選定理由 |
海岸の砂丘や大きな河川の河原に生息するが、日本各地で生息地が失われつつあり、特に内陸部の河川の産地の減少が著しい。京都府を流れる木津川を含む淀川流域にはかつて見られたが、これらの個体群は現在では絶滅した可能性が高い。また、府内の日本海側の海岸部でも近年の調査では見つかっていない。 |
形態 |
体長14〜17mm。上翅は褐色または濃緑色の地色に白色の斑紋を有するが、白色紋の発達度合いには地域変異があり、日本産は2亜種に分けられる。石川県以西の日本海側に分布する原名亜種は白色紋がよく発達する個体が多い。一方、新潟県以北の日本海側および太平洋沿岸に分布する亜種(ssp. circumpictula)は白色紋の発達が悪く、特に伊豆大島産は黒化が著しい。分布から見て、府内の日本海側の個体群は前者の亜種に、八幡市木津川産は後者の亜種に属するものと考えられるが、現存する標本がごくわずかであるため詳細は不明である。 |
分布 |
九州西部〜北部沿岸、本州日本海沿岸、北海道南部、本州太平洋沿岸、四国東北部。国外では、朝鮮半島、済州島、中国大陸、サハリン、シベリア南東部、モンゴル。
◎府内の分布区域
八幡市木津川で記録があるほか、日本海側の網野町と久美浜町の海岸でも採集例がある。 |
生態的特性 |
海岸の砂丘や大きな河川の下流域の河原など、広大な砂地に生息する。成虫は7〜9月に出現し、日中、乾燥した砂地で活動する。地表を素早く歩き回るほか、ハンミョウ類としては長い距離を、低く飛翔する。また、夜間灯火に飛来することもある。幼虫は他のハンミョウ類と同様の待ちぶせ型で、砂地に50cm以上の深さの縦穴を掘り、他の小昆虫などを捕食する。幼虫期は3齢を数え、越冬は幼虫の状態でおこなわれる。 |
生息地の現状 |
木津川には現在でも比較的良好な砂地の河原が残されているが、本種は1980年前後に採集されたのを最後に記録されておらず絶滅した可能性が高い。本種の生息に必須である広大な河原は、頻繁な河川の氾濫により陸生植物の侵入が妨げられることにより、また、上流より砂が供給されることにより、維持されてきた。1960年代以降の河川の治水工事により、河原そのものがやせ細ってしまったことが本種の絶滅の一因ではなかろうか。一方、府北部地域の日本海沿岸に関しては、網野町、久美浜町における古い採集例がある。近隣の鳥取県や石川県の海岸では現在でも本種を確認できることから、府内の海岸でも本種が生存している可能性は残されているが、残念ながら最近の調査では見つかっていない。 |
生存に対する脅威 |
河川においては、河川改修工事、護岸工事、堰やダムの建設による河原の衰退、また農地化、四輪駆動車の乗り入れなどのレジャーによる環境劣化。海岸においては、砂浜の海水浴場化による環境劣化など。 |
必要な保全対策 |
現存する河原や砂浜を自然状態で維持することが最善の保全対策である。 |