選定理由 |
後翅が退化して飛ぶことのできないカミキリムシ。移動力が小さいため開発により生息地が分断され、絶滅した個体群も多いのではないかと危惧される。また、一部の産地では京都府中北部に広く分布する近縁種マヤサンコブヤハズカミキリとの種間闘争あるいは種置換により、個体数を減じている。 |
形態 |
地域変異が大きく多数の亜種が記載されているが、同一産地内での個体変異もあり亜種の区別が明確でない場合もある。府内に産するものは原名亜種に属する。体長12〜18mm。体は赤褐色で灰褐色の微毛で覆われる。上翅の背面は弱く隆起し、翅端は鋭角に尖る場合が多いが、鈍角の個体もある。触角はオスで体長の約2倍、メスで1.2〜1.3倍。上翅は癒合し、後翅は退化している。 |
分布 |
本州(中部以西)、四国、九州、対馬、隠岐。
◎府内の分布区域
京北町南部、京都市北区、右京区、左京区南部、伏見区、山科区、亀岡市、宇治市、城陽市、和束町などから記録がある。 |
生態的特性 |
成虫は初夏と初秋に多く見られ、秋に発生した成虫はそのまま越冬する。幼虫は広葉樹の枯木に穿孔し、成虫も地表に落ちた広葉樹の枯木や倒木に集まる。 |
生息地の現状 |
府内では主に京都市中南部から山城中部地域にかけての低山地に分布していたため、広葉樹林の減少とともに生息地が失われていった。また、京都市左京区鞍馬や貴船周辺では分布を接しているマヤサンコブヤハズカミキリとの種間闘争あるいは異種間交雑による不妊化により、1980年代以降、本種はほとんど記録されなくなった。最近でも確実な記録があるのは、京都市左京区比叡山周辺及び京都府南部地域のみである。 |
生存に対する脅威 |
開発による低山地の広葉樹林の消失、また、近縁種との種間闘争。 |
必要な保全対策 |
低山地の広葉樹林を保護すること。 |
その他 |
日本固有種 |