太くて根がしっかり出たものを選ぶことで、あとの成長に大きく影響します。鉢上げした鉢は、4月頃までハウスに入れておきますが、そのままで管理すると、短日植物のため、まもなく花芽をつけるので、毎日約4時間の電照処理を行います。
なお、菊の種類によっては、春にさし芽からはじめるものもあります。
今年の菊花展の懸崖菊(写真上)。一つの鉢に3本の苗を使います。
「悪魔の爪」といわれるツノゴマ(Proboscidea louisianica マーティニア科)の果実が成熟してきました。宿根草・有用植物園では、安全のため通路まではみ出してきたツノゴマの周囲に柵を設けました。
ツノゴマの果実は成熟してくると果肉の部分は落ちますが、木質化した鉤状の2本の角(写真下)が現れてきます。
この角は花柱が変化した物で、つけ根には1センチほどの黒い種子が入っています。
「悪魔の爪」というのは、果実につく角の鋭い先が動物の脚に刺さったり、毛に絡みついて、一度、角が刺さると湾曲しているため、食い込んで外れない(恐らく痛い)ことからついた名前です。ひっかかった角は動物によって運ばれ、種子が拡散されます。
ツノゴマは北米南部からメキシコに分布します。葉には腺毛があり、触ると冷やっとしますが、あとでベトつきます。またの名を「旅人泣かせ」といいます。
宿根草・有用植物園の北側。葉が緑色の木に赤い葉が混じって見えますが、これはエノキの大木にアメリカヅタがからんだ姿です。見ると太陽光のよく当たる場所から紅葉しているのがわかります(写真右)。エノキの下の方までいくとまだ緑色をした葉がたくさん見え、外側から内側に向かって紅葉します。
美しい紅葉には太陽光、適度な水分(雨など)、昼夜の寒暖の差、最低気温の低下が必要です。太陽光が十分にあたると紅葉も冴えます。
アメリカヅタの紅葉期間は非常に短く1週間程度です。葉は5枚の掌状複葉ですが、小葉(複葉のなかの1枚)ごとに落葉する特徴があります。この小葉1枚で、「これ何の葉は?」と聞かれると答えに困ることがあります。
1年草の植物の多くは、この時期から初冬にかけて必ず種子を採取しておかなければなりません。
オニバス(Euryale ferox スイレン科、環境省絶滅危惧種2類(VU)、京都府絶滅寸前種)の種子のほとんどは水中で開かないままの花(閉鎖花)によってつくられます。
オニバスの閉鎖花(写真左)とオニバスの種子(写真右)
種子を保存したり株を増やす場合は、葉の裏などに浮かんでいる種子を採取するか、種子を放出する前に果実を採取しておき、睡蓮鉢やペットボトルなどに保存しておきます。
葉を突き破って咲くオニバスの開放花。8月から9月にかけて咲きますが、閉鎖花に比べ数が少なく1割程度出現します。成熟した種子はあまり期待できません。
ミズアオイの花(写真左、8月)と果実(写真右)
ミズアオイ(Monochoria korsakowii ミズアオイ科、環境省準絶滅危惧種(NT)、京都府絶滅寸前種)も1年生植物で種子が落花する前に採取しておきます。
1年草の種子を採取するのを忘れてしまうと、来年は貴重な植物がなくなってしまいますので、採取するタイミングには常に気をつけなければなりません。
今年のような猛残暑の年は初めてではないでしょうか。お盆以降も連日最高気温35度を超える日が続き、降雨もほとんどゼロの状態です。
植物にとっても今が正念場で、昼間は葉からの水分の蒸散を防ぐために葉を垂らしたり、葉を落としてダイエットすることにより体の水分の収支を図ろうとします。 最悪の場合、「枯死」ということになります。
葉を落とすソメイヨシノ(写真左)と散水車による散水の状況(ケヤキ並木、写真右)
1本の木が成長期に消費する水の量は、条件にもよりますが、標準的のもので1日当たり数十リットルから数百リットルと言われています。
仮に根の張りが木の中心から半径8メートルに広がっていて、1日に200リットルの水分を消費するとしたら、土壌表面1平方メートルあたり1リットルの水が必要となります(1平方センチメートルあたり高さ1ミリ)。夏場180日で、単純に考えると180ミリの降雨量が必要で、京都市内の夏場の降雨量からすると理論上は充分に足りていることになります。
