選定理由 |
厳密に水生植物に依存した生活史を持つ。京都府に産するネクイハムシ亜科のハムシは5種あって、ツヤネクイハムシ以外の4種は広域分布種であるが、本種は京都がタイプ産地であるので選定した。 |
形態 |
原色昆虫大図鑑(II)甲虫篇[北隆館] 161 図版No.4:原色日本甲虫図鑑(IV)[保育社]29図版No.13を参照。体長8mm、ネクイハムシ亜科の甲虫は皆外形が良く似ていて銅色光沢が強い。上翅には細い横しわを有し、前胸背板には強い点刻を密に装い、強い横しわを側方部に有する。 |
分布 |
北海道、本州、九州、(中国東北部、朝鮮半島)
◎府内の分布区域
京都:Chujo(1934、本種のシノニムとされるDonacia aqaticaのタイプ産地):京都市北区深泥池:Chujo & Goecke(1956、Donacia japanaのタイプ産地):塚本ほか(1960):京都市左京区鞍馬:野尻湖昆虫グループ(1985):京都市右京区嵐山:岸井(1965):嵯峨:野尻湖昆虫グループ(1985):天竜寺:環境庁(1978):桂川河原付近:塚本ら(1960):京都市南区上久世町桂川:環境庁(1978):相楽郡南山城村野殿:野尻湖昆虫グループ(1985)。化石昆虫として出土することが多く、その面での研究も進んでいる。 |
生態的特性 |
本種が属するネクイハムシ亜科のハムシは、ミクリやスゲ類などの水生植物を寄主としており、種ごとに食草が特異化しているらしい。本種の成虫の食害植物としては、ミクリSparganiumerectum、ヤマトミクリS. fallax、ヒメミクリS. stenophyllum、スゲの類Carex sp.、カンガレイScirpus mucronatusなどが、産卵植物としては、ヤマトミクリ、ヒメミクリが、幼虫の食草としては、ミクリ属の一種Sparganium sp.が知られている。 |
生息地の現状 |
タイプ産地である深泥池は市街地化しており、鞍馬山は植林が進み、嵐山・嵯峨は市街地化が著しい。 |
生存に対する脅威 |
既知産地のいずれも変貌が激しく、特に水生植物が依存する湿地は変化を受けやすいから、それを寄主とする本種のような昆虫も不安定な立場に置かれている。桂川の個体集団は絶滅したであろう。 |
必要な保全対策 |
湿地のみを保全することは不可能であり、貴船・鞍馬地区、深泥池、嵐山・嵯峨地区等、周辺地域まで含んだ広い範囲の保全が必須である。 |