選定理由 |
良好な自然環境の指標として注目される種で、府内では芦生のみで生息が確認されている。芦生の個体群は低標高のブナ林に隔離された遺存個体群として極めて貴重であるが、生息条件の限界にある産地のため個体数が少なく、微妙な生息環境の変化で絶滅してしまうおそれがある。 |
形態 |
体長8〜14mm程度。オスの大腮はわずかながら発達する。雌雄ともその名のとおり美しい金光沢を放つ。オスの背面は緑〜青藍色を帯び、腹面は黄褐色。メスの背面は通常赤銅色だが、芦生の個体群では青藍色になり、腹面も黒色になる。
◎近似種との区別
近縁なコルリクワガタとは、やや大型であることと、前胸背板の後縁は丸まり、突起がない点で容易に区別できる。 |
分布 |
日本固有種で本州、四国、九州全域のブナ帯に生息するが、どの産地でも個体数は多くない。分布の西限に当たる長崎県の多良・雲仙山系の個体群は亜種ウンゼンルリクワガタとして区別されている。
◎府内の分布区域
府内 の記録は芦生のみである。芦生の山塊の滋賀県側からも記録されているが、この地域は近隣府県の生息地から隔離された飛地的な分布地である。 |
生態的特性 |
芦生では標高600m前後から本種の生息が見られる。成虫は5月下旬頃から野外活動を始める。本属の種はいずれも独自の産卵マークを残すことが知られているが、本種のものが一番大きい。幼虫はブナなどの比較的大きな白色腐朽の立枯れや倒木の表面から割と浅い部分に穿孔している場合が多い。 |
生息地の現状 |
幸い、芦生の山林は京都大学演習林であるため大規模な伐採等を免れてはいるが、林道建設やハイキング道の整備、下草刈りなどによって深淵部でも林内の乾燥化が著しい箇所が多く、多湿な環境を好む本種への影響が懸念される。 |
生存に対する脅威 |
上記の要因に加えて、本種の場合、独自の産卵マークを目印とした「材割り採集」によって生息材が集中的に破壊される場合が多く、現存個体数の少ない本種の生存に深刻なダメージを与えるおそれが多分にある。 |
必要な保全対策 |
原生林環境の保全が第一ではあるが、加えて、過剰な採集に対処した保全策が急務である。 |
その他 |
日本固有種 |