しかしながら、樹木の根の約90パーセントは地表から50センチ以内の浅い層にあることや植物園の踏み固まった地面では雨水も地中に浸透しにくいこともあり、これだけの猛暑が連続すると、現実にはかなり厳しい環境にあると思います。
辞書によると、「正念場」とは、もともと仏教用語が転じて「大事な場面・局面」という意味ですが、本当に雨が降ることを祈りたい気持ちです。
参考図書:樹木学 ピーター・トーマス 築地書館
「蛇も鶴も美人もそのほかいろいろが同居している、涼しげなトンネル」と松谷名誉園長が例えた「つるもの栽培」の棚(蛇:ヘビウリ、鶴:ツルクビカボチャ、美人:明日香美人のこと)。
個性派ぞろい中で、地味ながらその存在をアピールしているものもありますので、ご紹介します。
トカドヘチマは果実の表面に10本の角(かど)があり、断面は10角形。皮の下は繊維状になっています。
ヘチマを漢字では「糸瓜」とかき、また唐瓜(とうり)とも呼ばれ、「と」の字が名の由来(いろは順の「へ」と「ち」の間)といわれます。トカドヘチマの花は雌雄異花で雄花(写真左)は総状につき、雌花(写真右)は単独で長い棒状の子房がつきます。直径8センチぐらいで見ごたえのある花をつけます。
ナタマメの果実 まさに鉈(なた)のような形。
鉈で果実を割ってみると大きな豆がでてきます。サヤの部分は福神漬けの原料にも使われます(福神漬けの中にあるヒョウタン型をしたもの)。
シカクマメの果実
ヘチマやニガウリとともに沖縄では重要な夏野菜のひとつですが、関西ではあまり馴染みがありません。
純白ニガウリの果実(写真左)と裂開した果実(写真右) この赤い果肉は意外にも食べると甘く、食用になります。
猛暑の中で「つるもの」の成長も少し止まりましたが、成長を再開しています。宿根草・有用植物園にて、9月下旬ごろまで見頃になっています。
ユウガオはウリ科ユウガオ属の一年生のつる性植物です。アサガオ、ヒルガオ(両方ともヒルガオ科)に対してユウガオ(Lagenaria siceraria)の花は日没前後に開花して翌朝しおれるので、この名がつきます。ちなみに源氏物語の「夕顔」は本種のことで、同じ夜開性のヨルガオ(ヒルガオ科)は明治以降に日本に渡来したものです。
ユウガオの果実(写真左、長さ約30センチ)とユウガオの花(写真右、午後6時すぎ)
ユウガオの原産地は北アフリカとされ、古代文明の遺跡からも種子や果実が出土しており、日本でも縄文・弥生時代の遺跡から出土し、古代から世界的に重要な食用植物のひとつとされています。
干瓢(かんぴょう)はユウガオの幼果の果肉を帯状にそぎ、天日乾燥させたもので、巻き寿司などに利用されます。
ヒョウタンはユウガオと同じ種(しゅ)の植物で主に観賞用に栽培されたものです。2メートル以上になるナガビョウタンやユウガオの果実の形に近いマリビョウタンなど様々な品種があり、当園宿根草・有用植物園でも栽培しています。
’長瓢’(写真左)と’スーパー長’(写真右) ’スーパー長’の日本記録は285センチ。写真は現在120センチまで成長中。どこまで伸びるか。
’岡部マリ’ ユウガオの果実に近い形。神奈川県の岡部氏作出の手まり型ヒョウタンです。
植物園新顔のヒョウタン。’縮緬いぼ’(写真左)と’梵鐘’(写真右)
形と表面に特徴がある’マランカ’
端正な姿の’明日香美人’
炎天下でも涼しくてほっこりするヒョウタン棚には、12種類のヒョウタンやヘビウリなどのウリ科植物がなっています。
梅雨挿しとは、梅雨の時期に行う挿し木(挿し芽)のことです。高温多湿の梅雨時期に枝や芽を挿すことにより、乾燥などに対して安全に発根させることができるからです。また、春に生長した新梢がこの時期になると、かなり成熟しており発根しやすくなります。
挿し木は親株の遺伝的形質をそのまま新しい個体に伝えることができる有効な手段であるため、植物園でもよく行う増殖方法です。
写真は、京都府絶滅危惧種のジュウニヒトエ(左手前)と幻の植物といわれるセンノウ(右中央)の挿し木の様子で、ミスト装置(噴霧装置)条件下で行っています。センノウは種子ができにくい植物で、土壌線虫に害されることがよくあるため、挿し木により定期的に株を増やすようにしています。
