選定理由 |
清流に生息する種で、環境指標性も高いと見なされる。生息地、個体数とも極めて減少し、現状が続けば絶滅の危険がある。また特殊な形質をもつ双翅類として著名で、かつ世界的にもごく少数の類縁種が知られるだけの、学術的に貴重な種である。またこの種は、後に京都府立大学名誉教授となった徳永雅明によって京都市貴船で発見され、新科、新種として発表されたものである。これは戦前における双翅目研究史上、画期的な世界的業績であった。この点で京都を代表する昆虫の一つであり、その保護は重要な課題である。 |
形態 |
体長2mm内外、極めて特殊な体形をしている。頭部は円錐形で、触角は3節でさらに微細な2節が先端にある。胸部は長く、翅は細長い三角形で、数少ない縦脈と多数の長い縁毛をもつ。脚の腿節と脛節はそれぞれ前後の2亜節に分かれる。腹部は細長く、末端の2節には特殊な突起物がある。飛翔に移るとき、腹部を曲げて弾き、空中に跳躍する奇習をもつ。 |
分布 |
北海道、本州、四国。
◎府内の分布区域
京都市貴船および由良川中流域。 |
生息地の現状および生存に対する脅威 |
幼虫は山地から山脚地の比較的川幅の広い清流にすむ。成虫は早春と晩秋に発生し、群飛を行い、ときに大群となってあたかも雲霞のように水面を覆う。かつては貴船などでも多数見られたといわれるが、現在はまったく発見されていない。他の近畿地方の産地も同様の状況であるという。府内での、現在確実な産地は由良川のみである。 |
必要な保全対策 |
この種が激減した直接の原因は不明であるが、河川の環境の変化という人為的な原因に由来するのは疑いない。水質の汚濁が大きな原因の一つとして考えられる。ないしは砂防堤や堤防の建設による川および川岸の環境の変化によるとも考えられる。さらには周辺の森林環境が、自然林から植林へと大きく変化したことも影響を与えているかもしれない。いずれにしても、この種を含め、同様な生態環境に生息する種類が大規模に減少しているのは、疑いない事実である。本種はこの代表ともいえる。今後生息地では周辺の環境を含め、十分な保全策が必要である。特に河川の改修は急激な絶滅に結びつく可能性が高く、慎重な配慮を要する。 |