選定理由 |
熱帯地域に広く分布する葉上苔類で、かつては西南日本の暖地の渓流沿いの林に比較的普通に見られたが、近年その生育地が減少傾向にあることが指摘されている。京都府内ではまだ少なからぬ生育地が確認されるが、乾燥や大気汚染の指標植物と考えられている葉上苔類の代表として、今後の環境変化をチェックするための指標にするという意味も含めて選定した。 |
形態 |
植物体は淡緑色で、基物上を匍う。茎は長さ1cmより短く、不規則に分枝する。葉の背片は斜めに開出し、強く背側に偏向し、長楕円形で全縁、5〜10数個の眼点細胞が散在する。葉の腹片は背片の2/5の長さで、楕円形で切頭。腹葉は離在し、深く広く2裂し、裂片は細長い角状(1〜2細胞幅、3〜4細胞長)。
◎近似種との区別
独特の臭気を発することによって容易にその存在を確認することができる。 |
分布 |
琉球列島〜本州(福島県まで):世界の熱帯。
◎府内の分布区域
南部地域、中部地域。 |
生態的特性 |
渓流沿いの湿度の高い林の常緑樹やシダの生葉上に着生するが、樹幹上や時に岩上にも着生する。 |
生息地の現状 |
府内の南部地域や中部地域の渓流沿いの林では、しばしば常緑樹やシダの葉面全体に広がって生育しているのを見ることができる。 |
生存に対する脅威 |
森林の伐採や河川の改修などによる、生育地の乾燥化。 |
必要な保全対策 |
生育地が存在する渓流沿いの環境を自然のままに保全する必要がある。 |