2009年7月に若田光一宇宙飛行士とともに地球に帰還した宇宙桜の種子。昨年8月末から種子の採取された各地に返還され、当園には14種類、133粒の種子が分譲されました。2010年3月19日の初発芽以降、京都円山祇園枝垂など現在8種11本の桜が発芽しています。
(写真左)5月23日松谷園長と宇宙桜、フライト証明書 (写真右)フライト証明書には無重力空間に浮かぶ宇宙桜の種子がはいったパッケージと若田光一さんが写る。
(写真左)播種前に浸水処理(48時間)をした宇宙桜(角館武家屋敷枝垂れ桜)の種子2粒 (写真右)樹高10センチ、爪楊枝程度の太さに成長した宇宙桜(角館武家屋敷枝垂れ桜)
2008年11月から2009年7月までの8ヶ月間宇宙ステーション「きぼう」で無重力状態で滞在していたため、種子がかなり乾燥気味であったことと通常の播種よりも1年以上遅れての播種であるため、当初は本当に発芽するのか心配でした。
そのため、発芽してホッとしたと同時にこのような条件におかれても発芽する種子のもつ潜在的な力にあらためて感動しました。「やってみないとわからない」ということも、生き物を専門に扱っている立場にいる者として再認識したところです。
宇宙桜の苗は、現在、人間でいうと新生児のようなもので、まだ一般には公開をしていませんが、しっかり成長してきた段階でみなさんに公開していきたいと思いますので、どうかよろしくお願いします。
ハリモミ(Picea polita)は別名をバラモミともいいます。どちらも痛そうな名前ですが、しっかりと握れないほど痛い葉を持ちます。正門をはいって観覧温室むかって右側にハリモミがあります。
ハリモミの自生地では、下枝が枯れ込んでいるためなかなか花を目にすることができませんが、当園のハリモミは下枝もしっかりついているため雄花、雌花ともに目線で観察ができます。いま雄花が満開で、雌花は開花後、結実した球果が生長しているところです(下枝まで、こんなにもたくさんの球果がついたのは初めてです。)。
(写真 茶色に見えるのが雄花、緑色が球果)
トウヒ属(Picea)の球果は成熟すると下に垂れるのが特徴ですが、現在は上を向いて大きくなっているところです。これからしっかりと成熟するか楽しみです。
(写真 昨年の球果が上部の枝で下向きについてます。)
今年のソメイヨシノの当園での開花日は3月21日でしたが、4月20日現在まだ花を見ることができます。1ヶ月間のロングラン開花は非常に珍しいことです。
一般的に、ソメイヨシノは開花日から満開に至るまでが5から7日、花の見頃は7日ほどで開花期間は15日ぐらいを目安としていますから、平年の倍以上の開花期間です。
今年の春は寒暖の差が大きく、開花は早やかったのですが、その後、低温の日が続いたことや例年なら乾燥が強い時期に降雨量が多かったことなどが、ロングラン開花になったものと思われます。
本来ですと、ソメイヨシノ、ヤエベニシダレ、シャクナゲ、遅咲きのサトザクラ、そして新緑という順番に見頃が移っていきますが、今年はこれらを同時に鑑賞できました。ゴールデンウィークまでソメイヨシノが咲いていたとしたら超ロングラン開花の記録になりますが、さてどうなるでしょうか。
サクラの開花前線や新聞などの桜のたよりはソメイヨシノを中心に書かれていることが多いようですが、ソメイヨシノが散る頃からが、サトザクラの見頃が本番になります。
サトザクラとは、伊豆半島から房総半島に自生するオオシマザクラからでた園芸品種群をさしますが、野生のサクラであるヤマザクラなどに対して、人里で栽培されているサクラ全般をサトザクラと呼ぶ場合もあります(ソメイヨシノもサトザクラのひとつです。)。
明治以降、ソメイヨシノが一世を風靡するまでは、花見の桜といえばエドヒガンやヤマザクラなどの野生種やサトザクラなど多様であったようです。とりわけ、関西では古来からヤマザクラが代表格で、桜の名所、吉野山をはじめ、京都の周辺の山々に点在するヤマザクラには野趣に富んだ美しさがあります。ちなみに京都御所の紫宸殿前庭にある現在の「左近の桜」はヤマザクラです。
