選定理由 |
丹波帯で本化石の確実な産地として重要である。 |
分布 |
ジュラ紀付加体中のチャートブロックで報告例は少ないが各地で認められる。京都市西京区と亀岡市篠町の境界付近に三畳紀後期のチャートが認められている(Isozaki and Matsuda、1980)。 |
特徴(特異性) |
Misikella hernsteini、Misikella posthernsteini は、三畳紀最後期レーチアンの年代を指示するコノドントで、約150ミクロン前後と小さく発見されにくい。 |
現状 |
道路の側壁で既にコンクリートが吹きつけてあり採集できない。本露頭は、宇治川に沿って走る主要地方道の大津南郷宇治線の曽束大橋から府道242号線に約150m入った二尾の釣瓶谷に位置する。直ぐ北側に京滋バイパスの笠取インターチェンジがあり、近年交通量も徐々に増えてきたようである。醍醐山塊─宇治地域で、付近はI型地層群に属しているI型地層群は、ジュラ紀新世の砕屑岩を主体とする付加体で、チャートや緑色岩がブロックやレンズ状に取り込まれた地層群である。本地点と類似する露頭は、醍醐山塊で2箇所(楠、1989、2001)で、確実にMisikella属のコノドントを入手できるという点で貴重である。コンクリートが吹き付けてあるが、約1cmのチャートと1mmから3mmの頁岩の細互層で、ゼンマイのように細かくクルクル回った褶曲構造をなしており、黒色から濃いグレーの色調を帯びた三畳紀新世に特徴的な産状を呈している。褶曲が著しいため、劈開も発達しており細かく割れやすく、道路際ではたいてい網をかぶせた後、コンクリートの吹きつけを施され、露頭がなくなっているため、何らかの保護が必要である。 |
保存に対する脅威 |
道路が大きくカーブする地点の角に当たり、京滋バイパス工事に伴う取り付け道路の拡幅時に露頭全体を吹きつけた可能性がある。露頭東側約15mには道が急カーブするとともに湧水を伴う断層が認められるため、将来的には道路工事が行われ露頭そのものが削り取られてなくなる可能性もある。 |