ヤマザクラは葉の展開と同時に花が咲くことが特徴(写真左)ですが、一概にヤマザクラといっても、開花時期や咲き方などかなり個体差があります。
サクラは自家不和合性(自家受精しにくい性質)がつよく、他家受精の性質が変異の多い個体をつくることになります。
写真右は植物生態園で隣り合って咲くヤマザクラですが、葉の出方などがかなり違います。人それぞれ個性があるのと同じで、一斉に咲くソメイヨシノ(同じクローンのため)とまた違った面白さ、鑑賞のしかたがあります
「たそがれ・桜・一週間」は4月15日(木曜)から4月21日(水曜)まで。午後5時から45分程度で植物園会館前から出発します。
本日もみぞれ混じりの小雨という「寒の戻り」で3月21日に開花したソメイヨシノもここ数日やや足踏みした状態です。
マンサク(満作)、タネツケバナ(種漬花)、菜種梅雨、田打ちザクラなど日本には季節と植物が関係する言葉が数多く残っています。田打ちザクラまたは種蒔きザクラとは、コブシの方言で東北地方では、この花が咲くと農作業をはじめる目安とされていたようです。
千昌夫さんの名曲「北国の春」では、北国の春を代表する花として、コブシが出てきます。コブシ(Magnolia kobus モクレン科)は北海道から本州、九州、朝鮮南部に分布する高木で、最近は公園の緑化樹や街路樹としてたくさん植えられ都市部でもよく見かけます。
京都の山々が白い花で覆われる頃、「咲いているのはコブシ?」という問い合わせがよくあります。おそらくコブシではなく、タムシバ(Magnolia salicifolia) だと思われます。コブシが平野から低山部に多いのに対して、タムシバは本州、四国、九州の山地の斜面に生え、両者は棲み分けをしているようです。
植物生態園では、日当たりなどをよくしたおかげで、数年ぶりにタムシバが少しだけ開花しました。
コブシ(写真左)は花の基部に若葉が1枚つくのに対し、タムシバ(写真右)はありません。花弁と同色の萼片(がくへん)は、コブシが非常に小さいのに対し、タムシバは花弁の半分ぐらいの大きさがあります。また、花弁の色もコブシの方がややクリーム色ですこし赤い筋があります。樹形もコブシの方が大木に育ちます。タムシバはカムシバ(噛む柴)がなまったといわれ、葉を揉むと独特の香りがあります。
参考図書:プランタ第99号 研成社
早春に開花する花木の多くが黄色い花であるのは、緑が少なく昆虫の少ない時期に花を目立たせ呼び寄せる戦略と思われます。
京都府の丹波、丹後地方の春を呼ぶ植物のひとつがヒュウガミズキ(Corylopsis pauciflora Sieb.et Zucc.マンサク科、別名イヨミズキ)です。
本種は、本州(石川県から兵庫県)日本海側の山地に生える樹木で、京都では大江山を中心とする蛇紋岩地域でよく見ることができます。
日向(宮崎県)、伊予(愛媛県)地方には自生していないため、なぜこの名前がついているかは不明ですが、トサミズキより全体的に小さくやさしいため、ヒメミズキがなまったとする説(牧野富太郎博士)、戦国時代に丹波地方を治めた明智日向守光秀にちなむ(麓次郎元京都府立植物園長)など諸説あるようです。
学名のSieb.et Zucc.は命名者がドイツ人のシーボルトとツッカリーニを意味しますが、シーボルトとその日本人弟子の二宮啓作が宮津市の杉山でこの植物を発見したといわれています。
当園のボランティア(開花調査チーム)のデータのよれば、ヒュウガミズキ(しゃくやく園西側植栽分)の開花は2009年は3月17日から4月16日ですが、今年は3月8日開花と10日ほど早い開花となっています。
参考図書:シーボルトと日本の植物 木村陽二郎 恒和選書
四季の花辞典 麓次郎 八坂書房
2月下旬の高温と3月に入ってすぐの連続降雨により、ウメ、アンズなどの花木が一気に咲いてきました。これからモモ、サクラなども順に開花していくと思われます。ツバキも3月に入ったとたんに開花する品種と花数が増えてきました。
日本のツバキの園芸品種は大まかには本州(青森県)以南に自生するヤブツバキと本州(秋田県から滋賀県北部)日本海側の積雪地帯に自生するユキツバキとが母種となった系統があります。両種の特徴を下の表にまとめましたので、ツバキ鑑賞の際はぜひ参考にしていただきたいと思います。
ヤブツバキ | ユキツバキ | |
花 |
筒咲き、雄しべの花糸は白色で途中で合着している |
平開咲き、雄しべの花糸は黄色で1本1本が離れている |
葉 |
葉脈は不明瞭で、鋸歯はやや鋭い |
葉脈は明瞭で、鋸歯は鋭い |
樹の形 |
高木、分枝すくない |
低木、分枝多い |
分布 |
北海道を除く日本全土 |
秋田県から滋賀県北部の日本海側積雪山地 |
ヤブツバキ(左)とユキツバキ(右)の花
ヤブツバキ(左)とユキツバキ(右)の葉表
ヤブツバキ(左)とユキツバキ(右)の葉裏
ヤブツバキ(左)とユキツバキ(右)の花の形状
ユキツバキの原種は、植物生態園の北側入り口付近(梅林から入ったところ)に、植栽しています。このツバキは、2009年4月に京都府向日市に在住の日本ツバキ協会名誉会員、ツバキ研究家故渡邊武氏から分譲いただいた大変貴重な個体です。 移植して間もないですが、若干の花を付けてくれました。
第50回ツバキ展
平成22年3月20日(土曜)から3月21日(日曜)まで
シモバシラ(Keiskea japonica)はシソ科の宿根性植物ですが、名前の由来は厳寒期に枯れた茎に氷の結晶ができることからついた名前です(植物園よもやま話「シモバシラに霜柱が立った(平成17年12月16日)」を参照)。
今冬は、最低気温が氷点下になる日が多く12月18日から大小10回ほどの霜柱を観察することができました。1月15日、16日には2年ぶりに大きな霜柱ができ、朝からたくさんの方が観察に来られました(みなさんよく知っておられます)。
本日のように池の水も凍てつく朝には、本家のシモバシラ以外にも霜柱ができる植物がありますのでその一部をご紹介します。
カシワバハクマ(Pertya robusta キク科、植物生態園)
ヒキオコシ(Rabdosia japonica シソ科、植物生態園)
オルトシフォン ラビアツス(Orthosiphon labiatus シソ科、宿根草・薬用植物園。写真は2009年12月22日撮影)
上の写真はどれも冬枯れの姿で寂しそうに見えますが、春に向けて地中では根が生きている証拠です。
新年あけましておめでとうございます。
2010年の京都府立植物園は小雪が舞う寒い1日から始まりました。正門から北方向に見える北山連峰は真っ白に雪化粧をしています。
水やりは、植物を育てる上で、もっとも基本的作業になるため、年末年始の休園日にも必ず行います。生き物を扱っているため、休むわけにはいきません。動物園などで飼育作業に休みがないのも同じだと思います。
観覧温室内のシリンジ作業
とくに観覧温室は、閉め切った環境下にあるため、シリンジ(葉に水をかける作業)は毎日必要となります。温室(熱帯植物)担当の職員が連日出勤とはいかないので、植物の栽培を担当する技術職員が当番制で水やりに当たります。ただし、水をやってよい植物、いけない植物、シリンジだけの植物、根元だけ灌水する植物、2日おきに水やりする植物など、植物の性格によって水やりの方法も違うので、普段、接していない植物が相手となると結構なプレッシャーになります(この日だけは自分が担当するエリア以外の植物を相手にできることになります。)。
そのため、仕事納めまでに、当番に当たっている職員を集め、水やり方法などの確認作業を事前におこない、ミスが起こらないようにしています。自動灌水で一律に灌水できない理由がここにあります。(写真上(左)はバックヤードの栽培温室内の水やり。写真上(右)は、念のため張られた「灌水不要」の看板)
本年も京都府立植物園をよろしくお願いいたします。
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文化生活部文化生活総務課 植物園
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